現下の状況における適切な保護の実施について

令和2年9月11日付け事務連絡

各 都道府県/指定都市/中核市 生活保護担当課 御中

                        厚生労働省社会・援護局保護課

 

        現下の状況における適切な保護の実施について

 

 生活保護行政の推進につきましては、平素から格段の御配慮を賜り厚く御礼申し上げます。
 今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた対応については、「緊急事態宣言の解除後の生活保護業務等における対応について」(令和2年5月26日付厚生労働省社会・援護局保護課事務連絡。以下、「5月26日付事務連絡」という。)等によりお示ししていたところです。
 現下の状況においては、徐々に経済活動は再開しておりますが、新型コロナウイルス感染症感染拡大に関連する解雇や雇い止めは引き続き増加しており、保護申請についても引き続き予断を許さない状況です。つきましては、現下の状況における生活保護業務等の取扱いについて下記のとおりお示ししますので、ご了知の上、都道府県におかれては管内保護の実施機関に対し周知方お願いいたします。なお、管内保護の実施機関の査察指導員や地区担当員、面接相談員等に対し、本事務連絡の内容が確実に行き届くよう、ご配意をお願いいたします。

 

                  記

 

1 保護の申請権の確保に係る留意点について
 これまでも全国会議等の機会で周知し、また、現下の状況においては5月26日付事務連絡等でも改めて注意喚起しているとおり、法律上認められた保護の申請権を侵害しないことはもとより、侵害していると疑われるような行為も厳に慎むべきである。今般、面接相談時における留意点を下記の通り整理したので、参照の上、相談者が申請をためらうことのないよう、必要な配慮に努められたい。

(1)扶養義務者に対する扶養照会に係る取扱い
 生活保護法(以下、単に「法」という。)では、法第4条2項において、「保護に優先して行われる」ものと定めており、扶養義務者に扶養照会を行い、扶養を受けることができる範囲において、保護より優先することとしている。
 一方、相談段階における扶養義務者の状況の確認について、扶養義務者と相談してからでないと申請を受け付けないなど、扶養が保護の要件であるかのごとく説明を行うといった対応は不適切であるので、改めてご留意願いたい。
 なお、「生活保護法による保護の実施要領の取扱いについて」(昭和38年4月1日付社保第34号厚生省社会局保護課長通知。以下、「課長通知」という。)第5の問2及び「生活保護問答集について」(平成21年3月31日付厚生労働省社会・援護局保護課長事務連絡。以下、「生活保護問答集」という。)問5-1でお示ししているとおり、下記に該当すると認められれば、当該扶養義務者が生活保持義務関係にある場合は、本人に対する直接照会は不要(関係先調査は必要)であり、また、当該扶養義務者が生活保持義務関係にない場合は、個別に慎重な検討を行い、扶養の可能性が期待できないものとして取り扱って差しつかえないため、念のため申し添える。
 ・被保護者、社会福祉施設入所者、要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない者並びに夫の暴力から逃れてきた母子等当該扶養義務者に対し扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる者であって、明らかに扶養の履行が期待できない場合
 ・長期入院患者、主たる生計維持者ではない非稼働者、未成年者、概ね70歳以上の高齢者等
 ・20年間音信不通である等、明らかに交流が断絶している場合

(2)現に住居のない要保護者への対応
 無料低額宿泊所においては、主に現に住居がない生計困難者の住まいの場として活用されているものである。現に住居がない生活困窮者への保護の適用に当たっては、「ホームレスに対する生活保護の適用について」(平成15年7月31日社援保発第0731001号厚生労働省社会・援護局保護課長通知)において、「直ちに居宅生活を送ることが困難な場合には、保護施設や無料低額宿泊所等において保護を行う」こととしている。
 一方、現に住居のない生活困窮者が来所した際に、例えば、単独で居宅生活が可能であるかの判断を行わずに、無料低額宿泊所への入所に同意しなければ保護を申請することが出来ない旨の説明をするといった対応は、申請権の侵害または侵害していると疑われるような行為にあたるので、厳に慎むこと。
 単独で居宅生活が可能である者については必ずしも無料低額宿泊所等の入所を経る必要はないことから、課長通知第7の問78及び生活保護問答集問7-107でお示ししている判断方法、判断の視点により、単独で居宅生活が可能であるかについて慎重に判断する必要がある旨、念のため申し添える。

(3)居住用不動産の活用に係る取扱い
 法第4条第1項に定める補足性の原理により、生活保護は利用できる資産、能力その他あらゆるものを活用することを要件としており、保有を容認するに適さない資産は、原則として処分の上、最低限度の生活維持のために活用させることとなる。
 居住用不動産の活用については、「生活保護法による保護の実施要領について」(昭和38年4月1日付社発第246号厚生省社会局長通知。以下、「局長通知」という。)第3の1の(1)及び2の(1)でお示ししているとおり、当該世帯の居住の用に供される家屋及び当該家屋に付属した土地については保有を認めることとしている。
 一方で、処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められる場合にはこの限りではないこととされ、通常、処分の上、最低生活の維持のために活用されることとなる。
 ここでいう処分価値と利用価値の比較に係る判断が困難な場合は、局長通知第3の5に基づきケース診断会議等において総合的に検討を行うこととしているが、こうした検討に付する目安については、課長通知第3の問15でお示ししているとおり、下記のいずれかの方法により算出した額を目安額としているので、相談段階において組織的な検討を行わずに判断することのないよう、ご留意願いたい。
 ・当該実施機関における最上位級地の30歳代及び20歳代の夫婦と4歳の子を例とする3人世帯の生活扶助基準額に、同住宅扶助特別基準額(局長通知第7の4の(1)のオ)を加えた値におおよそ10年を乗じ、土地、家屋保有に係る一般低所得世帯、周辺地域住民の意識、持ち家状況等を勘案した所要の補正を行う
 ・その他地域の実情に応じた適切な方法により算出する

 

2 速やかな保護決定について
 生活に困窮する方が、所持金がなく、日々の食費や求職のための交通費等も欠く場合には、申請後も日々の食費等に事欠く状態が放置されることのないようにする必要があり、こうした場合の速やかな保護決定について、5月26日付事務連絡等において依頼しているところである。
 現下の状況においては、こうした対応が引き続き重要であるので、法第24条第5項に定める法定処理期間の範囲内で、可及的速やかに保護決定までの事務処理を進められるよう、改めてお願いする。

 

3 現下の状況における保護の弾力的な運用(資産の保有)について
 通勤用自動車の保有については、「新型コロナウイルス感染防止等のための生活保護業務等における対応について」(令和2年4月7日付厚生労働省社会・援護局保護課事務連絡(5月26日付事務連絡の別添1))の2の(2)で留意点をお示ししているところであるが、保護開始時において保有を認めた通勤用自動車については、10月以降、順次、課長通知第3の問9-2に定める6箇月が経過することになる。
 しかしながら、現下の状況を鑑みると、引き続き就労が途絶えている場合も多いと思料されることから、こうした被保護者に対しては、同課長通知に準じ、保護開始時から概ね1年を目途に引き続き同様の対応を実施されたい。

 

4 自立相談支援機関と福祉事務所の連携について
 5月26日付事務連絡等において、自立相談支援機関と福祉事務所の連携について依頼しているとおり、
 ・自立相談支援機関による支援の結果、要保護性またはそのおそれが確認された場合等、自立相談支援機関が当該者に福祉事務所への相談や申請を促した場合に、福祉事務所において円滑に対応すること
 ・福祉事務所に相談したものの結果的に保護申請に至らなかった場合や、保護が却下となった場合に、自立相談支援機関を紹介すること
等の対応は、緊密な連携を図る上で特に重要であるので、改めてお願いする。

                                    以上

 

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この「記」を入れたら、最後に「以上」が自動で入ってしまうのは、MS-WORDのお節介機能だと思うのですが(これまでの厚労省の文書にはあまり入ってなかったのに、最近ちらほら。実質意味ない)、それは置いといて。

 

扶養義務者(超簡単にいうと近い身内)に相談しなくても生活保護申請はできます。ただ、申請受理後に、福祉事務所から扶養義務者に照会(養ってもらえませんか、無理ならいくらかでも支援してもらえませんか、等)することになります。

DVから逃げてきた場合など、特別の事情があるときには、その旨、福祉事務所に伝えておけば、配慮されます。