今後起こるかもしれない災害のために

こちらで触れた記事をきっかけに、「震災復興事業における財産管理制度の利用に関するQ&A」を紹介してきました。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/32537977.html

大震災のような災害ではなくても、災害関係の事業で必要というようなことなら、
家庭裁判所でも法務局でも、比較的、親切に相談には乗ってくれると思います。

ただ、このような制度の運用が簡素化されたとしても、それだけでは解決できないような事案が残るのは確かです。

震災復興:用地取得手続き簡素化に「期待」と「不安」

毎日新聞 2013年10月19日 21時30分(最終更新 10月20日 10時13分)

 安倍晋三首相が19日、東日本大震災の復興事業で、集団移転などの用地取得手続きを簡素化すると表明したことについて、被災地では期待する一方、「抜本的な対策になるのか」と不安の声も上がる。

 住宅の高台移転を進める宮城県南三陸町の佐藤徳憲・総務課参事は「相続などの手続きが障害で用地取得が進まない。簡素化すれば、事業もスピードアップする」と期待する。同町では、取得したい用地の名義が2、3代前のままで、相続に関わる多数の子孫から判子をとるのに手間取るケースが多い。佐藤参事は「国の権限で土地収用を進めて一時所有し、それから町が取得できるようにしてもらえれば」とも話した。

 岩手県大槌町では住宅約3700棟が全半壊し、5地区で防災集団移転促進事業(防集)を導入し、高台移転を計画する。しかし予定面積35ヘクタールのうち、7月末までに取得したのは1.4%の0.48ヘクタールだ。

 用地取得を遅らせている主因は、やはり1カ所の土地に多数の相続人がいること。財産管理制度の手続きを簡素化しても、相続人が分かるケースでは全員の同意が必要なことに変わりないのではないかとの声ももれる。

 国はこれまでも、同意が無くても用地を取得できる土地収用法の手続き簡素化を実施しているが、高台移転のメイン事業となる防集は同法の対象外。今月上旬、同町の担当者が根本匠復興相と面談した際にも、防集の事業用地で所有者が多いケースの対応策は示されなかったという。

 町の担当者は「相続人に通知して一定期間が過ぎれば、返事がなくても土地の権利問題を棚上げにして造成工事できるようにするなど、抜本的な対策が必要」と話す。【井田純、宮崎隆】
http://mainichi.jp/select/news/20131020k0000m040075000c.html


土地の強制収用というのは、個人の財産権に対して直接的な強制権が及ぶので、慎重に取り扱われてきたのでしょう。
(たとえば、公租公課<税金の他、介護保険料や保育料なども含む>の滞納処分のような迅速な公権力の行使が可能な制度とは異なります。)

そういう状況の中で、上の記事中の「防災集団移転促進事業」などは土地収用法の対象には入っていなかった、ということなのでしょうが、人間の生命の安全に関わることでもあり(それも、現在その地で生きている人々だけでなく、他の地域を含めて、これから何世代も先の子孫の生命にも)、法改正を含めて検討すべきことではないかと思います。