発達障害で求刑超え

発達障害で求刑超え懲役20年判決 「社会秩序の維持に」
産経新聞 7月30日(月)20時39分配信

 大阪市平野区の自宅で昨年7月、姉=当時(46)=を刺殺したとして、殺人罪に問われた無職、大東一広被告(42)に対する裁判員裁判の判決が30日、大阪地裁であった。河原俊也裁判長は、犯行の背景に広汎性発達障害の一種、アスペルガー症候群の影響があったと認定した上で「家族が同居を望んでいないため障害に対応できる受け皿が社会になく、再犯の恐れが強く心配される。許される限り長期間、刑務所に収容することが社会秩序の維持に資する」として、検察側の懲役16年の求刑を上回る同20年を言い渡した。

 河原裁判長は判決理由で「計画的で執拗(しつよう)かつ残酷な犯行。アスペルガー症候群の影響は量刑上、大きく考慮すべきではない」と指摘。その上で「十分な反省がないまま社会に復帰すれば、同様の犯行に及ぶ心配がある。刑務所で内省を深めさせる必要がある」と述べ、殺人罪の有期刑上限が相当とした。
 判決によると、大東被告は小学5年のころから約30年間引きこもり状態で、生活の面倒をみていた姉に逆恨みを募らせ殺害を決意。昨年7月25日、市営住宅の自室を訪れた姉の腹などを包丁で何度も刺し、死亡させた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120730-00000626-san-soci

誤解が生じやすい問題なので迷ったのですが、やはり記事立てします。

アスペルガー症候群の影響は量刑上、大きく考慮すべきではない」
としながら、
「障害に対応できる受け皿が社会になく」
という理由で求刑を超える懲役刑を課すのは、論理的ではないように思います。

もし障害の影響により犯罪を起こす危険性が大きい、という仮定に立つなら、刑務所の中に長くいたからといって反省が深くなり、再犯の率が低くなる、ということは起こりにくいというべきでしょう。
一般的な人間と同じ「矯正方法」が通じにくいのに、障害特性に知識があるとは思えない刑務所に期待するのは無理です。

この理由なら、受け皿を造る必要性を意見表明すべきでした。
被告が刑期を過ごす間にも、環境整備は進められます。
今回の判決理由には、「刑務所が満員だから懲役刑は行わない」というのと同じような違和感もあります。

なお、今回の被告については、発達障害を有することが犯罪の主因になったのではないように、個人的には考えます。
引きこもりは障害の二次的影響(周囲の理解不足などの可能性がありますが、逆恨み、さらに殺意、というのは、一般犯罪者でも(残念ながら)起こり得ることです。

アスペルガーを含む発達障害者の大多数は、こういう殺意からはほど遠いところに存在します。