熊本地震等の介護報酬等の取扱い

事務連絡
平成28年4月22日
  都道府県
各 指定都市 介護保険担当主管部(局)御中
  中核市

厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室 高齢者支援課/振興課/老人保健課

平成28年(2016年)熊本地震及びそれに伴う災害における介護報酬等の取扱いについて

 今般の平成28年(2016年)熊本地震及びそれに伴う災害について、被災地域が広範に及ぶとともに、緊急的な対応が必要であることから、介護報酬等の取扱いについて、下記のとおり整理することといたしました。
 つきましては、管内市町村及びサービス事業所等への周知を徹底して頂きますよう、よろしくお願いいたします。
 なお、事業所等が被災したことにより、一時的に介護報酬の基本サービス費や加算の算定要件を満たすことができなくなる場合等がありますが、以下に示すものは例示であり、その他の柔軟な取扱いを妨げるものではないことを申し添えます。


1.各サービス共通事項

(1)新たに介護が必要になった場合の要介護認定の取扱い
 被災等により他の市町村に避難した者について、新たに介護が必要となった場合は、避難先の市町村において要介護認定の事務を代行し、事後的に避難元の市町村に報告する等の柔軟な取扱いとしても差し支えない。
 その際、認定の重複を避けるため、可能な範囲であらかじめ避難前の市町村と連絡をとる等、適切な対応を図られたい。

(2)避難所や避難先の家庭等において居宅サービスを提供した場合
 避難所や避難先の家庭等で生活している要介護者及び要支援者に対して居宅サービスを提供した場合においても、介護報酬の算定は可能である。
 サービスの提供に当たっては、市町村、地域包括支援センター、指定居宅介護支援事業所等との連携を図り、できる限りケアプランに沿って、必要な介護サービスを確保するよう努めること。

(3)被災等のために介護保険施設等の入所者が、一時的に別の介護保険施設医療機関等に避難している場合
 別の介護保険施設医療機関等に一時的に避難している場合、原則として、避難先の施設等へ入所・入院等を行い、避難先の施設等が施設介護サービス費や診療報酬を請求すること。
 ただし、一時的避難の緊急性が高く手続が間に合わない等やむを得ない場合に、これまで提供されていたサービスを継続して提供できていると保険者が判断したときは、避難前の介護保険施設等が施設介護サービス費等を請求し、避難先の介護保険施設医療機関等に対して、必要な費用を支払う等の取扱いとしても差し支えない。

(4)やむを得ない理由により、避難者を居室以外の場所で処遇した場合
 被災等による避難者が介護保険施設等に入所した場合において、やむを得ない理由により、当該避難者を静養室や地域交流スペース等居室以外の場所で処遇を行ったときは、従来型多床室の介護報酬を請求することとして差し支えない。
 なお、本来処遇されるべき場所以外の場所におけるサービス提供が長期的に行われることは適切ではないため、適切なサービスを提供可能な受け入れ先等の確保に努めること。

(5)サービス提供体制強化加算の算定要件について
 今般の被災等により、介護職員等の増員や新規利用者の受け入れ等を行った事業所については、サービス提供体制強化加算の有資格者等の割合の計算の際、当該職員及び利用者数等を除外して算出してもよい。

(6)サービス事業所等が被災したことにより、一時的に介護報酬の加算の算定要件に係る人員基準を満たすことができなくなる場合
 基準以上の人員配置をした場合に算定可能となる加算(看護体制加算など)や、有資格者等を配置した上で規定の行為を実施した場合に算定可能となる加算(個別機能訓練加算など)については、利用者の処遇に配慮した上で柔軟な対応が可能である。

2.サービス種別

(1)訪問介護
 [1] 特定事業所加算
  [ア] 特定事業所加算の算定要件である定期的な会議の開催やサービス提供前の文書による指示・サービス提供後の報告について、今般の被災等により、やむを得ず当該要件を満たすことができなくなった場合についても、当該加算の算定は可能である。
  [イ] 今般の被災等により、介護職員等の増員や新規利用者の受け入れ、サービス提供回数の増等を行った事業所については、特定事業所加算の有資格者等の割合や重度要介護者等の割合の計算及び配置すべきサービス提供責任者の員数の計算の際、当該職員及び利用者数等を除外して算出してもよい。
 [2] 介護予防訪問介護
   介護予防訪問介護の利用者が市町村を越えて避難した場合、同一保険者内のサービス事業者の変更に準じて日割り計算を行うこと。
 [3] その他
   今般の被災等により、訪問介護等に従事する介護職員が不足した場合、例えば、一時的に通所介護事業所の職員(旧訪問介護員2級過程修了者)を代わりに従事させるときは、通常、介護保険法第75条等に規定する届出を行う必要があるが、緊急性の高さに鑑み、届出時期の猶予等の柔軟な運用を図り、被災者等のサービスの確保に努められたい。
   なお、平成11年4月20日の全国課長会議において、「運営規程の内容のうち『従業者の職種、員数及び職務の内容』については、その変更の届出は1年のうちの一定の時期に行うことで足りる」旨の周知を行っており、適宜参照されたい。

(2)(介護予防)通所介護認知症対応型通所介護
 [1] 入浴介助加算
  今般の被災等により、通所介護事業所等の浴槽等の入浴設備が損壊し、入浴サービスが提供できなくなった場合であっても、事業所が利用者のニーズを確認し、清拭・部分浴など入浴介助に準ずるサービスを提供していると認められるときは、入浴介助加算の算定が可能である。
 [2] 介護予防通所介護
  今般の被災等により、介護予防通所介護事業所が休業し、利用者に対して、介護予防サービス・支援計画に基づく適切な利用回数等のサービスが提供できなかった場合には、当該利用者については、日割り計算を行うこと。
  一方、休業の影響を受けず、適切な利用回数等のサービスを提供された利用者については、日割り計算は行わないこと。
  日割り計算の方法は、月の総日数から、震災の影響により休業した期間(定期休業日を含む。)を差し引いた日数分について請求すること。
  なお、介護予防通所介護事業所がガソリンの調達が困難であり、送迎に支障が生じたことにより、適切な利用回数等のサービスが提供できなかった場合も、同様の取扱いとする。

(3)短期入所生活介護
 短期入所生活介護における長期利用者に対する減算(自費利用などを挟み実質連続30日を超える利用者について基本報酬を減算するもの)について、今般の被災により、在宅に戻れずやむを得ず短期入所生活介護を継続している場合には、適用しない取扱いが可能である。

(4)(介護予防)福祉用具貸与
 被災前に使用していた福祉用具が滅失又は破損した場合は、再度、貸与を受けることが可能である。

(5)特定(介護予防)福祉用具販売
 被災前に購入していた特定(介護予防)福祉用具が滅失又は破損し、再度同一の福祉用具を購入する場合には、介護保険法施行規則第70条第2項に定める「特別の事情がある」ものとして、当該購入に係る費用に対し保険給付することは可能である。

(6)居宅介護支援
 [1] 介護支援専門員が担当する件数が40件を超えた場合
  被災地や被災地から避難者を受け入れた場合について、介護支援専門員が、やむを得ず一時的に40件を超える利用者を担当することになった場合においては、40件を超える部分について、居宅介護支援費の減額を行わないことが可能である。
 [2] 利用者の居宅を訪問できない場合
  被災による交通手段の寸断等により、利用者の居宅を訪問できない等、やむを得ず一時的に基準による運用が困難な場合は、居宅介護支援費の減額を行わないことが可能である。
 [3] 特定事業所集中減算
  被災地において、ケアプラン上のサービスを位置付ける上で、訪問介護事業所の閉鎖などにより、やむを得ず一時的に特定の事業所にサービスが集中せざるを得ない場合、減算を適用しない取扱いが可能である。

(7)介護保険施設
 [1] 避難前と避難後で別のケアを行っている場合
  避難前の施設等においてユニットケアを受けていた利用者が、避難先において従来型施設などの異なる環境でサービスを受けている場合、避難前の施設等において提供していたサービス(ユニットケア)を継続して提供していると判断できるときは、従前の算定区分により請求して差し支えない。
  ただし、本来処遇されるべき場所以外の場所におけるサービス提供が長期的に行われることは適当ではないため、適切なサービスを提供できる受け入れ先等の確保に努めること。
 [2] ユニット型個室を多床室として使用した場合
  避難者を受け入れて入所させた施設において、これまでユニット型個室として使用していた部屋を多床室として利用した場合、これまで提供してきたユニットケアが継続して提供していると判断できるときは、これまでの利用者の了解を得た上で、これまでの利用者及び被災者の双方について、ユニット型個室の区分により請求して差し支えない。
  ただし、本来処遇されるべき場所以外の場所におけるサービス提供が長期的に行われることは適当ではないため、適切なサービスを提供できる受け入れ先等の確保に努めること。