震災復興・財産管理制度Q&A5

問21
 不動産登記事項証明書を調べると,明治時代の表題部所有者の登記しかされておらず,しかも,所有者の氏名の記載のみで,住所の記載がないものがありました。不在者財産管理人を選任してもらうことができますか。
 まず,土地の所在地と所有者の氏名を手がかりにして所有者の戸籍を特定し,生死を確認する必要があります。生死を特定できない場合には,不在者財産管理人を選任することができます。また,所有者が戸籍上生存していると認められるものの,その所在が分からない場合も同様です。他方,所有者が戸籍上生存していると認められ,かつ,所在が判明している場合には,不在者財産管理人を選任することができません。また,所有者の死亡が確認できた場合には,相続人の調査が必要となるため,直ちに不在者財産管理人を選任することはできず,相続人の中に所在不明の方がいるときに初めて,その方について不在者財産管理人を選任することができます。

問22
 不動産登記事項証明書を調べると,明治時代の所有権登記で,所有者の戸籍を調べましたが,該当する人が見つかりません。不在者財産管理人を選任してもらえますか。
 所有者の生死が不明であるため,不在者財産管理人を選任することができます。

問23
 不在者の親族から聞いたところでは,不在者は放浪癖があるらしく,ある日突然いなくなるが,数か月すれば戻ってくるそうです。不在者財産管理人を選任してもらえますか。
 不在者といえるか否かは所在不明の期間のみによって定まるものではないため,一概にはいえませんが,連絡先も告げずに数か月にわたって所在不明となり,それが頻繁に繰り返されているような事案では,不在者財産管理人を選任できる場合もあると考えられます。

問24
 不在者財産管理人に対し,土地の固定資産税を請求できるのですか。
 不在者財産管理人は,不在者の財産の善良な管理者として負うべき義務の一環として,不在者に代わり,不在者の財産の中から租税公課を支払う義務を負います。したがって,自治体は,管理人に対し,土地の固定資産税を請求することができます。

問25
 親族が不在者財産管理人の選任申立てをして不在者財産管理人が選任された場合,自治体は選任の事実を知ることができますか。
 不在者財産管理人の選任手続は非公開の手続であるため,自治体から家庭裁判所に照会がされても,回答はいたしかねます。通常は,不在者とされる人の所在に関する親族からの事情聴取を通じて,選任の事実を知ることができるものと思われます。

問26
 不在者を含む相続人間で遺産分割協議をしていますが,まとまりません。法定相続分による所有権の移転の登記(表題登記しかない不動産であれば,所有権の保存の登記)を経た上で,自治体が相続分を買収することができますか。
 共同相続人が,分割未了の遺産の一部について,法定相続分による持分を処分することは可能と解されていますので,遺産分割未了のまま,相続分のみを買収することも理論的には可能と考えられます。ただし,相続分を買収しても,他の相続人の相続分も買収しない限り土地全体において事業を行うことはできず,自治体としては,他の相続人と交渉して同意を取り付けるか,買収した相続分に基づいて共有物分割請求をするほかありません。

問27
 不在者財産管理人の選任申立てと,権限外行為許可の申立てを同時に行うことができますか。
 権限外行為許可の申立ては不在者財産管理人にのみ認められますので(民法28条),管理人の選任申立てと同時に権限外行為許可の申立てを行うことはできません。もっとも,選任申立ての時点で権限外行為として予定される行為の内容が固まっている場合には,管理人候補者に対してその情報を十分に伝えておけば,選任後の管理人による権限外行為許可の申立て及びこれに対する家庭裁判所の許可が円滑に進むと思われます。