移動支援と介護保険の関係(復習)

またまた、ネット上某所の話題から。
何度か(何度も?)扱っている障害者サービスと介護保険サービスとの適用関係です。


精神障害の方が要支援認定を受けると、居宅介護や移動支援は全く使えなくなるのか?


この手の話題のときに、しばしば私が引用する通知(引用していただいている方も少なくないようですが)は、

平成19年3月28日付け障企発第0328002号・ 障障発第0328002号
都道府県障害保健福祉主管部(局)長あて
厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部 企画課長/障害福祉課長の連名通知
障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」です。
http://www.jupiter.sannet.ne.jp/to403/hourei/19sk0328002.html

平成23年9月28日・障企発0928第2号/障障発0928第2号により、「同行援護」が例示に追加されました。
(が、私は放置していたので、本日追加しました。)
なお、おおもとの法律名も「障害者総合支援法(これは略称ですが、正式名称は省略して、以下「法」ということに)」に変わっていますが、これについては特に通知改正はなく(と思います)、もちろん適用の考え方自体に影響はないでしょう。

で、その通知で関係ありそうな部分を。

1.自立支援給付と介護保険制度との適用関係等の基本的な考え方について
(2)介護給付費等と介護保険制度との適用関係
 [2] 介護保険サービス優先の捉え方
ア サービス内容や機能から、障害福祉サービスに相当する介護保険サービスがある場合は、基本的には、この介護保険サービスに係る保険給付を優先して受けることとなる。しかしながら、障害者が同様のサービスを希望する場合でも、その心身の状況やサービス利用を必要とする理由は多様であり、介護保険サービスを一律に優先させ、これにより必要な支援を受けることができるか否かを一概に判断することは困難であることから、障害福祉サービスの種類や利用者の状況に応じて当該サービスに相当する介護保険サービスを特定し、一律に当該介護保険サービスを優先的に利用するものとはしないこととする。
  したがって、市町村において、申請に係る障害福祉サービスの利用に関する具体的な内容(利用意向)を聴き取りにより把握した上で、申請者が必要としている支援内容を介護保険サービスにより受けることが可能か否かを適切に判断すること。
  なお、その際には、従前のサービスに加え、小規模多機能型居宅介護などの地域密着型サービスについても、その実施の有無、当該障害者の利用の可否等について確認するよう留意する必要がある。

イ サービス内容や機能から、介護保険サービスには相当するものがない障害福祉サービス固有のものと認められるもの(同行援護、行動援護、自立訓練(生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援等)については、当該障害福祉サービスに係る介護給付費等)を支給する。

障害福祉サービス固有のもの」の例示には、同行援護、行動援護などガイドヘルプサービスの流れを組むものは、当然入ってきます。

では、移動支援は?

これ、「自立支援給付介護保険制度との適用関係」なんですね。

法第7条 自立支援給付は、当該障害の状態につき、介護保険法・・・の規定による介護給付・・・その他の法令に基づく給付であって政令で定めるもののうち自立支援給付に相当するものを受けることができるときは政令で定める限度において・・・行わない。

では「自立支援給付」は何かといえば、

法第6条 自立支援給付は、介護給付費、特例介護給付費、訓練等給付費、特例訓練等給付費、特定障害者特別給付費、特例特定障害者特別給付費、地域相談支援給付費、特例地域相談支援給付費、計画相談支援給付費、特例計画相談支援給付費、自立支援医療費、療養介護医療費、基準該当療養介護医療費、補装具費及び高額障害福祉サービス等給付費の支給とする。

え、「介護給付費」?

法第29条第1項 市町村は、支給決定障害者等が・・・障害福祉サービス・・・を受けたとき、又はのぞみの園から施設障害福祉サービスを受けたときは・・・当該指定障害福祉サービス又は施設障害福祉サービス・・・に要した費用・・・について、介護給付費又は訓練等給付費を支給する。

で、「障害福祉サービス」とは、

法第5条第1項 この法律において「障害福祉サービス」とは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、共同生活介護、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援及び共同生活援助をいい、(略)

ということで、移動支援は、ここでいう「障害福祉サービス」には含まれていません。
移動支援のような地域生活支援事業は、介護保険が優先という規定は法にはありません。

ちなみに、例の通知の末尾の「2.その他」に、

(2)法施行前の身体障害者福祉法等による日常生活用具の給付・貸与事業において、介護保険による福祉用具の対象となる品目については、介護保険法の規定による貸与や購入費の支給を優先して行うこととされていたところであるが、法における地域生活支援事業については自立支援給付とは異なり、地域の実情に応じて行われるものであり、法令上、給付調整に関する規定は適用がないものである。
 しかしながら、日常生活用具に係る従来の取り扱いや本通知の趣旨を踏まえ、地域生活支援事業に係る補助金の効率的な執行の観点も考慮しつつ、その適切な運用に努められたい。

とあります。

法には規定がないから、地域生活支援事業について定めている条例や規則で「介護保険優先」を規定することは、もちろん可能です。
ただ、同行援護、行動援護のようなガイドヘルプサービス系の扱いを考慮すれば、移動支援についても介護保険にはないサービスとして支給決定するというのが整合性のある考え方です。

蛇足ですが、障害福祉サービスの「居宅介護」が、ほぼ介護保険訪問介護(この場合は介護予防訪問介護)で質的にはカバーできるとすれば、量的にカバーできない部分だけを障害福祉サービスとして支給決定することは可能でしょう。
なお、移動支援については、もともと居宅介護ではカバーできない部分を支給決定したものと考えられるので、つまり(介護予防)訪問介護ではカバーできないものと考えられるので、介護保険の認定を受けたとしても利用できる可能性が高いでしょう。

結論

通知の例示部分に「移動支援」が書いてないからといって、

要介護(要支援)認定を受けたら移動支援が全く使えなくなる、というのは誤り。