「言い分」があれば侵略してよいのか

週刊ポスト 2022.12.13 15:57
鈴木宗男氏 ロシア配慮発言を繰り返す理由を明かす「戦争は双方に言い分がある」>より
https://www.news-postseven.com/archives/20221213_1821424.html?DETAIL

 

──宗男さんは政界随一のロシア通として知られ、ウクライナでの戦闘開始後もブレずにロシア側に配慮した発言を繰り返しています。持論を曲げない理由を教えてください。

「戦争というものは、双方に言い分があるんです。どちらかを非難するよりも、双方の言い分を聞く機会をつくる。われわれが仲立ちすると呼びかけるのが、あるべきリーダーの姿だと思うんです。

 ところが、プーチン大統領が『悪』、一方で、ゼレンスキー大統領は『善』という構図は公平ではない。不思議なのは、日本の新聞でも、ロシアが侵攻せざるを得なかった原因をつくったのはなにかっていう視点がないんです」

──11月には、宗男さん主催の政治資金パーティーで、ゲストの森喜朗・元首相が「ゼレンスキー氏は、多くのウクライナ人を苦しめている」と発言して、物議を醸しました。

「森総理が言わんとしたのは、外交とは約束であり、信頼の積み重ねだという当たり前のことです。よく日本の国会議員が、『われわれはウクライナ国民とともにある』って言うんですが、勉強不足です。ゼレンスキー政権がそれほどまで信頼に足るのでしょうか。ミンスク合意(※注:2014年にウクライナ東部で始まった紛争の停戦合意)を守る義務はない、と開き直ったのはゼレンスキー氏ですよ。

 しかも、ブダペスト覚書(※注:1994年、ハンガリーの首都ブダペストで、アメリカ・イギリス・ロシアの核保有3か国が署名した覚書。内容はウクライナ核兵器放棄と引き換えに、安全を保障するもの)の見直しまで言い出した。だからロシアが特別軍事行動をせざるを得なかったんです」

──一方でその見方が世の主流からズレているという意識もありますよね。

「日本には北方領土問題や日ロ平和条約の締結という課題があるからです。北方領土の元島民は終戦後に1万7291人も引き揚げて、5376人が今も生きている。平均年齢は87歳です。その元島民たちと、どの政治家よりも接してきたのが鈴木宗男ですよ。

 元島民が言うんです。生きているうちに自由に行き来したい、お墓参りをしたい、と。一つでも、二つでもいいから島を返してもらいたい。そして、目の前の海を使わせてほしい、と。朝も夕も、対岸からふるさとを見つめている人たちの気持ちを考えてみてください。簡単に、ロシアはけしからんと騒いでいられないです。

 国益の観点からも、首の皮一枚つないでおかないと。外交は、最後まで対話の窓口を残しておくものなんです。なのに、鈴木宗男はロシアのスパイ、プーチンのポチと言われる。そんなの、冗談ポリバケツですよ!」
**********引用ここまで**********

 

相変わらず鈴木氏の発言にはツッコミどころかあり過ぎですが、根本的なことから。

「戦争というものは、双方に言い分があるんです。」
「不思議なのは、日本の新聞でも、ロシアが侵攻せざるを得なかった原因をつくったのはなにかっていう視点がないんです」

言い分があれば、他国に軍事侵攻してもよいのでしょうか?
不思議なのは、日本維新の会鈴木宗男参議院議員には、国境を越えて軍事侵攻したロシアに対して、
「言い分がどうであれ軍事侵攻は国連憲章違反だからすぐに撤退するべきです」
という姿勢を見せていないところです。

つまり、言い分があれば、他国を侵略し、強盗殺人、強制性交(ローティーンや幼女への性的暴行を含む)、拉致・誘拐(児童を保護者から引き離して「ロシアの正当性」を洗脳する行為を含む)などを行ってもよい、と?

 

なお、ブダペスト覚書については、2014年のクリミア武力併合で、ロシア側が破っています。
また、ミンスク合意(ミンスク議定書、及びそれが破綻した後のミンスク2)については、それこそ双方に言い分があるでしょう。
少なくとも、親ロシア勢力側に履行違反があったことは確実です。

このあたりについては、こちらの記事でも触れています。
「日本がロシアに喧嘩を売ったのではない」
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2022/09/12/212058

 

それにしても、この注を含めた週刊ポストの記事、事実関係について鈴木氏(というよりロシア側か)に迎合しすぎて、たとえばウクライナからの避難者支援に尽力している人々などから、週刊ポスト不買運動が起きたとしても不思議ではないような気がします。

 

以前にも書いたように思いますが、日本がどう行動するか(たとえば、もう少し中立寄りとか)というようなことについて、鈴木氏のような主張があったとしても、それは言論の自由が保障されている日本ですから、かまわないと思います。
しかし、(言い分があれば)軍事侵略を肯定するかのような発言はまずいでしょう。
また、事実関係を歪めてウクライナを不当に貶めることも、日本の国会議員の品位を落としているように思いますが、いかがでしょうか。