障害者への「特段の専門的な配慮をもって行う調理」

「特段の専門的配慮をもって行う調理」については、介護保険訪問介護では「身体介護中心型」として報酬算定することが明確に認められています。
平成12年老計第10号「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」は介護保険最新情報Vol.637で改正されていますが、この部分については変更ありません。
https://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/19010488.html


では、障害福祉サービスの居宅介護ではどうでしょうか。
私が調べた限りでは、国レベルで介護保険と同様の見解を示したものは見つかりませんでした。

居宅介護の報酬告示
3 ハについては、区分1以上に該当する利用者のうち、単身の世帯に属する利用者又は家族若しくは親族(以下「家族等」という。)と同居している利用者であって、当該家族等の障害、疾病等の理由により、当該利用者又は当該家族等が家事を行うことが困難であるものに対して、家事援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助であって、これを受けなければ日常生活を営むのに支障が生ずる利用者に対して行われるものをいう。注7において同じ。)が中心である指定居宅介護等を行った場合に、所定単位数を算定する。

留意事項通知
[4] 「家事援助中心型」の単位を算定する場合
 「家事援助中心型」の単位を算定することができる場合として、「利用者が一人暮らしであるか又は家族等が障害、疾病等のため、利用者や家族等が家事を行うことが困難な場合」とされたが、これは、家族等の障害、疾病のほか、障害、疾病がない場合であっても、同様のやむを得ない事情により、家事が困難な場合を含むものであること。

とあるだけです。ただ、この文言は、訪問介護のものと(生活援助が家事援助に置き換えられるぐらいで)ほぼ同じです。


自治体レベルでは、介護保険と同様、身体介護中心型で算定可能という見解がけっこうあります。


横浜市
平成24年3月1日健障福第3018号・居宅介護の「特段の専門的配慮をもって行う調理」の取扱について(通知)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/shogai/zaitaku/service/kyotakukaigo/tokudannohairyo-chouri.pdf

これまで調理についてはすべて「家事援助」での算定として取扱っておりましたが、
平成24年4月1日から「特段の専門的配慮をもって行う調理」については、「身体介護」の内容としての取扱に変更します。
(1)以下の内容にすべて該当するものについては、「身体介護」として取扱います。
 [1]医師の指示等(主治医意見書、医師の診断書等の書面により適切な判断ができるもの)に基づき適切な栄養量及び内容を有する特別食の調理。
  (腎臓病食、肝臓病食、糖尿病食、胃潰瘍食、貧血食、高脂血症食、痛風食、嚥下困難者のための流動食等)
 [2]調理に当たっては、利用者の心身の状況や生活状況等を勘案した上で、熱量、蛋白質量、脂質量等の食事内容について配慮を行うものであり、例えば、医師の具体的な指示に基づく管理栄養士の管理指導、支援担当者会議で栄養士等の専門職から聴取した意見等に沿った調理を行うもの。
※単に食材を通常より細かく調理することやトロミをつけるだけの調理では身体介護として算定できません。

(2)手続き方法
 [1]契約している利用者に該当される方がいる場合は、区障害担当課へご連絡ください。
 [2]区障害担当課より「該当」と判断された場合は、区障害担当課より利用者へ支給量変更の申請依頼を行います。(事業所においても利用者への申請勧奨にご協力ください。)
  ※栄養管理計画の写しを利用者もしくは事業所から提出していただきます。
 [3]支給量変更後の受給者証を確認後、「居宅介護(支援)計画書」の修正(主治医の指示をもとに計画した調理内容等、特段の配慮にあたるサービス内容を必ず記載)と利用者への説明(同意)を行ってください。
 [4]上記の手続きが完了後、身体介護としての算定に変更できます。


千葉市
H22.03.25 障害福祉サービス等に係る事業者説明会
障害福祉サービス等の取扱いに係るQA
(なお、「本QAは、現段階での取扱いについて本市の見解をお示しするものですので、今後取扱いを変更することがあります。」と記載されています。)
https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/koreishogai/shogaifukushi/documents/220325_tojitsushiryo2.pdf

「特段の専門的配慮をもって行う調理」は身体介護として算定できるのか。また、その具体的な内容はどのようなものか。

身体介護として算定可能です。また、身体介護の一連のケアの一部である必要はありませんが、例えば、調理過程の一部にミキサーを使用したからと言って、そのサービスが全て身体介護になるということではありません。具体的な内容としては、嚥下困難者のための流動食等の調理のほか、医師の指示等に基づき適切な栄養量及び内容を有する特別食等の調理が考えられます。


那賀圏域(紀の川市岩出市
障害者総合支援法 障害福祉サービス(訪問系サービス)概要
http://www.city.iwade.lg.jp/fukushi/shogai-fukushi/files/shogaifukushiservice-gaiyo.pdf

以下についても身体介護として取り扱います。
【特段の専門的配慮をもって行う調理】
 医師の指示等(主治医意見書、医師の診断書等の書面により適切な判断ができるもの)に基づく適切な栄養量及び内容を有する特別食(腎臓病食、肝臓病食、糖尿病食、胃潰瘍食、貧血食高脂血症食、痛風食、嚥下困難者のための流動食等)の調理。
 調理に当たっては、利用者の心身の状況や生活状況等を勘案した上で、熱量、蛋白質量、脂質量等の食事内容について配慮を行うものであり、例えば、医師の具体的な指示に基づく管理栄養士の管理指導、支援担当者会議で栄養士等の専門職から聴取した意見等に沿った調理を行うもの。
※単に食材を細かくすることやトロミをつけることは家事援助



特段の専門的配慮をもって行う調理
介護保険制度の要件(「厚生労働大臣が定めるもの」平成12年2月10日厚生省告示第23号)と概ね同様)をいずれも満たす場合に身体介護として支給できる。
1調理の対象が特別食であること
(医師の発行する食事せんに基づき提供された適切な栄養量及び内容を有する腎臓食、肝臓食、糖尿食、胃潰瘍食、貧血食、膵臓食、高脂血症食、痛風食、フェニールケトン尿症食、楓(かえで)糖尿症食、ホモシスチン尿症食、ガラクトース血症食、嚥下困難者のための流動食、経管栄養のための濃厚流動食、無菌食及び特別な場合の検査食(単なる流動食及び軟食を除く。))(平成12年2月10日厚生省告示第23号「厚生労働大臣が定める者等」)
2利用者の心身の状況や生活状況等を勘案したうえで、熱量、蛋白質量及び脂質量等の食事内容について配慮を行う調理であること
3計画的な医学管理を行っている医師の具体的な指示に基づき、管理栄養士が利用者ごとの摂食・嚥下機能及び食形態に配慮した栄養ケア計画に沿った調理であること


要件については自治体間で差はありますが(食事箋など書面での確認が必要か)、介護保険と同様の考え方を用いるというのは、当然といえば当然かもしれません。
この件について介護保険よりも厳しくする合理的な理由はありませんし、介護保険の上乗せで障害福祉サービスの支給決定を行うことは普通にありますから。