車いす系のパラ球技

では、いよいよ、車いす系のパラリンピック球技について。

 

車いすに座ると、立位の競技者(立って競技するプレーヤー)に比べて、全てが低くなります。目や手の高さ、ラケットなど用具が到達する最高の高さ、などです。
たいていの競技では、車いすの座面から離れてはいけない(立ち上がって競技してはいけない)というようなルールがあります。また、実際に立ち上がることが困難な競技者が多いため、立ち上がりもジャンプも物理的にできない場合が多いと思います。

 

この結果、車いすテニスでは、サーブを打つ位置(高さ)が、一般的なテニスよりは低くなります。つまり、スビンサーブやスライスサーブなど回転を適切にかけないと、相手側のサービスエリアには入りません。「強烈なフラットサーブ」というのは、物理的に無理といっていいでしょう。

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また、スマッシュやボレーなど、いわゆるネットプレーも難度が上がります。
後方からネットへのダッシュや、ネットについた後の左右への移動、ロブを打たれた場合の後方への移動なども、一般的なテニスよりは難度が上がるので、先のサーブの制約も合わせると、サービス側は一般的なテニスほどは有利ではない、といえるかもしれません。

 

このあたりは、プレーヤーにより差があるでしょう。
たとえば国枝慎吾選手は、東京パラリンピックでも果敢にネットダッシュをしたり、その途中の一般的なテニスのプレーヤーならボレーをためらうかもしれないぐらいネットとの距離がある位置でも難しいボレーを決めたりしていました。
上地結衣選手は国枝選手ほどは前に出る印象はありませんが、それでも低い位置(ネットから距離がある位置)のボレーがきれいに決まっていました。

 

車いすバスケットボールでも、高さの問題はあります。
というより、こちらの方が高さの差は重大かもしれません。
(日本代表チームの)フリースローが外れるたびに、「おおっ」と声が出てしまうことがありましたが、立位の(つまり通常の五輪などの)バスケットのフリースローでも外れる場合があるのに、それより数十センチは低い位置から決めるのは、楽なものではないと思います。
車いすを慣性で疾走させながら速攻でレイアップシュートを決める選手が、ローポイントのメンバーの中にもいましたが、これなどは私には神業に見えます。

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他にも車いすや、車いす球技の特性があります。
静止状態から動き出すのにはエネルギーが必要で、スタートダッシュで健常者に勝つのは困難です。
一方、ある程度の速度に達すれば、前進なら車いすの方が速くなります。
陸上競技の100メートル走では、パラリンピックの他の種目(視覚障害や上肢障害など)に勝てませんが、マラソンでは健常者の世界記録よりも速くなります。
それでも、真横には動けません。
これは、一般的には球技には有利には働きにくい特性でしょう。

 

ただ、この特性を考慮して、パートナーがプレー中も自分の車いすが静止しないようにぐるぐる回って備える車いすテニスのダブルスや、真横に動けない相手選手を封じる車いすバスケットの工夫を見ることができます。

 

やはり、パラリンピックスポーツはおもしろい。


そして、これはパラスポーツに限りませんが、日本人の場合、球技に人気が集まる傾向はあるようで、このことについて考えてみるのもおもしろそうです。

ただし、今夜は別に書きたい記事があるので、機会があれば、ということにします。