特別地域加算の問題点

前記事、前々記事で、高知県の提言「中山間地域における介護サービスの確保」について紹介しました。

ここで、特別地域加算の問題点について、私の意見を書きます。
 

1 サービス確保策としての効果は十分か

 訪問系サービス15%加算が離島・中山間地域の事業者の採算性を向上させたのは事実だと思います。十分かどうかは地域によっても異なるでしょう。
 ですが、介護保険事業状況報告(月報)の平成22年3月~23年2月を見た限りでは、訪問看護の利用がない保険者が25箇所あるなど、全国どこでも十分とはいえない状況にあると考えられます。
 また、通所サービスなどではこの加算はありませんし、訪問系でも訪問リハビリは対象になっていません。
 

2 対象地域は妥当か

 これは、はっきり落第点です。
 豪雪地帯など、自治体の要望により国が指定する地域もありますが、

1)離島振興対策実施地域(離島振興法第2条第1項)
2)奄美群島奄美群島振興開発特別措置法第1条)
3)振興山村(山村振興法第7条第1項)
4)小笠原諸島小笠原諸島振興開発特別措置法第2条第1項)
5)沖縄の離島(沖縄振興特別措置法第3条第3号)

 以上の5種類は、保険者の意向にかかわらず、対象地域となります。
 離島関係は別にして、振興山村の中には交通事情の改善などでサービス確保がさほど困難でなくなった地域もあります。
 それでも、厚生労働省は特別地域加算対象地域からの除外を認めていません。
 

3 費用負担は適切か

 高知県の提言でも触れられているように、利用者負担も15%分重くなります。
 大都市圏でも高い単価の級地区分により利用者負担が重くなることがありますが、これらの地域では最低賃金生活保護の最低基準も高くなっています。平均所得も、おそらく高めでしょう。
 離島や中山間地域では、高知県の提言にもあるように、所得水準は全国平均より低いと考えられます。
 なお、訪問介護の利用者負担については、非課税世帯の軽減制度がありますが、他のサービスについては(少なくとも全国的な制度としては)ありません。
 また、利用者本人が低所得でも、同居の若い世代などにそこそこの所得があれば訪問介護の軽減制度も対象外です。異論はあるかもしれませんが、たとえば大都市圏などの同居世帯と比較して均衡を欠くと私は考えています。
 

4 改善策の叩き台

・加算対象地域として妥当かどうかは、山村振興法など他法令に拘束されることなく、関係自治体と国との協議により見直し可能とします。
・加算対象サービスを訪問・通所系全サービスに広げます。
・訪問系サービス(訪問リハビリを含む)は20%加算、通所系サービスは送迎の手間を考慮し10%とします。
・この加算は、利用者負担の対象から除外します。
 (事業者収入としては、訪問系18%、通所系9%の加算効果となります。)
・加算対象地域の介護保険財政負担を軽減するため、別途、国等の支援策を検討します。