「減算規定なし=報酬算定自体が不可」ではない

わかりにくいタイトルですが、ひさびさ、ネット上某所の話題より。
今回は、こう言っては何ですが、レベルが高くない問題です。(注1)


訪問介護事業所で、サービス提供責任者の配置人員数が基準を満たしていない。3割減算となるか?」

という内容の質問に対し、

「そのとおり」

「減算規定はないので、人員欠如の場合は費用(報酬)自体が算定できない」

など、スレッドは誤った解答に流れているようです。


まず、サービス提供責任者の配置人数が基準を満たさない場合については、減算規定はありません。
(そもそも「3割」減算という数字自体が、どこから来ているのか不明ですが。)

では、
「減算規定がない場合、基準違反なら報酬自体が算定できない」
という考え方は?

もちろん、ありません。

平成11年9月17日付け老企第25号
第1 基準の性格

2 指定居宅サービスの事業を行う者又は行おうとする者が満たすべき基準等を満たさない場合には、指定居宅サービスの指定又は更新は受けられず、また、基準に違反することが明らかになった場合には、
 [1] 相当の期間を定めて基準を遵守するよう勧告を行い、
 [2] 相当の期間内に勧告に従わなかったときは、事業者名、勧告に至った経緯、当該勧告に対する対応等を公表し、
 [3] 正当な理由が無く、当該勧告に係る措置を採らなかったときは、相当の期限を定めて当該勧告に係る措置を採るよう命令することができるものであること。
(略)なお、[3]の命令に従わない場合には、当該指定を取り消すこと、又は取消しを行う前に相当の期間を定めて指定の全部若しくは一部の効力を停止すること(不適正なサービスが行われていることが判明した場合、当該サービスに関する介護報酬の請求を停止させること)ができる。ただし、次に掲げる場合には、基準に従った適正な運営ができなくなったものとして、直ちに指定を取り消すこと又は指定の全部若しくは一部の効力を停止することができるものであること。
 [1] 次に掲げるときその他の事業者が自己の利益を図るために基準に違反したとき
  イ 指定居宅サービスの提供に際して利用者が負担すべき額の支払を適正に受けなかったとき
  ロ 居宅介護支援事業者又はその従業者に対し、利用者に対して特定の事業者によるサービスを利用させることの代償として、金品その他の財産上の利益を供与したとき
 [2] 利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼすおそれがあるとき
 [3] その他[1]及び[2]に準ずる重大かつ明白な基準違反があったとき
(注2)

減算規定のない基準違反、というより「減算規定の有無にかかわらず」基準違反の場合には、
・手順を踏んでも改善されないときは指定取消等の処分
・利用者の生命又は身体の安全に危害を及ぼすおそれがあるとき、その他重大な基準違反のときは、一発処分も可能
とされています。

ですが、報酬自体を算定不可とする根拠はありません。
ただし、サービスの根幹を揺るがすような基準違反(たとえば無資格ヘルパーによるサービスの提供)や、
虚偽の書類で指定申請した、というような場合には、もちろん別です。


「減算規定がない場合、基準違反なら報酬自体が算定できない」という考え方、
あるいは、
「減算されないのなら基準に抵触してもかまわない」みたいな誤った考え方が出てくるとすれば、
そういう「業界人」の理解力やモラルの問題だけでなく、
「加算-減算コントロール」に過度に依存した現行制度にも問題があるとはいえるでしょう。(注3)


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注1:人間は間違う可能性があるので、人の質問に対して「レベルが低い」とか「理解力が低い」とかは
   言わない方が無難です。もちろん、私にも言えることで(笑)

注2:わかりやすいように、原文にはない改行を入れている箇所があります。
   それはそれとして、この重要通知の最新版が、「厚生労働省法令等データベースサービス」に収録
   されていないという現実。なので、この引用文は手持ちの資料からの貼り付けです。
   万一間違いがあれば、苦情は厚労省に(爆)

注3:「加算-減算」コントロールの問題については、こちらでも少し触れています。
   特集・不適切事例と適切事例
   http://www.jupiter.sannet.ne.jp/to403/tokushuu/cm02.html