要介護者夫婦の生活援助

夫婦のみの世帯で、夫も妻も要介護(支援)者という場合があります。
 
報酬告示の留意事項通知(平成12年老企第36号)には、


第二-1-(5)
複数の要介護者がいる世帯において同一時間帯に訪問サービスを利用した場合の取扱いについて
 
 それぞれに標準的な所要時間を見込んで居宅サービス計画上に位置づける。例えば、要介護高齢者夫婦のみの世帯に100分間訪問し、夫に50分の訪問介護(身体介護中心の場合)、妻に50分の訪問介護(身体介護中心の場合)を提供した場合、夫、妻それぞれ402単位ずつ算定される。ただし、生活援助については、要介護者間で適宜所要時間を振り分けることとする。
とありますが、いまだに変なことを言う保険者職員があるそうです。
 
曰く、
共用部分の掃除は夫も妻も利益を受けるから、それぞれの計画で生活援助を位置づけなければならない。
 
適宜所要時間を振り分ける、按分する、というのは、少なくとも日本語や数学上の意味とすれば、
50:50 とか、70:30 だけでなく、100:0 もあり得ると思うのですが、
そのあたりが理解できないらしいようです。
 
そこで、別の角度から見ていきます。
 
訪問介護費の報酬告示より


ロ 生活援助が中心である場合
(1)所要時間30分以上1時間未満の場合 229単位
(2)所要時間1時間以上の場合 291単位
 

注3 ロについては、単身の世帯に属する利用者又は家族若しくは親族(以下「家族等」という。)と同居している利用者であって、当該家族等の障害、疾病等の理由により、当該利用者又は当該家族等が家事を行うことが困難であるものに対して、生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助であって、これを受けなければ日常生活を営むのに支障が生ずる介護保険法(平成9年法律第123号。以下「法」という。)第8条第2項に規定する居宅要介護者に対して行われるものをいう。)が中心である指定訪問介護を行った場合に所定単位数を算定する。


 
留意事項通知より


(5)「生活援助中心型」の単位を算定する場合
 注3において「生活援助中心型」の単位を算定することができる場合として「利用者が1人暮らしであるか又は家族等が障害、疾病等のため、利用者や家族等が家事を行うことが困難な場合」とされたが、これは、
障害、疾病のほか、障害、疾病がない場合であっても、同様のやむを得ない事情により、家事が困難な場合をいうものであること。
 
なお、介護予防サービスの報酬告示の留意事項通知(H18老計発第0317001号・老振発第0317001号・老老発第0317001号)には、


(1)介護予防訪問介護の意義について
 注1の「介護予防訪問介護」については、「身体介護中心型」及び「生活援助中心型」の区分を一本化することとする。なお、対象となるサービスの範囲については、訪問介護と同じ取扱いとする。
 

(6)その他の取扱い
 前記以外の基本的な取扱いについては、訪問介護の取扱方針に従うこととする。
 なお、通院等乗降介助については、算定されない。


とありますので、同居家族が要支援者であったとしても、その家事を行うことが困難であれば、同様と考えられます。
 
 
というところで、サービスの置き換えをしてみます。
 
A:要介護者夫婦のみの世帯で、どちらも洗濯が困難な場合
→夫の衣類の洗濯と、妻の衣類の洗濯とを、別々に計画に位置づけ、別々に行わなければならないというのでしょうか?
 
B:要介護者夫婦のみの世帯で、どちらも買い物が困難な場合
→夫の買い物と、妻の買い物とを、別々に計画に位置づけ、別々に行わなければならないのでしょうか?
 
さらに、同居家族の属性の置き換えをしてみます。
 
C:要介護者と障害者のみの2人世帯で、どちらも共用部分の掃除が困難な場合
→要介護者の生活援助だけではなく、障害者についても居宅介護(家事援助)でサービスに入る必要があるというのでしょうか?
 
D:要介護者と病人のみの2人世帯で、どちらも共用部分の掃除が困難な場合
→要介護者の生活援助だけではなく、病人についても自費でサービスに入る必要があるというのでしょうか?
 
ここで、よくある?給付抑制型のローカルルールと比べても深刻なのは、
要介護者双方の計画に位置づけることによって、かえって金がかかる場合があるということです。
 
たとえば、生活援助1時間未満(この時間設定は、次期報酬改定で変わる恐れがありますが)1回か、1時間以上1時間30分未満(他のサービスと組み合わせて)1回で済んでいたのが、生活援助1時間未満2回になる。
 
こんなことを言い出す保険者職員が、「給付適正化」などと言っていたら、お笑いです。
適正化すべきは、職員の頭の中でしょう。
 
こんな計画を強要する保険者のために、私たちは2号被保険料などを負担しているのではありません。