軽度者支援についての議論

2016年2月17日 第55回社会保障審議会介護保険部会 議事録より
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000117644.html

○鈴木(邦)委員
(略)軽度者への支援のあり方については、軽度者とは、要介護1、2のようですが、こういった方々を単純に切り捨てることはできないと思います。認知症初期集中支援チームにより、認知症を早期発見しても、その後の対応が伴わないことになりますと、何のためにするのかということになります。ドイツでは、むしろ、日本の要介護3、4、5に相当する3段階だったのを、認知症の軽症、中等症を拾うために5段階に見直すということもありますので、日本の優れた介護保険制度をぜひ維持していただきたいと思います。
 また、福祉用具・住宅改修については、高額な介護ロボットなどが、これから出てくると思いますので、まず、有効性、安全性の評価や、価格を抑制する仕組みなどの導入が必要だと思います。不適切な使用の是正は不可欠ですが、軽度者といえども、必要な場合には使えるような形にしないと、介護保険の理念である自立支援が損なわれるだけでなく、家族介護が必要となって、それこそ介護離職ゼロが達成できなくなると思います。
 最後にその他のところでございますけれども、今後、高齢化に伴って、医療は、高度急性期医療のニーズが低下しますので、一定の効率化は可能だとしても、介護ニーズは増加し続けるので、抑制はより困難であると考えられます。
 そもそも、既に世界一の高齢化率である、我が国の介護費用が世界的に見て高額なのかどうか、医療のほうは出るのですが、介護のほうはなかなか出ないので、それがどうなのかをお聞きしたいと思います。
 私が数年前にオランダで、OECDのロングタームケアを見たところ、2008年にOECDの平均よりわずかに高い10位、高齢化のピークに近い2050年でも5位で、日本の断トツの高齢化率を考えれば、既にかなり抑制されているのではないかとも考えられます。
 今後とも、自立支援や、介護の社会化といった、世界的にも極めて優れた我が国の介護保険の理念の旗を降ろすべきではないと思います。
 介護報酬改定も、マイナス改定が2回続きますと、現場が疲弊することは診療報酬で証明されておりますので、次回は、そうしたことのないようにしていく必要があります。このままだと、介護保険は中重度や認知症に特化した保険にならざるを得ないという懸念がありますけれども、ぜひ、国民の老後の安心を確保するために、介護保険が、これまでどおり必要な保険として継続されるように、財源の確保や被保険者範囲の見直しも検討していく必要があるのではないかと思います。

○阿部委員
(略)給付のあり方の中の軽度者への支援のあり方、特に生活援助サービスをどのように考えていくか重要な点です。これは、場合によっては地域支援事業のほうで受け取っていただくこともあり得るかなと思っております。
 それから、福祉用具とか住宅改修というのは、軽度者に対する給付のあり方を見直すことで、もう少し民間の力が活用できる分野になるかもしれないと思っております。
 負担につきましては、やはり、利用者負担について、もう少し検討しなければならないと思っております。2割負担の対象の拡大というのを真剣に議論をいただきたいと思っております。
 それから、いわゆる費用負担の中の総報酬割でございますが、これにはあらかじめ反対と申し上げておきます。もともと、全ての2号被保険者で等しく支え合うという仕組みであったはずですので、総報酬割については強く反対いたします。
(略)

○大西委員
(略)右上の給付のあり方の軽度者への支援のあり方でございますけれども、新聞報道が出てから、市町村側からいろいろ反発が出たりしております。やはり、軽度者であっても、給付をちゃんとやることによって重度化を防ぐことにもつながっています。それをまた地域支援事業にといいますと、結局、市町村の持ち出しの負担みたいな形が出てきかねませんし、軽度者のサービス低下にもつながりかねません。
 そういうことで、これをやることによって、逆に本末転倒、要介護の状況が悪くなったり、要介護者が増えたりすることのないように、その辺につきましては、慎重に扱っていただきたいなと思っております。
 もう一つ、これは、若干中長期的な話になるのですけれども、市長会の中で、介護保険と、これから、障害者施策、これについて、統合するような方向で、きちんと議論すべきではないかと、お互いの施策の持続可能性というようにものを考えた場合に、障害者も高齢化が進む中で、今の障害者施策と介護保険制度は、若干そごがございます。先ほど3年後の見直しの中でも出てきましたが、それは、局所的な調整の部分でございまして、もう少し制度全体として持続可能な統合みたいなものを考えるべきではないかというような議論が出ています。
 そう簡単にいかないのはよくわかっておりますが、ぜひとも国のほうでも、中長期的な制度統合に向けた議論というのを始めていただけないだろうかと。市長会としても、今後、しっかりと議論していきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと存じます。

○花俣委員
(略)先の介護報酬改定あるいは介護保険の制度改正では、要支援者の予防給付を新総合事業へ移行していく。あるいは、また、利用者の負担割合、補足給付の見直し等について、もう既に、昨年4月、8月以降、施行されているところでございます。
 家族の会では、これらの改定については、皆さんも御承知いただいておりますとおり、署名活動をするなどし、これまで、終始反対の立場を明らかにしてまいりました。
 そこで、既にスタートしている、これらの改正点について、給付費分科会でも検証報告とあわせて、今後、私たち当事者が危惧しておりました点に関しても、例えば、新総合事業の進捗状況あるいは実態調査、検証など、こういったことをぜひとも課題の整理、検討を丁寧に行っていただきたいと願っております。
 それから、経済財政諮問会議で出されております、数字を主としたデータ分析、見える化、それだけでは介護の実態あるいは現状というのは、決して十分に見えてこないのではないかと考えます。
 持続可能な介護保険制度とするための、給付の削減等だけでは、なかなか解消できないのではないか。あるいは、一方で、給付の削減をすることで、結果的に、重度化のスピードを早目あるいは介護保険財源をますます圧迫しかねることになるのではないかと考えております。
 先ほどから、お話が出ておりますように、これは、御質問なのですけれども、40ページの骨太の方針やアクション・プログラムあるいは51ページの経済・財政再生計画改革工程表等々にも記載されておりますように、負担能力に応じた公平な負担、給付の適正化として、軽度者に対する生活援助サービスとあるのは、この軽度者というのが、一体どの認定ランクを指すのか、あるいは生活援助サービスというのは、ホームヘルプサービスのことなのかということを確認させていただきたいと思います。
 それで、今後、自分ごととしての認知症施策というのは、2025年問題に向けての取り組みにとどまることなく、さらには、その先までを見据え、私たちの子供が、あるいは孫世代が本当に安心しておいていける社会をつくるためにも、委員の皆様の御議論に期待しつつ、私たち当事者の立場からも、この大きな課題に真摯に向き合っていきたいと考えておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

○辺見振興課長
(略)軽度者についてでございますけれども、これまで、中重度者といったような議論に際して、要介護3以上で、線を引いて加算を設けるといったような実例はございますので、中重度者以外のところは、軽度者という考え方もあるかとは思いますけれども、しかしながら、要介護度1、2、3、4、5、要支援1、2に対して、どこのところが重度で、どこのところが軽度かという明らかなスケールがあるわけではございませんので、ここで言っている軽度者というのは、必ずしもどこかのところを特定していくというほど厳密ということではないと考えております。
 そこのところは、むしろ、さまざまな視点から御検討をいただくべきところかなと思っております。
 また、生活援助サービスでございますけれども、訪問介護のサービスの中で、身体介護と家事援助と分かれる中で、家事援助のサービスを生活援助等と呼ばれておりますので、そこのところが想定されているものかとは思いますけれども、この文章自体は、その他給付についてということでまとめられておりますので、対象となるのは、訪問介護のところだけではなくて、いわゆる検討の対象という意味で、その他給付ということでカバーをされていて、実際に、どういう方向で検討していくのかというのは、まさに今後の議論ということかと考えております。

○井上委員
(略)私は、高齢社会をよくする女性の会という市民活動団体から来ております。もう大部分の皆様がおっしゃいましたように、軽度者への支援のあり方というところで、やはり、新聞やネットなどを見て、皆さん、すごく不安がっています。
 こういうときに、やはり、先ほどおっしゃいましたように、利用者サイドからの視点も入れた議論を今後していただきたいというのと同時に、要支援1、2が、地域支援事業に移りましたが、まだ、その検証も出されないうちに議論をするのは、ちょっと早いのではないかと思います。地域支援事業が動き出して、その成果を見ながら議論していただければ、もっと具体的にわかりやすくなるのではないかと思っております。
 要介護1、2といっても、それぞれの方たちが、かなり違った状態でいらっしゃるので、そうした点も踏まえ当事者視点に立った議論をつよく望むところです。

○土居委員
(略)軽度者への支援のあり方ですけれども、確かに、前回の第6期での議論でもあったわけですが、重度化を予防するためには、軽度者への支援をしっかりやるべきだということは、一理あるとは思いますが、本当に何が重度化予防になるのかというエビデンスが、やはり不十分だと思います。
 はっきりと重度化予防に効いているというようなエビデンスを、特に、このレセプトデータに基づきながら示していただいて、それで、今後のあり方を検討するということは必要だと思います。
(略)

○小林委員
(略)前回の改正で行われた利用者負担や軽度者への支援のあり方などの見直しについて、その影響を十分踏まえた上で、より一層の見直しを進めることが必要であると考えておりますので、次回の改正において、地域包括ケアシステムを支える制度の充実のための見直しと、制度の効率化、公平性の向上のための見直しが、メリハリをつけて行われることを強く望みます。

○齊藤(秀)委員
(略)地域ケアを進めることは大事だと理解をいたしておりますけれども、その1つであります、新しい地域支援事業についての都道府県、市町村ごとの進捗状況を拝見いたしますと、この成熟には相当時間を要するなという印象を実は持っております。
 受け皿が未成熟なところに、地域の特性に応じた対応というものを矢継ぎ早に求めても実効性は期待できないのではないかと考えております。
 そういった中で、軽度者の方々にも、地域支援事業に移行してはどうかという意見があるわけでありますが、私は、とてもこれは現実的なものとは言えないのではないかと思っております。
 既に何人かの委員が申されますように、むしろ、これは重度化を進めることになっても、制度として健全なものになるとは考えにくいと思っております。
 もう一点、個別の議論を今後していくわけでありますけれども、その検討事項が、自立支援でありますとか、介護社会化といった制度の基本的な理念に照らしながら、結果的に制度は維持されたけれども、理念は失われたといったことにならないように、この部会での慎重な検討が必要だと申し上げておきたいと思います。

○佐野委員
(略)給付費を適正化するために、要介護の発生予防ですとか、重度化予防などにも積極的に取り組むべきだと思います。また、医療の分野におきますと、医療保険者は、当然ながら加入者の疾病予防ですとか、健康増進に取り組んでおるのですけれども、介護分野における市町村、さらには、後期高齢者医療広域連合においても、さらに保険者機能を高めていくということが必要なのではないかと思います。
(略)

○伊藤委員
(略)今回、骨太方針から多くの宿題が示されているわけですけれども、こういった議論をする際には、先ほどから出ている要支援者に対する事業について、きちんとやはり検証していく必要があると思っています。
 今回の資料1の23ページのところに、「新しい総合事業・包括的支援事業の実施予定時期」として保険者数が出ていますが、こういうのは、利用者の認識まで含めた実情の把握をした上で、ここで、それを踏まえた議論をしていきたいと思っております。
 よくあるのが、先進事例を示して、これを使っていきましょうというようなやり方がありますけれども、これだけ自治体の実情が違う中で、先進事例がどれだけ有効なのかということも聞いておりますので、こういった丁寧な議論をしていきたいと思っております。
 負担のあり方についても、今回もテーマに上がっておりますけれども、とかくこういう縦割りの部会、審議の場というのは、介護保険制度のみで議論をしてしまいがちですけれども、他方、年金の改定方法を議論する方針も立てられてしまっている。
 そういうようなことを考えると、どれだけ負担ができるのかといったことも制度横断的な検討が必要と思っております。
 また、軽度者の部分ですけれども、先ほども軽度という定義については、一概に要介護度ということで切るものではないという説明があったところで、これも一旦はよかったとは思っておりますが、軽度かどうかといった点については、その家族や住まいの状況とか、認知症の有無とか、利用者の状況なども丁寧に見ていく必要がありますので、そういうスタンスで臨みたいと思っております。
(略)

○桝田委員
(略)持続性の問題から言うと、費用対効果というのを考えなければいけませんので、地域支援事業、介護予防事業、特に今回移行して、まだ、姿が見えていきませんけれども、介護予防の部分の費用対効果というのは、常に、やはり考えながら動いていかないと、かなり難しい問題があると思うのです。介護予防は必要ですけれども、では、かけた費用に対する効果がどれだけあるのと。
 特に、今回の地域支援事業、介護予防という部分は、保険制度だけではなくて、地域が一緒になって動かないと達成できないというフレームになっていますので、やはり地域起こし、村起こし的な部分を含めて、住民みんなで介護予防をしていくのだという気運をつくっていくというのは、制度上の問題だけではなくて、地域的な問題をどうしていくかをクリアにしないと、達成できないという問題がありますので、世代間の公平性というのを主眼にせざるを得ないし、制度の持続性というのも、当然必要ですけれども、制度をここで大きく変えていく部分、変えざるを得ない部分というのは、大きなフレームとして、今、最初に検討してもいいのではないかと。
 介護保険の守備範囲は、ここまでやりましょうという部分が、やはり必要でないかと。そういうふうに思っております。

○武久委員
(略)ドイツを初め、ヨーロッパは、寝たきりはほとんどいないと言われているわけですけれども、では、ドイツの要介護度と日本の要介護度はどのぐらい違うのかと。やはり日本人と西洋人とを比べても、ここはチェックして対比する必要があるだろう。寝たきりがほとんどいないと言いながら、日本ではめちゃくちゃ寝たきりが多いわけですね。私が見てみると、急性期病院での平均在院日数がドイツは五、六日、日本は特定除外という制度がありますので40日ぐらい。6倍から8倍ぐらい長く急性期病院に入院しているということによって、リハビリ効果が非常に低くなっているということはデータがあります。
 保険局が急性期での医療の制限にかかってきましたけれども、ここの長くいるということに対して、その間にリハビリが十分行われないことの損失というものが、後々の寝たきりの拡大になっていくとしたら、これは医療と介護の連携の非常に重要なポイントだと思います。
 ただ、もう一つ、介護保険の前には、自助、共助、公助ということがあったのです。ところが、公助を公がしてくれるのであれば、別に自助も共助も要らないではないか。隣近所が手伝ってくれたのも、もう要らないではないかということで、それとともに生活支援サービスというのがどんどん拡大してきて、むしろ要支援の人に過大なサービスを行うことによって、要介護度がかえって進むというデータを前の宇都宮課長のときに出されておりましたけれども、いろいろな点でPDCAのCのところをこれから十分に出していただいて、すばらしい2018年にしていただけたらと思います。

○小島参考人
(略)軽度者への支援のあり方の中で、先ほど来、御意見が出ているのですが、実際の要介護認定、要支援2と要介護2というのは、介護に要する負担時間数が全く同一でございまして、何が違って重度化しているかというと、やはり医療的ケアが必要かどうかというような内容で要介護認定をされているということがありますので、ぜひとも、軽度者の支援の見直しの際には、要介護認定、かなり市町村によっての認定もばらつきがございますので、この均てん化、標準化ということについても、制度の改善をしていただければありがたいなと思っております。(略)