震災復興・財産管理制度Q&A1

「震災復興事業における財産管理制度の利用に関するQ&A」(平成25年9月11日 福島家庭裁判所)より
http://www.courts.go.jp/fukushima/about/osirase/l4/Vcms4_00000135.html

引用者注:
 ブログ記事作成上の都合で、レイアウト等は変更している場合があります。
 最初の概要図みたいなものは省略しています。
 [ ]内は、原文では丸付き数字です。
 この手の色の囲みがある場合は、引用者のコメントです。

自治体向けQ&A

【不在者財産管理制度について】

問1
 不在者財産管理制度はどのような制度ですか。
 不在者財産管理制度は,従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に,家庭裁判所が,申立てにより,不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため,財産管理人選任等を行う制度です。選任された不在者財産管理人は,不在者の財産を管理,保存するほか,家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で,不在者に代わって,遺産分割,不動産の売却等を行うことができます。

問2
 不在者財産管理人の選任は誰が申し立てることができますか。
 利害関係人等です。公共事業のための用地取得を目的として不在者財産管理人の選任を申し立てる場合,当該事業主体である自治体は利害関係人に該当すると解されています。

問3
 東日本大震災の復興事業における用地取得の際,不在者財産管理制度が活用できると聞きましたが,具体的にどのような場面で活用できるのですか。
 例えば,以下のような事例で活用することが考えられます。

[1] 甲県において防潮堤拡張工事のため用地の取得が必要になり,対象土地の登記事項証明書を調べたところ,Aさんが所有者として登記されていました。登記上,Aさんの住所は乙市とされていますが,同市一帯は東日本大震災の際に津波被害を受けており,乙市が保管していた行方不明者名簿を調査すると,Aさんが記載されていることが分かりました。警察に問い合わせたところ,Aさんの行方は未だ分かっておらず,未発見者証明書の発行が可能とわかりました。
 そこで,甲県は,不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立て,Aさんが不在であることを示す資料として行方不明者名簿の写しと未発見者証明書を添付資料として提出し,不在者財産管理人を選任してもらいました。

[2] 丙町では,防災移転事業に必要な高台の土地を取得するため,対象土地の登記事項証明書を調べたところ,Bさんが所有者として登記されていました。Bさんの所有権の取得原因欄には,「昭和23年○月○日売買」と記載されています。丙町の担当者は,Bさんについて既に相続が開始しているかもしれないと考え,Bさんの戸籍謄本を調べてみると,Bさんは昭和45年に亡くなったことが分かり,更に戸籍をたどると,Bさんには子3人(C,D,E)がおり,そのうちCさんは平成18年に,Dさんは平成22年に,それぞれ亡くなっていることも分かりました。Cさんには子が2人,Dさんには妻と子が3人います。
 これらの方々について戸籍附票の写しから現住所を調べ,手紙を送ったところ,Dさんの子Fさんについては,「宛所尋ね当たらず」として戻ってきてしまいました。Dさんの他の2人のお子さんとは連絡が取れたのですが,Fさんとは20年以上音信不通で,どこに住んでいるか分からないとのことでした。
 Fさんは,昭和45年にBさんから対象土地の3分の1の持分を相続したDさんから,平成22年にさらにその6分の1を相続したため,対象土地について18分の1の持分を有しています。他の相続人は,遺産分割により対象土地をEさんに取得させて,Eさんが丙町にその土地(評価額100万円)を売った代金から持分に応じた金銭を受け取ることに合意していますが,Fさんについては所在不明のため,同意を取り付けることができません。
 そこで,丙町は,家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て,Fさんが不在であることを示す資料として宛所尋ね当たらずで返送された手紙と,Dさんのお子さんから聴き取ったメモを提出して,不在者財産管理人を選任してもらいました。

(つづく)