「通報は許さん」は通用するか(2)

公益通報者保護法の続きです。


(解雇の無効)
第三条 公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたことを理由として前条第一項第一号に掲げる事業者が行った解雇は、無効とする。
 一 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合 当該労務提供先等に対する公益通報
 二 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合 当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政機関に対する公益通報
 三 通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由があり、かつ、次のいずれかに該当する場合 その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に対する公益通報
  イ 前二号に定める公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに足りる相当の理由がある場合
  ロ 第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合
  ハ 労務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求された場合
  ニ 書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。第九条において同じ。)により第一号に定める公益通報をした日から二十日を経過しても、当該通報対象事実について、当該労務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該労務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合
  ホ 個人の生命又は身体に危害が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合

(不利益取扱いの禁止)
第五条 第三条に規定するもののほか、第二条第一項第一号に掲げる事業者は、その使用し、又は使用していた公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、降格、減給その他不利益な取扱いをしてはならない。
2 前条に規定するもののほか、第二条第一項第二号に掲げる事業者は、その指揮命令の下に労働する派遣労働者である公益通報者が第三条各号に定める公益通報をしたことを理由として、当該公益通報者に対して、当該公益通報者に係る労働者派遣をする事業者に派遣労働者の交代を求めることその他不利益な取扱いをしてはならない。

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通報先は、
1 従業者を雇用している組織(問題が生じたか、まさに生じようとしていると思料する場合)
2 処分や勧告を行う権限のある行政機関(信じるに足りる相当の理由がある場合)
3 その他(2に加え、さらに条件あり)
に分けられ、1~3の後に行くほど条件が厳しくなっています。

1は組織内ですから当然として、
2も守秘義務があり、かつ調査権限があるので、通報内容が事実でない場合には公表されることはありません。
なので、一般(3)よりは条件が緩くなっています。
3には報道機関なども含まれます。

第3条では、公益通報を行ったことを理由に解雇しても無効であること、
(条文は省略してますが、第4条では派遣の場合について定めています)
第5条で、その他の不利益的取扱いの禁止が規定されています。

では、
「通報したら、生じた損害賠償を請求する」
というのはどうでしょうか?


(1)本法における公益通報の対象は、犯罪行為や法令違反行為という反社会的な行為であるため、通常、本法に定める要件を満たす公益通報をしたことによって刑事責任や民事責任を問われることはないと考えられる。

(2)しかしながら、例えば、
 [1] 通報に当たって、第三者の個人情報を漏らすなど、他人の正当な利益を害した場合
 [2] 通報に際して、窃盗罪など他の犯罪行為を犯した場合
 [3] 不正の目的で通報を行った場合
などには、通報者に刑事上・民事上の責任が発生することが考えられる。本制度においてこのような責任を一律に免責することは適当でないとの判断から、本法では民事免責や刑事免責に関する規定は設けられていないところである。

とあります。

ですから、通常、介護保険担当課や障害福祉担当課に法令違反の状況を通報したとしても、
通報した従業者を裁判で訴える、ということは無理、
ということになるかと思います。

まあ、そんな愚かな経営者がそうそう存在するとは思えないのですが。