扶養義務者と生活保護1

生活保護法(抄)

(保護の補足性)
第4条 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2 民法明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

(調査の嘱託及び報告の請求)
第29条 保護の実施機関及び福祉事務所長は、保護の決定又は実施のために必要があるときは、要保護者又はその扶養義務者の資産及び収入の状況につき、官公署に調査を嘱託し、又は銀行、信託会社、要保護者若しくはその扶養義務者の雇主その他の関係人に、報告を求めることができる。

(費用の徴収)
第77条 被保護者に対して民法の規定により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは、その義務の範囲内において、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。
2 前項の場合において、扶養義務者の負担すべき額について、保護の実施機関と扶養義務者の間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、保護の実施機関の申立により家庭裁判所が、これを定める。
3 前項の処分は、家事審判法の適用については、同法第9条第一項乙類に掲げる事項とみなす。


民法(抄)

(親族の範囲)
第725条 次に掲げる者は、親族とする。
 一 六親等内の血族
 二 配偶者
 三 三親等内の姻族

(同居、協力及び扶助の義務)
第752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

(扶養義務者)
第877条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

(扶養の順位)
第878条 扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。

(扶養の程度又は方法)
第879条 扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
第880条 扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

(扶養請求権の処分の禁止)
第881条 扶養を受ける権利は、処分することができない。


関係通知

<次>:生活保護法による保護の実施要領について(昭和36年4月1日 厚生省発社第123号 厚生事務次官通知)

<局>:生活保護法による保護の実施要領について(昭和38年4月1日 社発第246号 厚生省社会局長通知)

問/答:生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて(昭和38年4月1日 社保第34号 厚生省社会局保護課長通知)

<次>第5 扶養義務の取扱い
 要保護者に扶養義務者がある場合には、扶養義務者に扶養及びその他の支援を求めるよう、要保護者を指導すること。また、民法上の扶養義務の履行を期待できる扶養義務者のあるときは、その扶養を保護に優先させること。この民法上の扶養義務は、法律上の義務ではあるが、これを直ちに法律に訴えて法律上の問題として取り運ぶことは扶養義務の性質上なるべく避けることが望ましいので、努めて当事者間における話合いによって解決し、円満裡に履行させることを本旨として取り扱うこと。

<局>第5 扶養義務の取扱い
1 扶養義務者の存否の確認について
(1)保護の申請があったときは、要保護者の扶養義務者のうち次に掲げるものの存否をすみやかに確認すること。この場合には、要保護者よりの申告によるものとし、さらに必要があるときは、戸籍謄本等により確認すること。
 ア 絶対的扶養義務者。
 イ 相対的扶養義務者のうち次に掲げるもの。
 (ア)現に当該要保護者又はその世帯に属する者を扶養している者。
 (イ)過去に当該要保護者又はその世帯に属する者から扶養を受ける等特別の事情があり、かつ、扶養能力があると推測される者。
(2)扶養義務者の範囲は、次表のとおりであること。
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(3)扶養義務者としての「兄弟姉妹」とは、父母の一方のみを同じくするものを含むものであること。

第5 扶養義務の取扱い
問1 局長通知第5の1の(1)のイの(イ)にいう「特別の事情」に該当するのは、どのような場合であるか。

答 民法第877条第2項にいう特別の事情と同様趣旨のものと考えてよく、この場合、特別の事情とは、法律上絶対的扶養義務者には一般的に扶養義務が課せられるが、その他の三親等内の親族についても、親族間に生活共同体的関係が存在する実態にあるときは、その実態に対応した扶養関係を認めるという観点から判断することが適当であるとされている。したがって、本法の運用にあたっても、この趣旨に沿って、保護の実施機関において、当事者間の関係並びに関係親族及び当該地域における扶養に関する慣行等を勘案して特別の事情の有無を判断すべきものである。
 わが国の社会実態からみて、少なくとも次の場合には、それぞれ各号に掲げる者について特別の事情があると認めることが適当である。
 1 その者が、過去に当該申請者又はその世帯に属する者から扶養を受けたことがある場合。
 2 その者が、遺産相続等に関し、当該申請者又はその世帯に属する者から利益を受けたことがある場合。
 3 当該親族間の慣行又は当該地域の慣行により、その者が当該申請者又はその世帯に属する者を扶養することが期待される立場にある場合。