障害者雇用未達成企業の締め出しは地方自治法違反か?

障害者雇用率未達成ならNO」宣言、総務省が待った

6月28日12時21分配信 読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090628-00000101-yom-soci

以下、記事より引用します。

 大阪府が、全国最悪レベルの障害者の雇用状況を改善する切り札として10月に予定していた「障害者の法定雇用率未達成企業と取引しません宣言」が、暗礁に乗り上げている。
 事業者に対する府の入札参加条件に、障害者の法定雇用率(民間企業1・8%)達成を義務づける条例を制定し、その後、同宣言を出す方針だったが、総務省が「入札に公正性を求めた地方自治法に違反する恐れがある」として、条例案に「待った」をかけたため。

障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)及び同法施行令で、一般事業主は従業員の1.8%、国や自治体は2.1%以上の障害者を雇用することが義務付けられています。

ですが、その法定雇用率に達していない企業は多く、2008年度で「過去最高になった」といいながらも全国で1.59%にとどまっているという情報があります。
(関心のある方は、「ノーマライゼーション政策研究」「過去最高というけれど法定雇用率には達していない民間企業――2008年度の厚生労働省の発表した障害者雇用率――」をご参照ください。)

ちなみに、記事によると、大阪府で法定雇用率を満たす企業は昨年6月現在、42・8%で、全都道府県の43位だそうです。

引き続き、記事を引用します。

 地方自治法施行令では、入札への参加を制限できる理由について、手抜き工事、談合、契約不履行などの不正、不当行為のほか、「契約の性質または目的により必要な資格を定めることができる」と規定。府はこの規定を根拠に、未達成企業を入札から排除することも可能と考えていた。
 しかし、府と協議した総務省は「発注業務と直接関係がない障害者の雇用率を参加資格に盛り込むのは、安易な制限で問題だ」と否定的な見解を示した。

では、地方自治法を見てみます。

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第234条 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札指名競争入札随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。
(2~5 略)
6 競争入札に加わろうとする者に必要な資格、競争入札における公告又は指名の方法、随意契約及びせり売りの手続その他契約の締結の方法に関し必要な事項は、政令でこれを定める。
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その政令地方自治法施行令)はこちらです。

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第167条の4 普通地方公共団体は、特別の理由がある場合を除くほか、一般競争入札に当該入札に係る契約を締結する能力を有しない者及び破産者で復権を得ない者を参加させることができない。
2 普通地方公共団体は、一般競争入札に参加しようとする者が次の各号のいずれかに該当すると認められるときは、その者について三年以内の期間を定めて一般競争入札に参加させないことができる。その者を代理人、支配人その他の使用人又は入札代理人として使用する者についても、また同様とする。
 一 契約の履行に当たり、故意に工事若しくは製造を粗雑にし、又は物件の品質若しくは数量に関して不正の行為をしたとき。
(略)

第167条の5 普通地方公共団体の長は、前条に定めるもののほか、必要があるときは、一般競争入札に参加する者に必要な資格として、あらかじめ、契約の種類及び金額に応じ、工事、製造又は販売等の実績、従業員の数、資本の額その他の経営の規模及び状況を要件とする資格を定めることができる。
2 普通地方公共団体の長は、前項の規定により一般競争入札に参加する者に必要な資格を定めたときは、これを公示しなければならない。

第167条の5の2 普通地方公共団体の長は、一般競争入札により契約を締結しようとする場合において、契約の性質又は目的により、当該入札を適正かつ合理的に行うため特に必要があると認めるときは、前条第一項の資格を有する者につき、更に、当該入札に参加する者の事業所の所在地又はその者の当該契約に係る工事等についての経験若しくは技術的適性の有無等に関する必要な資格を定め、当該資格を有する者により当該入札を行わせることができる。
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私も地方公務員の端くれですが、地方自治法には詳しくないので(爆)
この条文をどう読むかは難しいところだとは思います。

府側は、同法施行令第167条の5の2の規定で制限できると考え、総務省にダメ出し食らったみたいですが、
私は第167条第5項第1項の規定でも制限できるような感じもしています。
障害者雇用率というのは、「従業員の数・・・その他経営の状況」に該当するとは読めないんでしょうかね?

総務省は、「発注業務と直接関係がない障害者の雇用率」と言っているようですが、
法定どおり障害者を雇用している企業に比べて、未達成企業はその分コストが低く済むという見方(※)もできるわけで、
公平な競争入札を行うためにも、法令に違反している企業を閉め出すのは、地方自治法の、少なくとも本来の理念には反するものではない
という考え方もできると思います。


※法定雇用率を下回る企業は、不足する人数1人につき5万円の納付金を納めなければなりません(規模により例外あり)。
 ただ、これだけでは、公正な競争ができるといえるほどのハンディキャップではないでしょう。
 そもそも、ペナルティを払えば法令を遵守しなくてよい、という考え方は成り立ちません。
 (介護保険などの減算についても同様のことがいえると思いますが。)