「軽度者外し」と障害者

介護保険サービスから要支援などの軽度者を除外しようという動きの問題点については、何度か記事立てしていますが、別の角度から。

要支援者が訪問介護ではなくボランティア等のサービスを利用しなければならなくなったとすれば、
これまで障害福祉サービスを利用してきた人が65歳になったとき、どんなことが起こるでしょうか。
現在の障害程度区分の認定方法は、二次判定部分はもちろん、一次判定部分についても、すでに要介護認定とは異なるプロセスとなっています。
さらに、今後は「障害支援区分」という名称に変わっていくようです。
ですが、便宜上、同じようなレベルの判定が出る場合を想定します。
たとえば、障害程度(支援)区分2は要介護1相当ですから、認知症などがなく、状態が安定しているとなると要支援2となります。
そうすると、これまでヘルパー派遣(居宅介護など)を受けていた障害者が、プロのヘルパーによる訪問介護ではなく、ボランティア等のサービスしか利用できなくなることが考えられます。
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あるいは、「介護保険優先」というルールの例外規定で対応することも考えられます。
要支援者向けの地域なんとかサービスについては、障害福祉サービスよりも優先とはしない、というような。
もちろん、新たな問題が起きるかもしれません。
要介護と要支援とを行き来するたびに、介護保険障害福祉サービスとが切り替わることになりますし。
その弊害を軽減しようとして例外措置を複雑にすると、法令や通知も複雑になり、市区町村の窓口では膨大なマニュアルを見ながらでないと相談にも応じられなくなるかもしれません。
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いずれにせよ、介護保険の本丸である老健局が不適切な制度変更をすると、障害福祉サービスを所管する社会・援護局が迷惑を被ることになります。
厚生労働省の内部のことはわかりませんが、社援局の中にも、この軽度者外しの問題には快く思っていない人々が存在する可能性があります。
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で、問題は、当然のことながら厚労省内部だけでなく、国民にも大きな影響を与えます。
たとえば、介護保険の被保険者を20歳くらいまで拡大する案について。
私は、現状では被保険者の拡大案について賛成する気にはなれないでいます。
でも、それは現行の(平成18年に予防給付制度ができてからの)介護保険制度の出来が酷いからであって、
年齢層にかかわらず必要なサービスが切れ目なく受けられる、という理想に近づくなら、反対するものではありません。

でも、要支援者が切り捨てられた介護保険制度に障害福祉サービスを統合することは困難でしょう。
介護保険で1階部分の(基本的な)サービスを賄い、それで対応できない部分について障害者施策で補う、という2階建ての構造は、まだ現実的だと思います。
あるいは、障害特性に応じた横出しサービスとか。

ですが、介護保険から切り捨てられた軽度部分(地下室部分とでもいうべきでしょうか)を障害者施策で尻ぬぐい、というのは無理があります
だいたい、要支援切り捨ての時点で、介護保険制度(あるいは、その制度設計者である国)ははっきり信頼を失いますから、被保険者の拡大案はほぼ完全に葬られる、ということになるでしょう。