5つの意見

要支援者のケアマネジメントについて
 要支援の高齢者を現在の介護保険サービスの対象から除外することには反対です。
 更新認定で要支援から要介護に変わる人は多いのですが、要介護から要支援に変わる人も少なくはありません。要支援と要介護を行ったり来たりする人も、少なからず存在します。
 制度的には要支援と要介護で切るべきではなく、少なくとも、ケアマネジメントの担い手は、分ける方が弊害が大きくなります。同一の専門職による首尾一貫したケアマネジメントこそが、サービスの効率性を高め、利用者や家族の不安を取り除くことができます。
 もし、仮にどうしても、要支援者を地域の独自サービスにシフトさせていくのなら、ケアマネジメントについては、次のような制度にすべきです。
○要支援1から要介護5までの在宅高齢者については、原則として居宅介護支援事業所の介護支援専門員が担当する。
○地域独自のサービスのみの計画でもケアプラン報酬の対象とする。
○すべての要介護度・要支援度で地域独自のサービスが利用可能とする。
 
 
要支援者の介護保険除外と障害福祉サービスについて
 要支援の高齢者を現在の介護保険サービスの対象から除外することには反対です。
 現在、介護保険の予防給付は、障害福祉サービスよりも優先適用され、介護保険サービスだけでは対応できないサービス需要については障害福祉サービスで補うことが可能となっています(いわゆる上乗せサービス、横出しサービス等)。
 仮に、この介護保険サービス優先規定を残したまま要支援者向けサービスを介護保険サービスから除外すると、これまで専門職(障害特性について知識を有するプロのヘルパー等)によるサービスを受けていた障害者が、ボランティア等のサービスしか利用できなくなる事態も考えられます。また、要支援者に限り介護保険サービス優先規定を除外する制度にすると、要支援と要介護とを行き来するたびに障害福祉サービスの支給決定をやり直さなければならず、きわめて使い勝手が悪くなります。
 いまや、介護保険制度は世の中に浸透し、老健局だけで解決できる問題ではなくなっています。障害福祉サービスを所管する社会・援護局等とも十分な連携をとり、障害者が混乱しないように慎重に取り扱うことを望みます。

 
要支援者にこそ必要性が高いサービスについて
 要支援の高齢者を現在の介護保険サービスの対象から除外することには反対です。
 軽度の方にこそ必要性が高いサービスがあります。
 たとえば、手すりの設置や段差解消など、住宅改修には、比較的軽度者に効果が高いものがあります。最大でも20万円(うち公費は18万円)という投資によって、家族やヘルパーなどの手助けがなくても日常生活を送ることができる可能性が広がる、費用対効果が高い給付です。一般的には、自力で動ける軽度の間の利用が多く、逆に寝たきりになってしまうと必要性は低くなると考えられます。さらに、優れた地域ケアスタッフ(介護支援専門員に限らず、理学療法士作業療法士、あるいは知識と良心とを兼ね備えた住宅施工業者など)が関わった改修工事は、比較的重度になってもその効果が持続される場合も少なくありません。
 また、軽度の人でも、専門職の支援が必要となる場合があります。たとえば、自立生活支援のための見守り的援助(自立支援、ADL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)については、一般的にはボランティアの方々に理解していただくのは、それほど容易ではありません。
 軽度の人にこそ、介護福祉士等、プロの目が必要です。もし、仮にどうしても、要支援者向けサービスに地域のボランティア等を導入するのなら、一般向けのわかりやすい教材、啓発資材等を開発するなど、それなりの対策が必要です。
 もちろん、住宅改修等、現在の介護保険サービス以外では代替が困難なものもあることを認識して制度設計を行うべきです。

 
要支援者サービスで共通性が必要な理由について
 要支援の高齢者を現在の介護保険サービスの対象から除外することには反対です。
 市町村によって要支援者向けサービスの格差が大きいと、市町村間を移動する利用者にとって不便です。混乱が起きやすくもなります。
 高齢者は、介護を担う子どもと同居するために転居する場合があります。また、先の東日本大震災のように、災害で避難生活を余儀なくされることもあります。現在のように、全国でサービスの基本形が同じなら、移動先に住民票を移すか移さないかにかかわらず、転入とほぼ同時にサービスを利用することができます。
 しかし、自治体によってサービスの基本形が大きく変わってしまったら、これまで利用していたサービスを利用できなくなることもあり得ます。避難先の仮設住宅で、利用したいサービスが使えずに、介護度が重度化したり、場合によっては孤独死したりすることが増える危険性もあります。
 もし、仮にどうしても、要支援者を地域の独自サービスにシフトさせていくのなら、サービス基準について共通の大枠は維持していく必要があります。あるいは、自治体で条例等で規定されていない地区外の独自サービスでも緊急利用が可能な仕組みを作ることも検討すべきです。保険者ごとに指定しないと利用できない地域密着型サービスのようなシステムは、高齢者にとっても自治体職員やサービス事業者等にとっても不便です。
 また、限界集落を抱える自治体等、地域の実情はさまざまです。努力してもサービスの供給が難しい地域では、要支援者に対しても、現行の介護保険サービスの利用を期限を限定せずに認めるなど、自治体の裁量を認めるべきです。

 
要支援者除外の非効率性について
 要支援の高齢者を現在の介護保険サービスの対象から除外することには反対です。
 要支援者数は多いように見えますが、介護保険サービス費用の中で要支援者のサービス費用の占める割合はわずかです。それは、現行の要支援者向けサービスの効率性が意外に高いことを示しています。また、要支援者向けサービスを介護保険財政から完全に除外したとしても、財政好転には大して寄与せず、むしろ要介護度が悪化する高齢者が増え、かえって総費用が増大する可能性があります。
 まして、平成25年8月8日の厚生労働大臣記者会見で発言があったように要支援者向けサービスを介護保険財政から除外しないのなら、財政的に期待できないのは明らかです(だからといって、大臣発言を撤回するのは、国政への信頼を崩壊させるので、論外ですが)。
 また、どこが財源を負担するかにかかわらず、要支援者向けサービスの報酬支払い等のシステム開発費用や、それらの事務に携わる職員の費用等は増加します。それはサービス事業者にとっても同様です。
 もし、仮にどうしても、要支援者を地域の独自サービスにシフトさせていくのなら、現行の介護保険システム(国保連を経由した支払い請求等が可能な仕組み)を利用できるようにすべきです。
 


とりあえずの意見について、8月25日から29日にかけて、1日1件ずつ厚生労働省に送りました。
「国民の皆様の声」の8月分が公開される頃、この記事も公開に変える予定です。
 
2013/09/13 公開に変えました。