「ブダペスト覚書」を正しく理解しているか?

日本維新の会参議院議員鈴木宗男氏の5月5日付けのブログより。

 

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 ウクライナ紛争でも一昨年10月23日にウクライナが、ロシア人が住む地域に自爆ドローンを飛ばし、昨年2月19日に核を戻せとも受け止められるブペスト覚書の再協議をゼレンスキー氏は言い、ロシアの特別軍事作戦が開始された。事の始まりは自分の言動からだということをゼレンスキー大統領は頭にないのか。

 なんとも他人事みたいな無責任な発言である。責任はすべて他人に押し付け、自分は善人を装っても、それが何処まで続くか冷静に見ていきたい。
https://ameblo.jp/muneo-suzuki/entry-12801621522.html

 


今頃になって気がついたのですが、この人、「ブペスト覚書」って書いてるんですね。
(注:私が知っている歴史では「ブペスト覚書」が正しいはず。)
彼のブログで検索してみたら、「ブペスト覚書」もありましたが、「ブベスト覚書」と書いている方がずっと多かったです。。


さて、「ブダペスト覚書の再協議」云々というのは、2022年2月19日のミュンヘンでの会議での発言のようです。

 

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ロシアによる軍事侵攻の脅威に直面するウクライナのゼレンスキー大統領は19日、ドイツ南部ミュンヘンで開催中の安全保障会議で演説し、ウクライナの安全を保障する2つの首脳会議を開くよう提案した。

ウクライナは平和を望み、欧州も平和を望んでいる」。国営通信社ウクルインフォルムによると、ゼレンスキー氏は演説の冒頭でこう強調した。ウクライナ北大西洋条約機構NATO)加盟に関して「そうした可能性がない間、我々は安全の保障を持ちたい」と訴えた。

そのためにゼレンスキー氏が提案したのは、1994年のブダペスト覚書の署名国である米英ロとの首脳会議だ。ブダペスト覚書はウクライナ核兵器を放棄する代わりに、同国に米英ロが安全保障を提供するという内容だ。その意義を問い直し、署名国から保証を得たい考えだ。

ただ、ブダペスト覚書の署名国による首脳会議にはロシアの反対が予想される。ゼレンスキー氏はもう一つ、米英仏ロ中の国連安保理常任理事国5カ国にウクライナとドイツ、トルコを加えた8カ国の首脳会議の開催も提案した。
日本経済新聞 2022年2月20日
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR194SA0Z10C22A2000000/

 

これ、もっともな発言と思いませんか?
何度か書いていますが、ブダペスト覚書の署名国であるにもかかわらず、2014年にクリミア占領等により合意を破ったのはロシアです。
ロシアがウクライナの主権と国境を尊重する気がないから、米英などの安全保障の枠組みを検討してほしいというわけでしょ?
これで「核を戻せとも受け止められる」というのは、ロシアの曲解に過ぎません。
それに、ゼレンスキー氏の言論が気に入らないからといって軍事侵攻するというのは、どう考えてもおかしい。

そもそも、2月19日の発言を受けて、2月24日(わずか5日後!)に大規模な軍事行動が起こせるというのは、ゼレンスキー氏の発言のずっと前から侵略準備をしていたという証拠でしょう。

「自爆ドローン」?
早期にウクライナが導入したトルコ製のバイラクタルTB2のことなら、自爆用ではありません。
親ロシア派支配地域がらみでは、ロシア側の発表情報は偽旗っぽいニオイがしますが、仮にウクライナ政府軍が親ロシア派側を攻撃したとしても、それに対して国境を越えてロシア軍が介入するのは、それこそ中露が(ミャンマースーダンなどで)反対してる「内政干渉」ですよね?

 

事の始まりは(2014年からの)自分の言動からだということをプーチン大統領は頭にないのか。
プーチン氏も鈴木氏も、なんとも他人事みたいな無責任な発言である。責任はすべてゼレンスキー氏や西側諸国に押し付け、自分は善人を装っても、それが何処まで続くか冷静に見ていきたい。