運営基準減算で利用者負担?(追記あり)

目を疑う書き込みを見かけました。

いまだに、長期間の短期入所で、居宅介護支援事業所のケアマネが居宅での利用者への面接ができない場合、運営基準減算になるという愚かな県がまだあるようです。
(他県のQ&Aを参考に確認を取ったところ、当県では認められないとの回答とのこと。)

それで、運営基準減算が2ヶ月以上継続している場合、居宅介護支援費の報酬はなくなるが、国保連への給付管理票の提出は必要であり、利用者の都合による場合など、契約書等に記載してあれば実費請求はできるか?

そういう内容の質問でした。


モニタリングのための居宅訪問は、基準省令上、「特段の事情のない限り」行うものです。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/30465177.html

ですから、こちらの通知やQ&Aを持ち出すまでもなく、特段の事情がある場合には減算には当たりません。
http://blogs.yahoo.co.jp/jukeizukoubou/30465194.html

ここまでは、(一般的には)常識的な話。

では、そういう常識のない都道府県担当者がいたら、利用者に請求できるでしょうか?

もちろん、できません。
(他のサービスで、減算分を利用者に請求することが可能なものがあったでしょうか?)

居宅介護支援事業所の選択は、ふたつ考えられます。
1)単独で、あるいは他の事業所や団体などを通じて、都道府県に誤った見解を改めるよう働きかけること。

2)それをしないなら、泣き寝入りすること。
1ができない(やらない)からといって、利用者に不当な負担を求めることはできません。


ちなみに、行政側の対応も、本来は二通りしか考えられません。
ア)長期間の短期入所利用が不適切という判断で、短期入所の給付を認めないこと。

イ)そうでないなら(短期入所の利用がやむを得ないなら)、居宅介護支援事業所も運営基準減算には当たらないと認めること。
なお、アの(給付を認めないという)権限は都道府県にはなく、保険者にあります。
だから、保険者が短期入所の給付を認めている以上、都道府県が居宅介護支援の運営基準減算を強要するのはおかしい、という考え方も、本ケースについては可能です。

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蛇足です。
今回の報酬改定により、運営基準減算が2ヶ月以上継続する場合、居宅介護支援費はゼロになりますが、
個々の状況によっては、このルールについて裁判沙汰になった場合、国が敗訴する可能性があると私は見ています。
(上の事例のような「利用者側の事情で居宅面接ができない場合の運営基準減算」ほどには、行政側の敗訴確率は高くないでしょうが。)

たとえば、利用者の状況に大きな変動がなく、
かつ、
1月31日の次の訪問が3月1日になったような軽微な基準違反の場合です。

3割減算はともかく、この程度の基準違反で、全くの「ただ働き」になるようなルールが、社会通念上妥当かどうか、裁判官によっては判断が分かれるような気がしています。

もちろん、同様の訪問間隔でも、利用者の状況に大きな変動が想定される場合には、居宅介護支援の実質を満たさないものとして、無報酬は当然という判断が出る可能性が高いようには思いますが。


H24.4.1追記


短期入所の長期利用について制限する直接的な規定は、連続30日を超える場合に費用(報酬)が算定できなくなるものしかありません。

あとは、間接的な記述が居宅介護支援の運営基準にあるだけです。

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○基準省令(平成11年厚生省令第38号)第13条第20項
 介護支援専門員は、居宅サービス計画に短期入所生活介護又は短期入所療養介護を位置付ける場合にあっては、利用者の居宅における自立した日常生活の維持に十分に留意するものとし、利用者の心身の状況等を勘案して特に必要と認められる場合を除き、短期入所生活介護及び短期入所療養介護を利用する日数が要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えないようにしなければならない。

○解釈通知(平成11年老企第22号)第二-3(7)
[19] 短期入所生活介護及び短期入所療養介護の居宅サービス計画への位置付け(第二十号)
 短期入所生活介護及び短期入所療養介護(以下「短期入所サービス」という。)は、利用者の自立した日常生活の維持のために利用されるものであり、指定居宅介護支援を行う介護支援専門員は、短期入所サービスを位置付ける居宅サービス計画の作成に当たって、利用者にとってこれらの居宅サービスが在宅生活の維持につながるように十分に留意しなければならないことを明確化したものである。この場合において、短期入所サービスの利用日数に係る「要介護認定の有効期間のおおむね半数を超えない」という目安については、居宅サービス計画の作成過程における個々の利用者の心身の状況やその置かれている環境等の適切な評価に基づき、在宅生活の維持のための必要性に応じて弾力的に運用することが可能であり、要介護認定の有効期間の半数の日数以内であるかについて機械的な適用を求めるものではない。
 従って、利用者の心身の状況及び本人、家族等の意向に照らし、この目安を超えて短期入所サービスの利用が特に必要と認められる場合においては、これを上回る日数の短期入所サービスを居宅サービス計画に位置付けることも可能である。

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で、「特に必要と認められる場合」というのは、誰が判断するのでしょうか?

まず、ケアマネを中心としたチーム(サービス担当者会議に参加するメンバー。だから、利用者や家族も一員です。)。
そして、給付の可否についての判断ですから、通常レベル(審査請求や裁判以外)では、保険者が決定権を持つと考えられます。
都道府県ではありません。