吸引等の医療費控除・障害サービス2

(2) 照会の介護福祉士等による喀痰吸引等について

 イ 新たに医療費控除の対象となる介護福祉士等による喀痰吸引等は、これまで医療費控除の対象となっていなかった次に掲げる障害福祉サービス等を利用し、かつ、当該障害福祉サービス等において、介護福祉士等により実施されるものである。

  障害福祉サービス
   同行援護、行動援護生活介護、短期入所(注)、共同生活介護、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助

  障害児支援
   児童発達支援(上記(1)ロの表の医療型を除く。)、放課後等デイサービス、障害児入所施設(上記(1)ロの表の医療型を除く。)

 (注)市町村により遷延性意識障害者加算等として決定された部分を除く。

 ロ 医療費控除の対象となる金額は、障害福祉サービス等に要する費用に係る自己負担額の10分の1とする。

3 照会者の求める見解となることの理由

(1) 障害者自立支援法等の下における喀痰吸引等は、障害者自立支援法等の規定に基づき、上記2(2)イの表のからによる障害福祉サービス等の下で、介護福祉士等により障害児者の心身の状況に応じた介護の一環として実施されるものであるが、提供される障害福祉サービス等の中で喀痰吸引等に係る部分はその一部分であり、喀痰吸引等に係る対価の額は、これらのサービス事業者が行う費用の総額に含まれている。
 本来であれば、喀痰吸引等に係る対価の額は、各サービスにおける個々の実施状況から算出することが望ましいが、各サービスにおいて実際に行った喀痰吸引等の部分を特定してその対価の額を算出することは、障害者自立支援法等上不可能である。
 そのため、障害福祉サービス等の対価として支払う金額のうち、喀痰吸引等に係る対価として医療費控除の対象となる金額を、合理的な方法で明示していくことが必要となる。

(2) そこで、全国身体障害者施設協議会の調査研究事業における実態調査から、障害者入所施設における喀痰吸引等の所要時間を算定したところ、喀痰吸引等の所要時間は、利用者1人に対し1日の支援に要する総所要時間の約10%という結果が得られた。

 (注)
  1 「身体障害者療養施設『タイムスタディ調査』最終報告書(平成17年3月)」のデータを用い算定したところ、障害者入所施設における利用者1人1日当たりの喀痰吸引に係る平均的な所要時間は23.5分、経管栄養に係る平均的な所要時間は13.8分であった。利用者1人に対し1日の支援に要する総所要時間は450.2分であることから、喀痰吸引等の所要時間が占める割合は(23.5+13.8)÷450.2=8.3%となっているところ、先の文書回答のとおり、類似の訪問看護における喀痰吸引等の所要時間の割合は約1割と推計されており、本件においても訪問看護の場合と同様に約1割を推計値としている。

  2 当該調査の結果は障害者入所施設のデータに基づくものであるものの、障害者入所施設以外の障害福祉サービス等における喀痰吸引等の実施データはなく、また、喀痰吸引等が行われる障害児者であれば必要なサービス時間は同じであり、障害児者が在宅の場合と施設にいる場合とで、提供されるサービスの時間が大きく異なることはない。

(3) 上記(2)の調査結果のとおり、障害者入所施設においては喀痰吸引等に係る所要時間の割合が10分の1であることから、障害福祉サービス等における喀痰吸引等に係る費用の割合もこの割合により算定することは合理的であるととともに、障害福祉サービス事業者及び障害福祉サービス等の利用者の利便及び画一的な実施という観点から、上記2(2)のイに掲げる全てのサービスにおいて同様の取扱いとすることが適当と考える。
 したがって、このような喀痰吸引等の実態を踏まえ、喀痰吸引等の対価に係る医療費控除の対象となる金額は、障害福祉サービス等に要する費用に係る自己負担額(次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次に定める額)の10分の1をその対価の額として取り扱うことが相当と考える。

 イ 指定障害福祉サービスの場合
  支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して障害者自立支援法施行令で定める額(当該政令で定める額が障害福祉サービス費用基準額の100分の10に相当する額を超える場合は100分の10相当額)

 ロ 基準該当障害福祉サービスの場合
  指定障害福祉サービスの場合に準じて算定した自己負担額

 ハ 指定通所支援又は指定入所支援の場合
  通所給付決定保護者又は入所給付決定保護者の家計の負担能力その他の事情をしん酌して児童福祉法施行令で定める額(当該政令で定める額が障害児通所給付費基準額又は障害児入所給付費基準額の100分の10に相当する額を超える場合は100分の10相当額)

ニ 基準該当通所支援の場合
 指定通所支援の場合に準じて算定した自己負担額

(注) 上記イからニにおける用語の意義は、別添のとおりである。

(4) なお、上記2(2)のイに掲げる障害福祉サービス等において喀痰吸引等が行われた場合の証明書については、これまでの「在宅介護費用証明書」及び「障害福祉サービス利用者負担額証明書」を別紙様式「障害福祉サービス等利用料領収証」(PDF/114KB)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/bunshokaito/shotoku/130130/pdf/01.pdf
とすることとし、当該領収証に喀痰吸引等の対価の額(自己負担額の10分の1相当額)を「費用額」欄に記載することにより、医療費控除の適用に関し疑義が生じないよう措置することとする。

〔別添〕

1 指定障害福祉サービスとは、都道府県知事、指定都市の市長及び中核市の市長が指定する者(指定障害福祉サービス事業者)により行われる障害福祉サービスをいい(障害者自立支援法29)、基準該当障害福祉サービスとは、指定障害福祉サービス以外の障害福祉サービスをいう(障害者自立支援法30)。

2 指定通所支援、指定入所支援とは、都道府県知事が指定する者(指定障害児通所支援事業者)又は障害児入所施設(指定障害児入所施設)により行われる障害児通所支援又は障害児入所支援をいい(児童福祉法21の5の3、24の2)、基準該当通所支援とは、都道府県の条例で定める一定の基準を満たすと認められる事業を行う事業所により行われる支援をいう(児童福祉法21の5の4)。

3 障害福祉サービス費用基準額、障害児通所給付費基準額、障害児入所給付費基準額とは、指定障害福祉サービス又は指定通所支援若しくは指定入所支援に通常要する費用につき、厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額を合計した額をいう(障害者自立支援法29、児童福祉法21の5の3、24の2)。



〔回答〕 回答年月日:平成25年1月30日 回答者:国税庁課税部審理室長
回答内容 標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。
 ただし、次のことを申し添えます。

(1) この文書回答は、ご照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答ですので、個々の納税者が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。
(2) この回答内容は国税庁としての見解であり、個々の納税者の申告内容等を拘束するものではありません。