憲法放談

新しい法令集を暫定でアップしていますが、その中に「日本国憲法」も追加しています。
http://www.jupiter.sannet.ne.jp/to403/13/s20kempou.html

改憲論議のためというわけではなく、現行法規について議論するとき、憲法の規定(あるいは理念)に抵触しているか、などを考える必要が出てくる可能性を考慮してのことです。

たとえば、「本人などの同意がない場合の措置」以下のシリーズなども、憲法基本的人権などの概念に突き当たるのかもしれません。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/31979376.html

でも、せっかくなので、現行憲法についての私の「現時点での」考え方を書いてみます。

政党によっては、第九章の改正規定の要件緩和を主張しています。

第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」というのがハードルが高すぎるので「二分の一以上」に、というものです。
これはこれで、理由が成り立たないこともないと思います。
ただ、全部の条文について緩和する、というのは、疑問を感じています。

まず、前文については、戦勝国に押しつけられた(他の条文もですが)、とか、翻訳調であるとか、批判もありますが、抽象規定にはあまり関心がないので(コラ)、ここでは触れません。

第一章(天皇)については、あまり改正の必要性を感じていません。
ただ、第五条(摂政)は皇室典範が変われば改正の必要性が出る場合があります。
第七条(国事行為)も、国会や内閣などの形が変われば、改正が必要になることがあるでしょう。

次に、何かと話題になる第二章(戦争の放棄)について。

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

第1項は改正の必要性はないと思いますし、国民の多くも同様ではないでしょうか。
問題になるとすれば、第2項。
憲法解釈で自衛隊は合憲、ということになっているので、改正の必要性なし、ともいえます。
ただし、
「必要最小限度の自衛力としての自衛隊は合憲だが、集団的自衛権の行使は違憲なので、海外活動中の自衛官の隣に立っている人物(米軍でも外国人の非営利団体でも)が襲われても反撃できない」
という人道に反した解釈が横行するのなら、
集団的自衛権を含め、自衛のための最小限の戦力を除いて保持しない」
とでも改正する方が、すっきりするかもしれません。

第三章(国民の権利及び義務)については、そもそも改正が可能かということ自体、議論の余地があります。

第十二条(前段) この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。

これは、少なくとも第三章については、新しく認知された権利(環境権など)を追加することはできても、権利を削除することはできない、と読めます。
それはそれで問題のようですが、

(後段)又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

という一文が、国民に対する警告となっていて、バランスが取れていると私は思います。

十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

ここでも「公共の福祉に反しない限り」とされていますし。

で、どこが改正される可能性が高いかといえば、第四章(国会)、場合によっては、第五章(内閣)あたりです。

第四十一条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。

こういうのはいいのですが、議員の任期や国会召集の手続きなどは、そのときの社会情勢などに応じて、柔軟に改正できるようにしておいた方がよいように思います。

そして、現行憲法で一番問題なのは。

衆院参院とで多数勢力が異なった場合の対応(いわゆる「ねじれ」の場合)。

首相の指名や予算案など、衆院の議決の優先規定もありますが、
それだけではどうにもならないということが、東日本大震災や特例公債法案の対応などで明るみに出ました。

緊急時に(党利党略から離れて)大人の妥協ができる政治家が多数なら、現行憲法の規定でも問題ありません。
でも、党利党略どころか、非常時でも私利私欲に走る政治家すら珍しくない状態では、やはり改正が必要です。

いろいろ方法は考えられますが、たとえば、衆院はなるべく1票の格差を少なくする。
最高裁でも指摘された「各都道府県に別枠で1名」という議席配分をなくす。
その代わり、参院は、各都道府県に一律2名、あるいは4名という配分にする。
そして、参院否決法案を衆院で再可決して成立させるための要件を、三分の二から引き下げる。
(ただし、地域性の高い案件を除く。)

みたいな感じで。
まあ、こうでなくてもいいのですが、ともかく国会や内閣についての手続き規定などについては、両院過半数以上の賛成で発議、としてもよいように思います。

第八章(地方自治)、第十章(最高法規)あたりは、やはり三分の二以上の賛成でないと改正の発議ができないようにしておくべきでしょうかね。

ちょっと、いつもの当ブログとは違う色合いの記事になったかもしれませんが、まあ、本日は憲法記念日なので。