性的虐待と児相職員の公益通報

京都市児童相談所
資料流出問題 「公益通報で処分不当」 職員が提訴
毎日新聞2016年7月29日 大阪朝刊)

 児童養護施設の入所者記録を不正に持ち出したなどとして停職処分となった京都市児童相談所の男性職員(45)が28日、「公益通報で職場の不正をただす目的だった」として、市を相手に処分取り消しを求める訴訟を京都地裁に起こした。

 訴状などによると、施設では昨年9月、少女にわいせつ行為をしたとして当時の施設長が児童福祉法違反容疑で逮捕・起訴された。職員は昨年3月と10月、児相が問題を放置していたなどとする内容を公益通報外部窓口の弁護士に連絡。市は、業務と関係ない少女の個人情報記録を閲覧したなどとして、同12月4日付で職員を停職3日の処分にした。

 職員側は、記録の持ち出しは公益目的であり違法性はないとしている。28日に記者会見した職員は「このままでは、怖くて誰も公益通報ができなくなる」と訴えた。並川哲男・京都市人事部長は「処分は適切だった」とのコメントを出した。【川瀬慎一朗】
http://mainichi.jp/articles/20160729/ddn/012/040/038000c


公益通報なのに処分」 京都市職員が市を提訴
関西テレビ 7月28日(木)23時41分配信)

個人情報をのぞき見したとして停職の処分を受けた京都市職員の男性が、「閲覧は不正をただすためだった」と主張し、処分の取り消しを求めて京都市を訴えました。

【提訴した職員の男性】
「黙っちゃうとまずいなって思った。それを隠ぺいしようとしてるのを見つけてしまったから」

隠ぺいを見つけたから公益通報したと語る京都市職員の男性。

男性は去年、担当ではないのに、京都市児童相談所の相談記録を何度も閲覧したとして、京都市から停職3日の懲戒処分を受けました。

男性が閲覧したものとは?

去年9月、京都市左京区児童養護施設で、施設長だった男が当時17歳の少女にみだらな行為をしたとして逮捕・起訴されました。

京都市はこの少女の親からおととし12月に初めて相談を受けたとしていましたが、男性は、その4ヵ月前に既に児童相談所に寄せられていた相談記録を閲覧したのだといいます。

【提訴した職員の男性】
「“児童相談所の対応に問題なし”と言ってます。でもお母さんからの相談を面倒くさそうに対応していた人も。お母さんからの貴重な情報を生かせなかったことに反省はないのか」

その上で、閲覧し印刷して持ち出したのは「公益通報をすることで児童相談所の対応の遅れをただすためだった」と主張、懲戒処分は違法であるとして処分の取り消しを求めています。

京都市は「処分は適切と考える。訴訟の中で主張を行う」としています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160728-00000007-kantelev-l26


内部告発者名、市に伝える 京都、通報窓口の弁護士

 内部告発を受け付ける京都市公益通報外部窓口の弁護士に通報した男性職員の氏名が、市側に伝えられていたことが8日、分かった。市は、外部窓口に通報した場合に「了承なく、市へ氏名が伝わることはない」と庁内に周知しているが、職員は「市に伝わるとは思っていなかった。事前の確認も事後報告もなかった」と批判している。

 2014年度までの5年間で外部窓口に職員が実名で通報した19件のうち、この職員の通報を含む16件の氏名が市に伝わっている。市は、いずれも本人の了承を得ている、としている。

 職員や市によると、児童福祉法違反容疑で児童養護施設の施設長が逮捕された事件で、職員は市児童相談所の対応が遅れたことを訴えるため、昨年3月、公益通報外部窓口にメールで通報した。職員は昨年12月、内部記録を持ち出したとして停職3日の懲戒処分を受け、市人事委員会に「公益通報のためだ」と処分取り消しを求める不服申し立てを行った。

 職員はその間、市の調査時点で自分が公益通報したことを事前に把握されていたとの疑問を持ち、今年1月、弁護士に問い合わせた。

 職員によると、弁護士は伝達を認め、職員の通報メールに「私が通報者だと推認される覚悟はある。市コンプライアンス推進室から私に直接問い合わせていただく方が効率的かとも考えている」と記載していたことを理由に挙げたという。職員は「文面は告発の覚悟を示しただけだ。氏名は市に伝わらないと信じて外部窓口に通報した」と憤る。

 公益通報の外部窓口は、京都市が07年10月に設けた。要綱で「(外部窓口から)市へ氏名の報告は要しない」と定め、職員向けにはチラシなどで「通報者の秘密は守られる」「了承なく、市の職員に名前が伝わることは一切ない」と周知している。了承の確認方法の規定はなく、弁護士の判断に任せていた。

 取材に対し弁護士は「守秘義務があり、答えられない」と話し、市コンプライアンス推進室は「弁護士から了承を得たと聞いている。問題があるとは考えていない」としている。

 <公益通報者保護制度>食品偽装やリコール隠しといった企業不祥事が、内部からの通報で相次いで明らかになったことから、企業や行政・報道機関への通報者を解雇など不当な扱いから保護し、是正する目的で2006年に公益通報者保護法が施行。京都市をはじめ行政機関は通報窓口を設け、処分権限を持つ事業者に関する外部通報と、職員による内部通報を扱う。

■明確な了承が必要

 公益通報制度に詳しい升田純中央大法科大学院教授(民事法)の話 内部告発者の実名を伝えることが、不利益な取り扱いのきっかけになることもある。告発者が明確に了承していない限り、匿名のままにして保護すべきで、あいまいな回答や判断を基に伝えることは許されない。実名の取り扱いについて、告発者と外部窓口で認識が異なること自体が問題であり、公益通報制度の信頼性に関わる。

京都新聞 2016年03月09日 03時00分 】
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20160308000202


性的虐待、4カ月早く相談 児童養護施設長逮捕で京都市

 施設に入所していた少女にみだらな行為をしたとして、児童福祉法違反容疑で京都市左京区児童養護施設の施設長が逮捕された事件で、市児童相談所(児相)に母親から初めて通告があったと市が議会に報告してきた昨年12月より4カ月早く、8月にも性的な被害につながりかねない内容の相談を受けていたことが21日、分かった。この相談では虐待行為が確認できなかったため市は議会に報告しなかったという。

 児相によると、昨年8月20日と22日、少女の母親が児相に電話で「施設長にホテルを予約してもらっていると子どもが言っている」などと相談。市は同9月に母親から、10月に施設長から聞き取り調査をしたが言い分が食い違い、追加調査を進めようとしていた。

 その後12月に、母親が「施設長との間にみだらな行為があった」と児相へ通告。施設長逮捕後の9月、市議会教育福祉委員会で市は、この時点を初の通報と報告していた。

 この日の市議会決算特別委員会総括質疑で、村山祥栄市議(京都)が「相談の事実が議会への報告資料にはなかったかのようになっている。重大な事実隠蔽だ」と批判。委員会後の取材に市保健福祉総務課の担当者は「相談内容を調べたが虐待行為の事実が確認できず、逮捕に関する経過のみを報告した」と述べた。

京都新聞 2015年10月22日 07時24分 】
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20151022000016


いろいろツッコミどころがありそうな事件ですが、記事を遡っていく形で並べてみました。

あと、こういう報道もあります。

入所17歳少女にみだらな行為 容疑で54歳養護施設長を逮捕 キャンプ中「部屋に来ないか」
(産経WEST 2015.9.8 20:40更新)

 児童養護施設に入所していた少女にみだらな行為をしたとして、京都府警少年課と下鴨署は8日、児童福祉法違反の疑いで、京都市左京区社会福祉法人「迦陵園(かりょうえん)」の施設長、松浦弘和容疑者(54)を逮捕した。「身に覚えがない」と容疑を否認している。

 逮捕容疑は、平成26年8月5日、滋賀県長浜市内のキャンプ場にある宿泊施設で、養護施設に入所していた京都市西京区の女性=当時(17)=が18歳未満と知りながら、みだらな行為をしたとしている。

 下鴨署によると、松浦容疑者は、入所児童らと1泊2日のキャンプ中に「部屋に来ないか」と女性を呼び出し犯行に及んだという。女性の母親から市に相談があり、問題が発覚した。
(以下略)
http://www.sankei.com/west/news/150908/wst1509080086-n1.html


児童手当380万円横領で逮捕 児童養護施設の55歳元施設長
(産経WEST 2016.3.3 21:03)
http://www.sankei.com/west/news/160303/wst1603030081-n1.html


悪いやっちゃなあ・・・というのはともかくとして、報道で判明している情報を、

H26.8.5 「みだらな行為」
H26.8.20、8.22 母親が児相に電話相談
H26.9  市が母親から聞き取り
H26.10  市が施設長から聞き取り
H26.12  母親が児相に通告
H27.3   職員が公益通報
H27.9.8  施設長逮捕(児童福祉法違反)
H27.10   職員が公益通報
H27.12.4  市が職員を停職処分(3日)

と並べると、職員の通報には理由があり、懲戒処分は不適当、という印象です。
裁判所はどう判断するでしょうか。