2023年のノーベル賞

2022年のノーベル賞では、「ネアンデルタール人との交雑」の記事を、
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2022/10/11/220129

2021年は「ノーベル物理学賞に眞鍋氏」という記事を書きました。
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2021/10/06/205539

2023年は、それほど分野を越えたインパクト、または意外性のあるものがなかったので(イラン女性の平和賞などは意義が大きいものだと思いましたが)、話題になったということなら、やはりこれでしょうか。

 


ノーベル生理学・医学賞にカリコ氏ら コロナワクチン開発貢献
NHK 2023年10月3日 0時26分 

ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発で大きな貢献をしたハンガリー出身で、アメリカの大学の研究者カタリン・カリコ氏ら2人が選ばれました。

スウェーデンストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は日本時間の午後7時前に記者会見し、ことしのノーベル生理学・医学賞に、新型コロナウイルスの「mRNAワクチン」の開発で大きな貢献をした
ハンガリー出身で、アメリカのペンシルベニア大学の研究者、カタリン・カリコ氏と
▽同じくペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン氏の2人を選んだと発表しました。

カリコ氏らは人工的に合成した遺伝物質のメッセンジャーRNA=mRNAをワクチンとして使うための基礎となる方法を開発しました。mRNAにはたんぱく質を作るための設計図にあたる情報が含まれています。

これを人工的に設計し、狙ったたんぱく質が作られるようにして体内で機能するようにすればワクチンとして使うことができると期待されていましたが、mRNAは、ヒトに投与すると体内で炎症が引き起こされるため、医薬品に使うのは難しいのが課題でした。

カリコ氏らはmRNAを構成する物質を別の物質に置き換えることで炎症反応が抑えられることを発見し、2005年に発表しました。

さらに、置き換えられたmRNAを使うと目的とするたんぱく質が劇的に効率よく作られることを発見し、医薬品として扱う上での大きな壁を取り除きました。この技術をもとに製薬会社がワクチンの開発に乗り出し、新型コロナのパンデミックでは記録的な速さでワクチンの開発に成功しました。この技術の柔軟性はほかの感染症のワクチンの開発にも道を開き、今後、がんの治療などへの応用が期待されています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231002/k10014211101000.html

 


新型コロナのワクチンに対して疑問あるいは反対の意見を持つ人は(少なくとも日本のネット上では)少なくなく、発表当日からしばらくは賛否両論が飛び交っていたようです。

上のNHK報道の先の方でも、

 

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記者会見では、新型コロナウイルスのmRNAワクチンの安全性についての質問も出されました。

これに対してノーベル賞の選考委員会は「mRNAワクチンの接種は始まってまだまもないが、すでにのべ130億人が接種を受けている。副反応も限定的で大きな懸念とは考えていない。有害事象として特に若い男性で心筋炎が出ることがあるが、ほとんどの場合は軽度で、特に長期的な影響なく解消するということだ。コロナに感染する方が長期的な健康への影響がある」と述べました。

また、ワクチンに反対する動きがあるなかで、科学界や医療界はどう対応し、どう説明すべきか問われたのに対しては「このワクチンがどのように機能するのか、引き続き仕組みを説明していく必要がある。新型コロナの場合、mRNAワクチンの開発が大きなニーズを受けて、加速したのは事実だが、臨床試験が短い期間で行われたからといって安全性の確認が省略されたわけではない。臨床試験がどのように行われたのかや、数十年に及ぶ基礎研究が行われてきたことについて伝えていくべきだと思う。ノーベル賞の受賞によってこうした事実に光が当たることを願う」と説明しました。
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とされています。

 

まあ、コロナに限らず、ワクチン接種が裏目に出たこと(重篤な副反応や、接種したにもかかわらず感染して重症化したなど)はわかりやすいのですが、成功した場合は目立ちません。
だから、直感的、実感的に「効かない」割に「有害」との主張が出やすいきらいはあります。

私は一定の(特にデルタ株以前の重症化の)予防効果はあったと思いますが、オミクロン株とその派生型が主流になってからは、接種から遠ざかり気味ではあります。
このあたりについては、今後も研究が続くでしょうし、議論もされていくだろうと思います。

 

ただ、今回の受賞はワクチン開発そのものについてではなく、ワクチン開発にも役立つmRNAの技術について、と理解しています。
さらっと書いてある
「この技術の柔軟性はほかの感染症のワクチンの開発にも道を開き、今後、がんの治療などへの応用が期待されています」
のところに、私も期待したいと思います。