特措法と感染症法の改正1

記事タイトルでは略していますが、ここでは、

「特措法」は「新型インフルエンザ等対策特別措置法」のことを、
感染症法」は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」のことを指しています。

いずれも2月3日に改正法が成立し、2月13日から施行されることになっています。

 

いろいろ議論やら批判やらがある改正ですが、なるべく冷静に見ていくことにします。

 

まず、特措法。

 

********************

(感染を防止するための協力要請等)
第三十一条の六 都道府県知事は、第三十一条の四第一項に規定する事態において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある同項第二号に掲げる区域(以下この条において「重点区域」という。)における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該都道府県知事が定める期間及び区域において、新型インフルエンザ等の発生の状況についての政令で定める事項を勘案して措置を講ずる必要があると認める業態に属する事業を行う者に対し、営業時間の変更その他国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するために必要な措置として政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。
2 都道府県知事は、第三十一条の四第一項に規定する事態において、当該都道府県の住民に対し、前項の当該都道府県知事が定める期間及び区域において同項の規定による要請に係る営業時間以外の時間に当該業態に属する事業が行われている場所にみだりに出入りしないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。
3 第一項の規定による要請を受けた者が正当な理由がないのに当該要請に応じないときは、都道府県知事は、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため特に必要があると認めるときに限り、当該者に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを命ずることができる。
4 都道府県知事は、第一項若しくは第二項の規定による要請又は前項の規定による命令を行う必要があるか否かを判断するに当たっては、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴かなければならない。
5 都道府県知事は、第一項の規定による要請又は第三項の規定による命令をしたときは、その旨を公表することができる。


(感染を防止するための協力要請等)
第四十五条 特定都道府県知事<注:緊急事態宣言の対象>は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、当該特定都道府県の住民に対し、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅又はこれに相当する場所から外出しないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。
2 特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等緊急事態において、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該特定都道府県知事が定める期間において、学校、社会福祉施設(通所又は短期間の入所により利用されるものに限る。)、興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定する興行場をいう。)その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者(次項及び第七十二条第二項において「施設管理者等」という。)に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止又は催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。
3 施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は、新型インフルエンザ等のまん延を防止し、国民の生命及び健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済の混乱を回避するため特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを命ずることができる。
4 特定都道府県知事は、第一項若しくは第二項の規定による要請又は前項の規定による命令を行う必要があるか否かを判断するに当たっては、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴かなければならない。
5 特定都道府県知事は、第二項の規定による要請又は第三項の規定による命令をしたときは、その旨を公表することができる。

 

(立入検査等)
第七十二条 都道府県知事は、第三十一条の六第三項の規定の施行に必要な限度において、同条第一項の規定による要請を受けた者に対し、必要な報告を求め、又はその職員に、当該者の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
2 都道府県知事は、第四十五条第三項の規定の施行に必要な限度において、同条第二項の規定による要請を受けた施設管理者等に対し、必要な報告を求め、又はその職員に、当該要請に係る施設若しくは当該施設管理者等の営業所、事務所その他の事業場に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。
3~7 略

 

第七十九条 第四十五条第三項の規定による命令に違反した場合には、当該違反行為をした者は、三十万円以下の過料に処する。

第八十条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、二十万円以下の過料に処する。
 一 第三十一条の六第三項の規定による命令に違反したとき。
 二 第七十二条第一項若しくは第二項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又はこれらの規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくはこれらの規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。

********************

 

青が「新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置」で飲食店などに営業時間の短縮などを要請(または命令)するときの規定で、緑が「緊急事態宣言の対象地域」の属する都道府県知事が学校や興行場などの施設に要請(または命令)するときの規定です。

これらの規定が適当か、罰則が重いか軽いかなどは議論がありますが、問題なのは、これだけ赤色にした「正当な理由がないのに」という条件。

たとえば協力した事業者には1日6万円の協力金が自治体から支給されるとして、営業時間短縮などに協力したら6万円を超える損失が発生する場合はいかがでしょうか?

6万円をわずかに超える程度なら「受忍限度の範囲」というように裁判所が判断するかもしれませんが、大幅に(たとえば倍額の12万円以上)超えるようなら、事業者が要請や命令を拒否したのは正当な理由がある、と判断される可能性が高いようにも思われます。

 

この先、政府は「正当な理由とは」というような例示をするかもしれませんが、裁判所は法律(と、そのおおもとの憲法)のみに基づいて判断するはずなので。

 

(つづく)