三角形の兼務

正式な用語ではありませんが、「垂直兼務」「水平兼務」という言葉があります。

垂直兼務というのは、たとえば同一の居宅介護支援事業所の管理者と介護支援専門員(ケアマネ)を兼務するような場合です。

水平兼務というのは、たとえば同一敷地内の居宅介護支援事業所の管理者と訪問介護事業所の管理者とを兼務するような場合です。

どちらも、法令や通知上、管理業務に支障がない限り、兼務を認められています。
また、このどちらかの兼務形態であれば、よほどのことがない限り、どの自治体も「支障がない」とするでしょう。
 

では、この組合せの場合はどうでしょうか。
たとえば、居宅介護支援事業所の管理者兼ケアマネが、併設の訪問介護事業所の管理者も兼務するような場合。
あるいは、訪問介護事業所の管理者兼ヘルパーが、併設の居宅介護支援事業所の管理者も兼務するような場合。

居宅介護支援事業所のケアマネについては、こちらの記事にも書きましたが、実は(一部、通知の表現で不適当なところはあるものの)基本的に兼務は可能です。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/22745049.html
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/22762274.html

訪問介護事業所のヘルパーについても、専従要件が厳しいサービス提供責任者以外は、特に問題はありません。

こういう「三角形の兼務」とでもいうような場合、問題になるのは、それぞれの管理者としての立場からです。



平成11年厚生省令第38号「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」

第3条 指定居宅介護支援事業者は、指定居宅介護支援事業所ごとに常勤の管理者を置かなければならない。
2 (略)
3 第1項に規定する管理者は、専らその職務に従事する者でなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
 一 管理者がその管理する指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員の職務に従事する場合
 二 管理者が同一敷地内にある他の事業所の職務に従事する場合
(その管理する指定居宅介護支援事業所の管理に支障がない場合に限る。)

平成11年老企第22号「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について」
第2 2
(2)管理者
 指定居宅介護支援事業所に置くべき管理者は、介護支援専門員であって、専ら管理者の職務に従事する常勤の者でなければならないが、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員の職務に従事する場合及び管理者が同一敷地内にある他の事業所の職務に従事する場合(その管理する指定居宅介護支援事業所の管理に支障がない場合に限る。)は必ずしも専ら管理者の職務に従事する常勤の者でなくても差し支えないこととされている。この場合、同一敷地内にある他の事業所とは、必ずしも指定居宅サービス事業を行う事業所に限るものではなく、例えば、介護保険施設、病院、診療所、薬局等の業務に従事する場合も、当該指定居宅介護支援事業所の管理に支障がない限り認められるものである。
 指定居宅介護支援事業所の管理者は、指定居宅介護支援事業所の営業時間中は、常に利用者からの利用申込等に対応できる体制を整えている必要があるものであり、管理者が介護支援専門員を兼務していて、その業務上の必要性から当該事業所に不在となる場合であっても、その他の従業者等を通じ、利用者が適切に管理者に連絡が取れる体制としておく必要がある。
 また、例えば、訪問系サービスの事業所において訪問サービスそのものに従事する従業者との兼務は一般的には管理者の業務に支障があると考えられるが、訪問サービスに従事する勤務時間が限られている職員の場合には、支障がないと認められる場合もありうる。また、併設する事業所に原則として常駐する老人介護支援センターの職員、訪問介護訪問看護等の管理者等との兼務は可能と考えられる。なお、介護保険施設の常勤専従の介護支援専門員との兼務は認められないものである。



平成11年厚生省令第37号「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
第6条 指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに専らその職務に従事する常勤の管理者を置かなければならない。ただし、指定訪問介護事業所の管理上支障がない場合は、当該指定訪問介護事業所の他の職務に従事し、又は同一敷地内にある他の事業所、施設等の職務に従事することができるものとする。

 

平成11年老企第25号「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」
第3 一 1
(3)管理者(居宅基準第6条)
 指定訪問介護事業所の管理者は常勤であり、かつ、原則として専ら当該事業所の管理業務に従事するものとする。ただし、以下の場合であって、当該事業所の管理業務に支障がないときは、他の職務を兼ねることができるものとする。なお、管理者は、訪問介護員等である必要はないものである。
 [1] 当該指定訪問介護事業所の訪問介護員等としての職務に従事する場合
 [2] 同一敷地内にある又は道路を隔てて隣接する等、特に当該事業所の管理業務に支障がないと認められる範囲内に他の事業所、施設等がある場合に、当該他の事業所、施設等の管理者又は従業者としての職務に従事する場合(この場合の他の事業所、施設等の事業の内容は問わないが、例えば、管理すべき事業所数が過剰であると個別に判断される場合や、併設される入所施設において入所者に対しサービス提供を行う看護・介護職員と兼務する場合などは、管理業務に支障があると考えられる。ただし、
施設における勤務時間が極めて限られている職員である場合等、個別に判断の上、例外的に認める場合があっても差し支えない。)


 
わかりにくい表現もありますが、太字部分で管理業務に支障がない場合に限定し、
赤色部分で支障がある場合を例示し、
さらに青色部分で例外的に支障がないとされる場合の例示をしています。
 
たとえば、やや極端な例として、
ケアマネ資格もヘルパー資格(介護福祉士など)も持っている人間が、
居宅介護支援事業所の管理者兼ケアマネ、及び、訪問介護事業所の管理者兼ヘルパー、
として位置づけられているとします。
 
実際に、常時、訪問業務(ケアマネでもヘルパーでも)を行うことは管理業務に支障があるでしょうが、
緊急時(他の従業者の急病や事故など)に、ケアマネとして、あるいはヘルパーとして訪問を行うことなら認められるのではないかと思います。