居宅介護支援事業所の兼務

世の中でいろいろ話題になっている件とは別に(謎)
ちょっと気になることがあったので、思うことを整理してみます。

なお、本記事では、次のように略すことにします。
<基準>:平成11年厚生省令第38号「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」
<通知>:平成11年老企第22号「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」

<基準>
(従業者の員数)
第二条 指定居宅介護支援事業者は、当該指定に係る事業所(以下「指定居宅介護支援事業所」という。)ごとに一以上の員数の指定居宅介護支援の提供に当たる介護支援専門員であって常勤であるもの(以下第三条第二項を除き、単に「介護支援専門員」という。)を置かなければならない。
2 (略)

<通知>
第2 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準
2 人員に関する基準
(1)介護支援専門員の員数
 介護支援専門員は、指定居宅介護支援事業所ごとに必ず1人以上を常勤で置くこととされており、常勤の考え方は(3)の①のとおりである。常勤の介護支援専門員を置くべきこととしたのは、指定居宅介護支援事業所の営業時間中は、介護支援専門員は常に利用者からの相談等に対応できる体制を整えている必要があるという趣旨であり、介護支援専門員がその業務上の必要性から、又は他の業務を兼ねていることから、当該事業所に不在となる場合であっても、管理者、その他の従業者等を通じ、利用者が適切に介護支援専門員に連絡が取れる体制としておく必要がある。
 なお、介護支援専門員については、他の業務との兼務を認められているところであるが、これは、居宅介護支援の事業が、指定居宅サービス等の実態を知悉する者により併せて行われることが効果的であるとされる場合もあることに配慮したものである。
(略)
 また、当該非常勤の介護支援専門員に係る他の業務との兼務については、介護保険施設に置かれた常勤専従の介護支援専門員との兼務を除き、差し支えないものであり、当該他の業務とは必ずしも指定居宅サービス事業の業務を指すものではない。

・介護支援専門員は、必ず1人以上を常勤で置くこと
・介護支援専門員については、他の業務との兼務を認められている

このふたつは、一見、矛盾していないように思われます。(常勤兼務でOK)
ところが、<常勤の考え方は(3)の①のとおり>というのが、意外に曲者です。

<通知>
(3)用語の定義
 「常勤」及び「専らその職務に従事する」の定義はそれぞれ次のとおりである。

① 「常勤」
 当該事業所における勤務時間(当該事業所において、指定居宅介護支援以外の事業を行っている場合には、当該事業に従事している時間を含む。)が、当該事業所において定められている常勤の従業者が勤務すべき時間数(週32時間を下回る場合は週32時間を基本とする。)に達していることをいうものである。同一の事業者によって当該事業所に併設される事業所の職務であって、当該事業所の職務と同時並行的に行われることが差し支えないと考えられるものについては、その勤務時間が常勤の従業者が勤務すべき時間数に達していれば、常勤の要件を満たすものであることとする。例えば、同一の事業者によって指定訪問介護事業所が併設されている場合、指定訪問介護事業所の管理者と指定居宅介護支援事業所の管理者を兼務している者は、その勤務時間が所定の時間に達していれば、常勤要件を満たすこととなる。

<当該事業所において、指定居宅介護支援以外の事業を行っている場合には、当該事業に従事している時間を含む。>

 居宅介護支援以外の事業を併設している場合には、その事業に従事している時間を含めてもよい、と読めるのですが、

<同一の事業者によって当該事業所に併設される事業所の職務であって、当該事業所の職務と同時並行的に行われることが差し支えないと考えられるものについては、その勤務時間が常勤の従業者が勤務すべき時間数に達していれば、常勤の要件を満たすものであることとする。>

<同時並行的に行われることが差し支えないと考えられないもの>
は、ダメなのですか?

居宅介護支援の管理者と訪問介護の管理者を兼ねることは、同時並行的に行える。

では、
居宅介護支援の<必ず1人以上を常勤で置くこと>とされる介護支援専門員と、同時並行的に行える
というのは、どんな兼務ですか?

私には、当該居宅介護支援事業所の管理者と、他には、せいぜい老人介護支援センター(在宅介護支援センター)のスタッフぐらいしか思いつきません。

A:介護支援専門員については、他の業務との兼務を認められている
B:介護支援専門員は、指定居宅介護支援事業所ごとに必ず1人以上を常勤で置くこと
C:併設事業所の職務で、居宅介護支援事業所の職務と同時並行的に行われることが差し支えないと考えられるものについては、その勤務時間が常勤の従業者が勤務すべき時間数に達していれば、常勤の要件を満たす

つまり、国は、矛盾する解釈通知を作った

というのは言い過ぎとしても、

誤解が生じやすい表現にしてしまった

とはいえると思います。

もし、介護支援専門員に柔軟に兼務を認める方針なら、たとえば次のような表現にしておけば、もう少しわかりやすかったはずです。


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同一の事業者によって当該事業所に併設される事業所の職務であって、当該事業所の職務に支障がない差し支えないと考えられるものについては、その勤務時間が常勤の従業者が勤務すべき時間数に達していれば、常勤の要件を満たすものであることとする。

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もちろん、
<指定居宅介護支援事業所ごとに必ず1人以上を常勤で置くこととされる介護支援専門員については他の事業との兼務は認められない>
という意図なら、そういう表現もできたはずです。

独断の結論:(いちばん)悪いのは国だ