予防訪問介護の効果など

引き続き、「2011年10月31日 第83回社会保障審議会介護給付費分科会議事録」より

○馬袋委員
 介護予防の訪問介護でございますが、今回11ページ、12ページに出ております。12ページ目の表、提供時間の実態については、介護予防というものの基本的な概念が全く欠落していると思います。
 そもそも介護予防とは平成18年4月に創設されました。参考としてあります表の※3ですが、これは平成17年4月審査分とあります。その上の表では、導入前と比べて90分以上ということですけれども、平成17年4月と今年度を比べて、90分以上のものが減ったということですが、この時点では要支援者には生活援助は出来高という内容で実施していたものですから、その制度で行っていた時点のものと、予防介護を実施して以降の時点の変化、違う制度を見てどうだということを比較検証するのは、余りにも乱暴ではないかというのが1点でございます。

○馬袋委員
 そして、ここには出ていませんが、指導運営指針の中には、介護予防に関しては、1回当たりの提供サービス時間においては計画をつくり、時間や回数は利用者の変化に応じて柔軟に達成すべきものであるということがあります。時間の考え方は何も書いてありません。かつ適切なサービス提供により、結果的に利用者の状況が改善するなど、当初の支給区分において設定されたものよりも少ないサービス提供になること、また逆に当初の支給区分において想定されたもの以上にサービスを提供することがあり得るが、その場合であっても、月単位の定額報酬の性格上、月途中で支給区分の変更をしない。
 すなわち、当初、予防といいますのは、利用者さんの日常生活の維持をどのように図るかということで計画を立てます。スタートのときには、90分もしくは2時間もかかって御支援をしていきながら、慣れていかれて、日常生活ができるということで1時間、50分と変化するような、支援活動そのものでございます。よって、サービスを提供している時間を評価しているものではありません。時間が減ったから、これを見直してはどうかというのは、維持・改善ができているということとして評価をされるべきものであって、時間が減少したものではないかと思います。
 よって、予防給付のそもそもの考え方に生活の時間を入れられるのであれば、昔、要支援にありました、生活援助、身体介護という従来どおりの要介護の実施されている内容と合すことを言われているのかという間違えすら起こりますので、そのことについては、予防の概念からしっかり確認をしたいと思います。このことについては、書き方として予防の概念から抜けた、時間の変更ではなくて、改善・維持、やっているという行為そのものを評価すると理解していますので、時間概念にはなじまないと思います。

○宇都宮老人保健課長
 時間の概念の話でございますけれども、もともと介護予防訪問介護の包括のこれをつくったときには、まさに制度が走る前に検討をしてつくったということで、この制度の前の出来高のときの状況を踏まえて、こういった単位数になったと聞いております。
 今回は、その後、実際に介護予防ということでやってみたらどうなるかということです。ですから、単純比較というよりは、以前想定してつくった単位数というものを実態としてやってみたら、実際どうだったということに合わせるという意味で、今回こういうものを出させていただいて、それに見合った包括の単位数にしてはどうかということでございます。おっしゃるように、これは包括ですので、時間が短い場合、長い場合、いろいろ含んでいる単位数だということは、我々としても重々承知してございます。

○馬袋委員
 時間の概念というよりも、当初、予防給付をやるときに、生活の維持・改善をして、要介護にならない状態で機能させる訪問介護の行為ということで、事業所が利用者さんの3か月等に対するこれからの日常生活の内容の方針の計画をつくります。その計画で、今、できないことをできるようにするにはどういう援助が必要かという計画を立てて、できるまでの時間は、長い時間がかかることもありますし、短い時間もある。そういった結果に対する内容は、計画をもって、それを実施するための行為に妥当性があるかということを検証してやりなさいと指導を受けましたし、現場では時間の概念でないという指導を受けております。
 すなわち、そのことを言われていながら、結果、時間だけをとって、短くなったからどうだというのは、余りにも乱暴ではないかというのが言いたいということです。本来の予防の在り方を議論する中で、効果があるのでどうするのかということを見るのであって、時間の概念ではないと思います。

○池田委員
 これも遠回しに馬袋さんが言われたのかもしれませんけれども、予防給付というのは本当に効果を上げているんですか。前に私もデータを出しましたけれども、予防給付が始まったのは、御存じのとおり2006年4月からでございます。2006年4月からの要支援2のレベルの改善度をそこで出しました。下がっているんです。改善が減っているんです。むしろ廃用症候群を進めるようなサービスの方が主流であるということを意味しています。それは予防給付と完全に矛盾するのではないですか。そこを検証した上で、私はこの議論はすべきではないかと思います。

○木間委員
 予防給付について、先ほど馬袋委員がおっしゃいましたことは、私もそのとおりだと思います。馬袋委員は、先ほど違う制度を比較するのは乱暴という御指摘をなさいました。12ページの右側の2つの表ですが、それらは制度がもし同じであったとしても、制度導入前の生活援助サービス利用状況は、介護給付費の実態調査の結果です。その上にある1回当たりのサービス利用時間の分布は、回収率は非常に高かったようでありますが、755の分布であります。こういうものをデータとしてお出しになってよろしいものか疑問に感じます。
 データについてもう一点申し上げます。財務省のデータは、何度も示されているものですが、身体介護は28人についてのデータであります。こういうデータで比較をしてよろしいものでしょうか。優しく言っていますが、私は怒っています。

○田中(雅)委員
 11ページには、先ほど馬袋委員からも御指摘がありましたように、介護予防訪問介護のサービスの提供実態に基づいた単位設定としてはどうかということで見直しが示され、12ページには先ほども指摘がありましたように、時間数について議論されております。しかし、訪問介護における介護予防の効果については、あまり議論されておりませんでした。むしろ、通所等のサービスを利用しない要支援者の重度化について強調されてきた感がございます。
 しかし、このたび、訪問介護の介護予防効果のエビデンスを示すことについて、大変貴重な研究報告が示されております。それはNPO法人地域保健研究会、田中甲子さんが会長を務めていらっしゃいますが、この方が北九州市で実施しております、平成22年度の地域包括ケア推進モデル事業を評価した結果をまとめたものを報告書として出されております。
 その中においては、訪問介護を利用されております、要支援者138名の方々について、勿論群としては少ないですが、退所して介入された群については、生活機能向上プログラムを提供し、具体的には3か月間に週1回の訪問介護を30分、ヘルパーの指導の下で生活機能向上メニューを実施した。それに加えて、利用者本人もセルフケアのメニューを実施した。そういったことによって、生活遂行能力等が向上したといったことが発表されております。
 これまでどちらかというと、訪問介護については生活の不便さに対する支援、ないし生活援助ということが強調されてまいりましたが、これからはむしろこういった科学的なデータに基づくような訪問介護の効果について、きちんと評価すべきではないかと思っております。
 この報告書では一定程度ヘルパーに自立支援ということから、教育、訓練を行うことによって、効果があると触れております。そういう意味において、私ども日本介護福祉士会も既に介護予防体操の指導者の養成、例えば山口県、私のおります富山県もそうですし、茨城の方でもいろんな先生方の御協力を得ながら実施しております。きちんと効果のある、他の通所系リハも当然効果がございますが、訪問介護によって効果があるということはきちんと研究データもございます。そういったものも活用していただきながら、人材の養成についても是非議論していただきたいと思っております。

○池田委員
 北九州の田中甲子先生の138人のサンプルの研究は私も存じ上げております。あれは評価が分かれております。OTとPTの間でも意見が対立しております。
 私個人の意見を言わせていただくと、138人という少数の中で、突っ込んだ研修と、きちんとしたトレーニングをすれば、一定の効果が出ることは間違いないと思います。しかし、それを普遍化できるかどうかという問題は全く別な問題です。私自身としては、OT、PT、STが訪問介護の介護職員に対して指導して、実際、ホームヘルパー介護福祉士がやるということについては賛成できません。要するに専門性がそれでは確保できない。むしろそれだったらば、リハビリステーションをつくって、そこからOT、PTを派遣してやった方が、はるかに効果があるということです。
 私がその問題について触れなかったのは、ここに書かれているのはサ責に指導するということが書いてあるわけです。サ責がサービスを提供するわけではないので、サ責が考えることを意味しているわけで、誠に申し訳ないんですが、今の田中委員の意見については、私は賛成できません。

○田中(雅)委員
 先ほど冒頭に池田先生は、効果がある、そのデータは知っているとおっしゃいました。確かにまだ取組み例は少ないのかもしれません。しかし、効果のあるものを普及しなければ、だれがするんでしょうか。
 もう一つは、介護予防の特性でありますサービスの一体的提供という部分です。これまでの介護予防訪問介護については、どちらかというと、従来の生活援助と身体介護という形の一体的提供と言っていましたが、本当の意味の利用者の自立支援ということであるならば、生活機能向上という観点でも、人材の育成とか評価といったものをきちんと入れていかなければ、従来どおり、ただ単にできないことに対するお世話あるいはお手伝いという形の認識で終わってしまうのではないですか。
 そのような結果として、例えば今おっしゃったように、介護予防の効果がリハビリにあることは私も十分に承知をしておりますし、共働については大切だと思っておりますが、しかし、通所系サービスに行きたくないという利用者の介護予防についてはどうするんでしょうか。そういう意味において、一定のヘルパーの関与についても今後きちんと見ていくべきではないかと考えております。

○大森分科会長 御意見が違いますし、見方も違いますし、あれを直ちに普遍化できるかどうかについても議論があるところですから、この議論は以上といたします。


「平成22年度の地域包括ケア推進モデル事業を評価した結果」については、別に記事立てします。