消防法と避難訓練など

認知症グループホームなどで、火災の被害者が出ています。
犠牲者が続出すると、法令が改正される可能性もありますが、ここでは現在の規定について確認してみます。

消防法第八条
 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(・・・大規模な小売店舗を含む。・・・)、複合用途防火対象物(略)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行なわせなければならない。

(第2項以下略)

消防法施行令(以下「令」)第一条の二
1~2 (略)
3 法第八条第一項の政令で定める防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。
 一 別表第一に掲げる防火対象物(同表(十六の三)項及び(十八)項から(二十)項までに掲げるものを除く。次条において同じ。)のうち、次に掲げるもの
  イ 別表第一(六)項ロ・・・に掲げる防火対象物(略)で、当該防火対象物に出入し、勤務し、又は居住する者の数(以下「収容人員」という。)が十人以上のもの
  ロ 別表第一・・・(六)項イ、ハ及びニ・・・に掲げる防火対象物(略)で、収容人員が三十人以上のもの
  ハ (略)
 二~三 (略)
4 収容人員の算定方法は、総務省令で定める。

別表第一(抜粋)
(六)
 イ 病院、診療所又は助産所
 ロ 老人短期入所施設養護老人ホーム特別養護老人ホーム、有料老人ホーム(主として要介護状態にある者を入居させるものに限る。)、介護老人保健施設救護施設乳児院、障害児入所施設、障害者支援施設(主として障害の程度が重い者を入所させるものに限る。)、老人福祉法・・・に規定する老人短期入所事業若しくは認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設又は障害者自立支援法・・・に規定する短期入所若しくは共同生活介護を行う施設(主として障害の程度が重い者を入所させるものに限る。ハにおいて「短期入所等施設」という。)
 ハ 老人デイサービスセンター軽費老人ホーム老人福祉センター老人介護支援センター、有料老人ホーム(主として要介護状態にある者を入居させるものを除く。)、更生施設、助産施設、保育所児童養護施設児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設児童家庭支援センター身体障害者福祉センター、障害者支援施設(主として障害の程度が重い者を入所させるものを除く。)、地域活動支援センター、福祉ホーム、老人福祉法・・・に規定する老人デイサービス事業若しくは小規模多機能型居宅介護事業を行う施設、児童福祉法・・・に規定する児童発達支援若しくは放課後等デイサービスを行う施設(児童発達支援センターを除く。)又は障害者自立支援法・・・に規定する生活介護、短期入所、共同生活介護、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援若しくは共同生活援助を行う施設(短期入所等施設を除く。)
 ニ 幼稚園又は特別支援学校

要介護高齢者や障害者(児)、乳児などが宿泊して生活する場は10人以上、
日中に利用する場や、医療機関などは30人以上の「収容人員」の施設などが、
防火管理者を定める対象となっています。

消防法施行規則(以下「規則」)第一条の三(抜粋)
 令第一条の二第四項の総務省令で定める収容人員の算定方法は、次の表の上欄に掲げる防火対象物の区分に応じ、それぞれ当該下欄に定める方法とする。

令別表第一(六)項に掲げる防火対象物
イに掲げるもの
 次に掲げる数を合算して算定する。
 一 医師、歯科医師助産師、薬剤師、看護師その他の従業者の数
 二 病室内にある病床の数
 三 待合室の床面積の合計を三平方メートルで除して得た数
ロ及びハに掲げるもの
 従業者の数と、老人、乳児、幼児、身体障害者知的障害者その他の要保護者の数とを合算して算定する。
ニに掲げるもの
 教職員の数と、幼児、児童又は生徒の数とを合算して算定する。

令第四条
1~2 (略)
3 防火管理者は、総務省令で定めるところにより、防火管理に係る消防計画を作成し、これに基づいて消火、通報及び避難の訓練を定期的に実施しなければならない。

施行令では「・・・訓練を定期的に実施しなければならない」としか書かれていません。
そして、介護保険障害福祉関係の省令でも同様の表現が多いのですが、
施行規則では「年2回以上」と明示されています。

規則第三条
1~9 (略)
10 令別表第一・・・(六)項・・・に掲げる防火対象物の防火管理者は、令第四条第三項の消火訓練及び避難訓練年二回以上実施しなければならない。

11 前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。

ちなみに、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準」(昭和23年厚生省令第63号)では、
保育所のような日中利用型の児童福祉施設も含めて、さらに厳しく、
「少なくとも毎月一回は、これを行わなければならない」とされています。(第6条第2項)

消火設備関係については、スペースと私の能力の制約から、とりあえずスプリンクラーについてだけ。

令第十二条
 スプリンクラー設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
 一 別表第一(六)項ロに掲げる防火対象物(第三号及び第四号に掲げるものを除く。)で延べ面積が二百七十五平方メートル以上のもののうち、火災発生時の延焼を抑制する機能を備える構造として総務省令で定める構造を有するもの以外のもの
 二 (略)
 三 別表第一・・・(六)項・・・に掲げる防火対象物で、地階を除く階数が十一以上のもの(総務省令で定める部分を除く。)
 四 別表第一・・・(六)項・・・掲げる防火対象物(前号に掲げるものを除く。)のうち、平屋建以外の防火対象物で、総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が、・・・同表(六)項イに掲げる防火対象物のうち病院にあつては三千平方メートル以上、その他の防火対象物にあつては六千平方メートル以上のもの
 五~十二 (略)
2~4 (略)
(引用者注:省略していますが、地階、地下街、複合用途などの建物について個別の規定があります。スプリンクラーを設置することを要しない部分とは、消防法施行規則第12条の2で、(準)耐火構造、(準)不燃材料、煙感知器連動防火戸などの規定があります。)

グループホームは、空き民家などを用いてその方々に適した環境での在宅生活を、という意味もあり、いわゆる社会福祉施設とは異なる事情もありますが、ここまで火災での被害が増えると、いろいろ見直さざるを得ないのかな、と思います。