障害者部会報告書(H28.2.17)その1

それでは、第55回社会保障審議会介護保険部会資料(平成28年2月17日)のうち、
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000112926.html

資料3-2「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」
社会保障審議会 障害者部会 報告書~(平成27年12月14日)より

なお、文字強調は引用者が行ったものです。

8.高齢の障害者に対する支援の在り方について

(1) 現状・課題 現状・課題

障害福祉制度と介護保険
○ 障害者総合支援法第7条に基づく介護保険優先原則については、公費負担の制度よりも社会保険制度の給付を優先するという社会保障制度の原則に基づいている。この原則の下では、サービス内容や機能から、介護保険には相当するものがない障害福祉サービス固有のものと認められるサービスについては、障害者総合支援法に基づき給付を受けることが可能なっている。

○ 一方、これまで障害福祉制度を利用してきた障害者が介護保険サービスを利用するに当たって以下のような課題が指摘されいる。

 ・介護保険サービスを利用する場合、これまで利用していた障害福祉サービス事業所とは別の事業所を利用することになる場合がある。

 ・障害福祉制度の利用者負担は、これまで軽減措置によって介護保険制度の利用者負担上限と異なっていることから、介護保険サービスを利用する場合、介護保険制度の利用者負担が生じる。

 ・障害福祉サービスについて市町村において適当と認める支給量が、介護保険の区分支給限度基準額の制約等から介護保険サービスのみによって確保することができない場合は、障害福祉制度による上乗せ支給がなされる取扱いとされているが、自治体によっては、障害福祉サービスの上乗せが十分に行われず、介護保険サービスの利用に伴って支給量が減少する要因となっている。


自治体によっては、障害福祉サービスの上乗せが十分に行われず、介護保険サービスの利用に伴って支給量が減少する要因となっている。」

これは明らかに不適切なのですが、たとえば東京都区部のようなところでも過去に酷い取扱いがありました。

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 障害者自立支援法で定められた居宅介護などの自立支援給付について、東京都新宿区が昨年10月以降、65歳以上の障害者から新規申請があっても認めないよう内規で定めていたことが分かった。厚生労働省は実態に応じて同給付と介護給付の両方適用するよう求めており、区は「不適切だった」と認め、2日、措置を撤回した。
毎日新聞 2010年2月3日 東京朝刊)
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/24152958.html


報告書の続きです。

○ 障害福祉サービスと介護保険サービスを併給する事例や、高齢化に伴い、障害者を支援する親が要介護者となる事例など、障害福祉制度と介護保険制度保険の緊密な連携が必要となっている。その際には、相談支援専門員と介護支援専門員との連携も重要である。

○ 居住地特例(障害福祉制度)により障害者支援施設等に入所した障害者については、障害者支援施設等が住所地特例(介護保険制度)の対象となっていないことから、障害者支援施設等所在地と異なる市町村の介護保険施設等に移行した場合、それに係る費用などは、当該障害者支援施設等のある自治体の負担となっている。

○ 65歳以上になって初めて障害福祉サービスを利用しようとする者について、介護保険制度との関係を踏まえたきに、障害福祉制度の利用を認めることが適当かという指摘がなされている。

(障害者の高齢化に伴う心身機能低下等へ対応)
○ 高齢化による障害者の心身機能低下に伴い、従来の事業所の体制・人員では十分な支援が行えなくなっているとの指摘がなされている。また、障害者自身も日中活動への参加が困難となったり、若年者と同様の日中活動ができなくなっている等の指摘がある。

○ 障害福祉サービス事業所では高齢者に対応するノウハウが、介護保険事業所では障害者に対応するノウハウが、それぞれ乏しく、それぞれの事業所における支援技術の向上が必要である。

○ 65歳未満の障害者で親と同居している知的障害者は90.7%、精神障害者は65.7%となっており、親と生活している割合が高い。親による支援は生活全般にわたる場合もあり、「親亡き後」は生活を総合的に支援する者が失われることとなる。
 一方、夫婦で暮らしている知的障害者は5.1%、精神障害者は25.4%。子と暮らしている知的障害者は4.3%、精神障害者は16.7%となっており、親以外の支援者が少ないため、「親亡き後」に親に代わる支援者が必ずしもいる状況ではない。

○ 「親亡き後」に備えて、当該障害者がどのような課題を抱えているか、それに対して何を準備しなければらないかを明確にするため、一部の地域では、支援者に伝達するために作成する本人の成長・生活に関わる情報等の記録が、親族等を対象とした研修の中で活用されている。なお、遺産相続に当たって本人が不当な取扱いを受けないよう留意する必要があるとの指摘もある。
 また、「親亡き後」に親以外の者が支援することができる状況を作るためには、親がいる間に準備しておくことが重要との指摘がある。