震災復興・財産管理制度Q&A4

問17
 不在者財産管理人には報酬が支払われるのですか。
 不在者財産管理人から請求があった場合,家庭裁判所の判断により,不在者の財産から支払われることになります。報酬の額は管理する財産の規模,行った職務の内容,管理の期間などによって異なります。

問18
 用地買収の対象となる土地と隣地との境界を確認するために,不在者財産管理人に立ち会ってもらうことができますか。その際,家庭裁判所の許可が必要ですか。
 土地の境界(筆界)は公に定められるものであり,私人間の合意によって確定することはできないとされていますので,土地の境界の確認は,隣地との境界に争いがないことを事実上認めるだけで,土地の境界を確定する効力を持たないことはもちろん,所有権の範囲を確認する効力も有しないものと考えられます。不在者財産管理人に土地の境界の確認に立ち会ってもらっても,後に不在者の所在が判明し,不在者が土地の境界や所有権の範囲を争えば,管理人による確認は法的には何ら意味を持ちません。したがって,土地の境界の確認は保存行為にすぎず,家庭裁判所の許可は不要と考えることができます。
 他方で,管理人が土地の境界確認に立ち会うことにより,後に不在者が所有権の範囲を争うことが事実上困難となるという事態も想定できますので,所有権の範囲を認める処分行為であるとして,家庭裁判所の許可が必要と考えることもできます。
 いずれにせよ,最終的には裁判官の判断に委ねられますので,実際に境界の確認が必要になった段階で,管理人を選任した家庭裁判所に対し,許可の要否について相談してください。

引用者注:
 当該土地の売買については当然、家庭裁判所の許可が必要ですが、隣接地の境界確認については不在者財産管理人のみで可能、とされた事例はあります。
 不在者が名乗り出る可能性がきわめて低い土地だったからかもしれませんが。

問19
 復興事業のために必要な用地の所有者の中に,複数の不在者がいます。これら複数の不在者のために,同一の不在者財産管理人を選任してもらうことができますか。
 法律上は禁止されていませんが,複数の不在者の間に利益が相反する関係があるときには,同一の管理人を選任すると,それぞれの不在者の利益を公平に守ることができないおそれがありますので,不在者ごとに別々の管理人を選任することになります。利益が相反する場合の具体例としては,複数の不在者が共同相続人の関係にある場合,複数の不在者が境界(筆界)を接する隣地の所有者である場合等が挙げられます。また,複数の不在者の財産を長期にわたって管理しなければならない管理人の負担にも配慮する必要があります。したがって,最終的には裁判官の判断になりますが,複数の不在者の間に利益が相反する関係がなく,かつ,同一の管理人でも管理が可能と判断される場合には,複数の不在者につ
いて同一の管理人を選任することができます。

問20
 復興事業の計画土地の中に,土地の地番がわからず,所有者が不明な土地があります。不在者財産管理人を選任してもらうことができますか。
 不在者財産管理人は,所有者がわかっているものの,その所有者が所在不明である場合に選任するものですから,そもそも誰が所有者であるかわからない土地については,不在者財産管理人を選任することができません。

(つづく)