佐用豪雨の避難勧告訴訟

豪雨避難勧告巡り、遺族側が敗訴…神戸地裁支部

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130424-OYT1T00741.htm?from=ylist
 2009年8月の兵庫県佐用町の豪雨災害で、死亡した住民5人の遺族9人が、避難勧告の発令遅れが原因だったとして、町に総額約3億2100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が24日、神戸地裁姫路支部であり、田中敦裁判長は、遺族側の請求を棄却した。

 原告は、同町本郷の町営住宅で暮らしていた小林佐登美さん(当時40歳)と長女彩乃さん(同16歳)、次男文太君(同9歳、行方不明後、11年3月に死亡手続き)の遺族4人と、井土(いど)さゆりさん(同47歳)と長女未晴さん(同15歳)の遺族5人。

 訴状などによると、09年8月9日午後7時58分、台風9号の豪雨で町の中心部を流れる佐用川の水位が、町の地域防災計画で「避難勧告の発令を判断する指標」と定められた3メートルを超過。しかし、庵●(あんざこ)典章町長は勧告を発令せず、同9時20分に町内全域に発令。小林さんら5人は、近くの小学校に歩いて避難中、濁流にのまれた。(●はシンニョウに「谷」)

 訴訟で、原告側は「7時58分以降も激しい降雨が続いたのだから、町は速やかに勧告を発令すべきだった」「勧告が発令された9時20分には道路が冠水し、無事に避難することは不可能だった」などと主張。

 町側は「勧告発令については行政に広範な裁量が与えられており、避難行動の選択は住民の判断に委ねられている」としたうえで、「3メートルの水位を超えたことは、勧告発令を判断する指標の一つに過ぎない」「5人は発令前に避難を開始していたとみられ、勧告と被災の因果関係はない」などと反論していた。
(2013年4月24日13時40分 読売新聞)

重要な問題を含んでいるので、全文引用させていただきました。
(太字強調は引用者が行いました。)

避難勧告、あるいは避難指示を出すタイミングというのは難しい判断ですし、
判決文の詳細も、原告が控訴するかどうかも、まだわかりません。

が、損害賠償請求が認められないにしても、
町側の対応が(あの時点の知見で)最善だったか、というと、私はそうでないと思います。


あの豪雨災害の前に、
「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン
(平成17年3月・集中豪雨時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討会)
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/chuobou/12/pdf/siryo3_2.pdf
というものが、すでに世に出ています。

以下、抜粋です。

近年の特徴として、高齢者等の要援護者の被災の多いことが問題となっているとともに、避難途中に被災している人が多いのも事実である。

自然現象のため不測の事態等も想定されることから、避難行動は、計画された避難場所等に避難することが必ずしも適切ではなく、事態の切迫した状況等に応じて自宅や隣接建物の2階等に避難することもある。

浸水が既に始まっている場合において、住民が留意すべき事項は次のとおりである。
・浸水深が50cmを上回る(膝上まで浸水が来ている)場所での避難行動は危険であること。流速が早い場合は、20cm程度でも歩行不可能であること。
・用水路等への転落のおそれのある場所では、道路上10cm程度でも危険であること。
・浸水により避難所までの歩行等が危険な状態になった場合には、生命を守る最低限の行動として、自宅や隣接建物の2階等へ緊急的に避難するなどの行動をとること。

こういうことを頭の片隅に、自治体の防災マニュアルの片隅にでも置いておけば、
あるいは「夜間の避難が危険な場合には2階以上に避難を」という呼びかけができたかもしれません。

ともかく、

自分たちの命は自分たちで守る

自治体の勧告等は参考にしても、最終的には自分たちで最善と考える行動を取る

そのための判断材料を自治体は提供する

ということではないかと思います。

東日本大震災でも、想定にとらわれずに遠く高く逃げて助かった子どもたちがいましたね。