法定受託事務と介護扶助

地方自治法で、自治事務法定受託事務という言葉が出てきます。

第二条(第1項~第7項 略)
8 この法律において「自治事務」とは、地方公共団体が処理する事務のうち、法定受託事務以外のものをいう。

9 この法律において「法定受託事務」とは、次に掲げる事務をいう。
 一 法律又はこれに基づく政令により都道府県、市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第一号法定受託事務」という。)
 二 法律又はこれに基づく政令により市町村又は特別区が処理することとされる事務のうち、都道府県が本来果たすべき役割に係るものであつて、都道府県においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの(以下「第二号法定受託事務」という。)

10 この法律又はこれに基づく政令に規定するもののほか、法律に定める法定受託事務は第一号法定受託事務にあつては別表第一の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に、第二号法定受託事務にあつては別表第二の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に掲げるとおりであり、政令に定める法定受託事務はこの法律に基づく政令に示すとおりである。

11~12 略

13 法律又はこれに基づく政令により地方公共団体が処理することとされる事務が自治事務である場合においては、<国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない。>

14~15 略

16 地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならない。なお、市町村及び特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない。

17 前項の規定に違反して行つた地方公共団体の行為は、これを無効とする。

介護保険法では、都道府県の事務の一部を除き、ほとんどが自治事務です。
<国は、地方公共団体が地域の特性に応じて当該事務を処理することができるよう特に配慮しなければならない>わけです。(第13項)

もちろん、法令に(市町村等は都道府県の条例にも)違反して事務処理することはできません。(第16項、第17項)

では、国の通知はどうか、といえば、自治事務に対しては、
地方自治法第245条の4第1項の規定に基づく技術的な助言」である旨が申し添えてある場合がよく見られます。
国の見解は示していますが、法令と同等の拘束力は(直接的には)ありません。

一方、法定受託事務の場合は、
地方自治法第245条の9第1項及び第3項の規定に基づく処理基準」となっていたりします。
こちらは、拘束力があるとされています。

生活保護法にある自治体の事務は、主要部分については、こちらの法定受託事務です。

たとえば、介護扶助などもそうです。

だから、

被保険者以外の者(いわゆる「みなし2号」)についても被保険者に準じた範囲とするものであること

と国が定めている以上、自治体はそれに従う必要があります。

したがって、たとえば
「うちの自治体では支給限度管理対象外の加算(緊急時訪問看護加算など)も含めて支給限度内に収まるように」
というようなことを言い出したとしたら(普通はあり得ない見解ですが)、

「あほか」


と言ってもよいということになります。

みなし2号の介護扶助で(被保険者と異なる水準しか提供しない)独自基準は可能か、というような意味なら、ローカルルールはあり得ません。


なお、介護保険法第43条第3項等により、市町村が国と異なる支給限度額を条例で定めている場合には、
その支給限度額に従うこととなります。

国(生活保護担当部署)は、全国一律の支給限度額にあわせることを定めているのではなく、
その地域の被保険者と同等のサービスを「みなし2号」である被保護者にも支給することを求めているのですから。