フォルティウスとリラーズの明暗

今季のカーリングツアー、2大会が済みました。

 

フォルティウスが2戦連続優勝。
この間、1大会目の予選リーグで中部電力に1敗したのみ、あとは全勝です。
これまで(少なくとも主要大会では)出場がなかった小林未奈選手がリード兼バイススキップとしてフル出場し、最後の決勝では小野寺佳歩選手の急な欠場(ツイッターによると風邪症状で、抗原検査は陰性とのこと)にもかかわらず代替出場の船山弓枝選手が完璧に穴埋めするという、危なげない状況でした。

 

一方、因縁の?北海道銀行(リラーズ)は、いずれも準決勝に進出できませんでした。
内容的にも、どうぎんクラシックのSTRAHL戦に勝ったのが唯一のまともな勝利(稚内カップの1勝は不戦勝)という、不安(不満?)の残る状態です。

 

フォルティウスについては、もともとロコ・ソラーレと五輪代表争いをするレベルのチームで、北海道銀行(法人としての)とのスポンサー契約の終了後に新スポンサー探しなどに追われていたのが、ようやくカーリングに集中できるようになってきた、ということでしょうか。
「ちなみ現象」(北海道銀行 に捨てられた と決別したことに伴う奮起により能力が向上する現象)もあったかもしれません。

 

北海道銀行リラーズは、メンバーが20歳前後のまだ若いチームです。
ですが、ことしの日本選手権で予選リーグ2位(最終的には3位)に入ったように、素質がないわけではないと思います。

ネット上の複数個所で、スキップの田畑百葉選手がドローショットを苦手としている、という弱点についての言及が見られました。
まあ、今季の2大会では、シーズン初めということもあるのか、他のチームでもハウスをスルーするドローが見受けられましたが・・・

 

ことし5月の日本選手権で、通常はドローで1点を確保するところ、田畑選手がヒットアンドロールを選択したシーンがあって、ドローが嫌いなのかな、と思った記憶があります。

探してみたところ、北海道銀行vsフォルティウス戦の第5エンドが見つかりました。

 

 

先攻のフォルティウスのストーン(黄色)が、ほぼ平行にNo.1、No.2となっています。
後攻の北海道銀行の最終投を残すのみ。
ダブルテイクアウトでブランクエンドを狙うのは難しいところ。
でも、ハウスの中央付近のかなり広いエリアにドローショットを決めれば、1点を確保することはできます。

ハウスの手前にガード等の障害物は見受けられず、世界選手権や五輪に出場するようなチームなら、たぶんドローからショット選択を考えるでしょう。

 

しかしながら、田畑選手が選択したのは、ヒットアンドロールでした。

結局、シューター(自分が投げたストーン)が滑りすぎて、わずかにNo.1を逃し、フォルティウスが1点スチールしました。
フォルティウスバイススキップ・船山選手が懸命にスイープしてシューターを加速させたことが大きかったと思います。)

 

たしかに、田畑選手はドローショットよりもテイクショットの方が得意なのかもしれません。
ですが、(スキップというより)フォースである以上、ドローが必要であることも認識しているでしょう。
現に、日本選手権でも、見事にドローを決めたシーンはあったはずです。

 

実は、初めてカーリングゲームを見たトリノ五輪の頃、テイクショットよりもドローショットの方が相当難しそうだ、と私は思いました。

その印象は、今でも原則として変わっていません。
「原則として」というのは、ドローのような遅いショットは、スイープによってコントロールできる度合いが大きいからです。

 

車いすカーリングのように、スイープがなく自分のショットだけで決めなければならないのなら、ドローで思いどおりの位置に止めることは難しい。
でも、やや弱めに(遅めに)投げて、スイーパーやハウスのコール担当者がアイスの状態を見ながら支援してくれるのなら、田畑選手にとってそれほど難易度が高いショットとはならないような気がします。
そのあたりの連携がチームとして機能しているのなら。

 

田畑選手が、というより北海道銀行リラーズが、ドローよりテイクショットを選択する傾向が強いとしたら、個人の技術的な問題というより、チームワークや、それに対する(田畑選手の)信頼感のようなものに課題があるのかもしれません。

 

メンバーの仲が悪いという意味ではありません。
オフアイスで仲がよいかどうかにかかわらず(それも影響はするでしょうが)、氷の上でメンバーのスイープやコールなどに信頼がおけるかどうか、です。

 

北海道銀行カーリング部は、フォルティウスとたもとを分かって昨年12月に設立されたばかりで、この4人のチームになってから1年も経っていません(「winger」というジュニアチームで一緒だったメンバーはいますが、伊藤彩未選手は入っていません)。
「どうぎんクラシック」のエキシビションなどを見ても、強いリーダーシップとか、でなければ強烈なコミュニケーション能力(北海道銀行を首になった以降の吉田知那美選手のような)を発揮するタイプの選手はいないようですし、年齢・キャリア的にもフラットな4人のようなので、コーチなど第三者が何か働きかけるか、した方がよいように思います。

あ、あくまでカーリングをしたことがない人間のたわごとです。


<おまけ>
今季の2大会両方に出場した他の女子チームの成績です。

STRAHL
どうぎんクラシック 準優勝(予選リーグ1勝2敗・2位)
稚内みどりチャレンジカップ 予選リーグ3位(1勝2敗)

中部電力
どうぎんクラシック 3位(予選リーグ2勝1敗・1位)
稚内みどりチャレンジカップ 4位(予選リーグ2勝1敗・1位)

ロコ・ステラ
・どうぎんクラシック 予選リーグ4位(1勝2敗)
稚内みどりチャレンジカップ 3位(予選リーグ2位・2勝1敗)

大学選抜
・どうぎんクラシック 予選リーグ3位(1勝2敗)
稚内みどりチャレンジカップ 予選リーグ4位(1勝2敗)