障害者グループホームの家賃など

今回は、普段、関わっていないテーマなので、どうなりますことやら(汗)

民間の賃貸マンションを利用したケアホーム(共同生活介護)、グループホーム(共同生活援助)などで、
「入居者が負担する家賃の総額は、事業者が家主に支払っている家賃を超えてはならない」
と指導している自治体があるようです。
<WELの参考スレッド>
http://www.wel.ne.jp/bbs/article/135788.html

また、別にメールいただいた方の情報によると、
「利用者から徴収した食材料費等については、一定の期間ごとに精算し、残金が生じたときは、利用者にその残金を返還すること」
という指導もあるようです。


では、まず、基準省令の確認を。

平成18年厚生労働省令第171号
障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」

第143条 (第1~2項 略)

3 指定共同生活介護事業者は、前二項の支払を受ける額のほか、指定共同生活介護において提供される便宜に要する費用のうち、次の各号に掲げる費用の支払を支給決定障害者から受けることができる。
 一 食材料費
 二 家賃
 三 光熱水費
 四 日用品費
 五 前各号に掲げるもののほか、指定共同生活介護において提供される便宜に要する費用のうち、日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、支給決定障害者に負担させることが適当と認められるもの

4 指定共同生活介護事業者は、前三項の費用の額の支払を受けた場合は、当該費用に係る領収証を当該費用の額を支払った支給決定障害者に対し交付しなければならない。

5 指定共同生活介護事業者は、第三項の費用に係るサービスの提供に当たっては、あらかじめ、支給決定障害者に対し、当該サービスの内容及び費用について説明を行い、支給決定障害者の同意を得なければならない。

その解釈通知です。

平成18年障発第1206001号「障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」

(3)利用者負担額等の受領(基準第143条)
 [2] その他受領が可能な費用の範囲
  基準第143条第3項は、指定共同生活介護事業者は、前2項の支払を受ける額のほか、指定共同生活介護において提供される便宜に要する費用のうち、
  ア 食材料費
  イ 家賃
  ウ 光熱水費
  エ 日用品費
  オ 日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、支給決定障害者に負担させることが適当と認められるもの
  の支払を受けることができることとし、介護給付費等の対象となっているサービスと明確に区分されない曖昧な名目による費用の支払を受けることは認めないこととしたものである。
  なお、オの具体的な範囲については、別に通知するところによるものとする。

ということで、家賃についても、食材料費についても、その金額の算出方法については特段の定めはないようです。
(なお、共同生活援助についても、これらの規定が準用されています。)

ちなみに、施設入所支援などでは「食事の提供に要する費用」となっているところが、ケアホーム・グループホームでは「食材料費」となっています。
これは、介護保険認知症グループホームでも同様ですが、
「調理、洗濯その他の家事等は、原則として利用者と従業者が共同で行うよう努めなければならない」
という理念に基づくものと考えられます。


また、家賃については、
・借家借家法に「又貸し」時の家賃について制限があるか
自治体が行っている入居者の家賃補助に関連して制限があるか
という2点を調べてみたのですが、特段の定めは見つけられませんでした。
(私が見つけていないだけで、あるのかもしれません。)


というところで、現時点での私の考えです。

「入居者が負担する家賃の総額は、事業者が家主に支払っている家賃を超えてはならない」
という明確な法的根拠はない。
ただ、実費から乖離した金額を家賃として徴収するのは不適当ではないか。

食材料費についても、定期的に精算しなければならないという規定はないが、実際の食材料費から乖離した額を徴収するのは不適当ではないか。

事業者が「儲ける」(言葉が悪ければ、事業を安定的に継続するために資金を確保する)のは、理念的には人的なサービス費用(自立支援給付や利用者負担額)によるものと思われます。
不動産賃貸業や、飲食業ではないのですから、家賃や食材料費で相当の額の余剰が出ることは、やはり制度として想定されていないように思います。

ただし、家賃総額が事業者が負担する家賃を1円でも超えてはいけないのか、また、食材料費を1円単位まで精算しなければならないのか、ということについては疑義があります。

たとえば、事業者は、家賃以外にも敷金等を負担しているはずです。
更新料を請求される場合もあります(これは家主側が敗訴している例もあるようですが)。

また、冒頭に紹介したスレッドでも出ていますが、入居者が少ない場合(定員に満たない場合)の費用負担をすべて事業者が負担すべきか、という議論もあります。

「商品」(サービス)の価格を、原価主義で算出するのか、
「消費者」(利用者・入居者)が受ける効用で算出すべきか、という問題もあります。

完全原価主義なら、敷金や、入居者が少ない場合の危険負担も、事業者は家賃に上乗せして請求するでしょうし、
完全効用主義なら、入居者は、他の入居者が多かろうが少なかろうが、自分自身の家賃だけで済むはずです。
(敷金については微妙かもしれませんが・・・)

私が事業者の立場なら、そのあたりの事情を説明しながら、その自治体に指導の法的根拠をたずねてみるところでしょうが・・・

利用者側の立場なら、賃貸だろうが自社所有だろうが、少しでも安いケアホーム・グループホームを探すんでしょうね、きっと。