東電の撤退意図はなかったか

「官邸が過剰介入」国会事故調が指摘

MSN産経ニュース 2012.6.9 23:46)
 東京電力福島第1原発事故を検証する国会の事故調査委員会黒川清委員長)は9日、これまでの調査を踏まえた論点整理を行い、「官邸が現場に過剰介入した」など6項目の論点を提示した。月内にまとめる報告書に反映させる。
(略)
 官邸の現場介入は、東電の「全面撤退」を阻止する一定の効果があったとする政府などの主張に対しては「東電が全員撤退を決定した形跡はない」と結論づけ、「菅直人首相(当時)が東電の全員撤退を阻止したという事実関係はない」との見解を示した。
(以下略)
http://sankei.jp.msn.com/science/news/120609/scn12060923500004-n1.htm


この件については、相反する情報もあります。


朝日新聞2012年2月6日付、「プロメテウスの罠、官邸の5日間35」)
 清水(東電社長)に尋ねたかったのは、東電が何を官邸に要請していたかの問題だ。官邸のいう「全面撤退」だったのか「作業に直接関係のない一部の社員の一時的退避」だったのか。清水は周囲に「俺は二度と過去のことを語ることはない」といっている。

 清水は経済産業相海江田万里らに撤退問題で頻繁に電話をしてきていた。15日午前3時すぎ、内閣危機管理監の伊藤哲朗は執務室で菅にいった。「決死隊のようなものをつくってでも頑張ってもらうべきだ」。菅も「撤退はあり得ない」といった。経緯はこのシリーズの前半で報じた通りだ。

 その後、清水は官邸に呼ばれ、撤退しないことを即座に了承した。伊藤は「東電はあれだけ強く撤退といっていたのに」と不審に思う。

 そう思ったのは午前3時前、総理応接室にいた東電幹部が「放棄」「撤退」を伊藤に明言したからだ。

 元警視総監の伊藤はそのやりとりを鮮明に記憶している。

 伊藤「第一原発から退避するというが、そんなことをしたら1号機から4号機はどうなるのか」

 東電「放棄せざるを得ません」

 伊藤「5号機と6号機は?」

 東電「同じです。いずれコントロールできなくなりますから」

 伊藤「第二原発はどうか」

 東電「そちらもいずれ撤退ということになります」
(無料で読めるのは、ネット上ではこちらのサイトぐらいしか見つけられませんでした。)
http://astand.asahi.com/magazine/wrscience/2012032000009.html?iref=webronza


何が真実かは難しいところです。
ただ、伊藤哲朗氏は自公政権時から同様の職にあった人で、ときの政権側に義理立てして嘘をつく可能性は低いのではないかと私は思います。
なお、伊藤氏がこの報道が事実と異なるというように朝日側に抗議したというような情報は、私は把握していません。


あとは、状況証拠的なものしか見つけられていませんが・・・


幹部死んだっていい俺も行く 菅前首相、原発危機的状況で東電に

中国新聞 2012/3/15)
 水素爆発が相次ぎ福島第1原発事故が危機的状況に陥っていた昨年3月15日未明、菅直人首相(当時)が東京電力本店に乗り込んだ際の「60(歳)になる幹部連中は現地に行って死んだっていいんだ。俺も行く」などとの発言を、東電が詳細に記録していたことが15日、分かった。

 菅氏の東電訪問は政府の事故調査・検証委員会の中間報告などでも触れられているが、記録からは、東電が第1原発から全面撤退すると考えた菅氏が、かなり強い口調でできる限りの取り組みと覚悟を迫っていたことがうかがえる。

 記録によると、本店2階の緊急時対策本部に入った首相は、政府・東電の事故対策統合本部の設置を宣言。「このままでは日本国滅亡だ」「プラントを放棄した際は、原子炉や使用済み燃料が崩壊して放射能を発する物質が飛び散る。チェルノブイリの2倍3倍にもなり、どういうことになるのか皆さんもよく知っているはず」と強い危機感を示した。

 さらに「撤退したら東電は百パーセントつぶれる。逃げてみたって逃げ切れないぞ」と迫った。

 東電の事故対応について「目の前のことだけでなく、その先を見据えて当面の手を打て」「無駄になってもいい。金がいくらかかってもいい。必要なら自衛隊でも警察でも動かす」と、改善を求めた。

 15日未明の段階では、2号機も水素爆発の恐れがあった。状況説明に対し、菅氏が「何気圧と聞いたって分からないじゃないか」といら立つ場面もあった。

 菅氏は対策本部に大勢の東電社員がいるのを見て「大事なことは5、6人で決めるものだ。ふざけてるんじゃない。小部屋を用意しろ」と指示、勝俣恒久会長ら東電トップと対応を協議した。

 菅氏が撤退を踏みとどまるよう求めた発言と、対策統合本部の設置について、福島原発事故独立検証委員会民間事故調)は「(危機対応として)一定の効果があった」と評価している。

 今月14日の国会の事故調査委員会では、菅氏の東電訪問時の映像(音声なし)が残っていることが明らかになった。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201203150057.html


いろいろ言いたいことはありますが・・・
調査・検証というのは、誰かの責任にしておしまいというのではなく、
将来、別の国難が起こったときに、凡庸な政治家や私利私欲の企業経営者がいたとしても悲劇を防げるようにするために行うべきと思います。
(今回の関係者を「凡庸」「私利私欲」と断定する意図ではありません。)