避難者による短期入所などの定員超過

来週ぐらいにまた台風が来そうですが・・・

前回、台風20号の頃に、某氏の(同様のテーマの)限定記事などを拝見しながら考えていたことがあります。

被災者、ではなくて、台風など災害が襲来する前に避難してきた利用者によって定員超過したような場合に、運営基準違反にならない(言い換えれば減算にならない)特例措置はあるか?

短期入所生活介護の基準で考えてみます。

指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)

(定員の遵守)
第百三十八条 指定短期入所生活介護事業者は、次に掲げる利用者数以上の利用者に対して同時に指定短期入所生活介護を行ってはならない。ただし、災害、虐待その他のやむを得ない事情がある場合
は、この限りでない。
 一 第百二十一条第二項の適用を受ける特別養護老人ホームである指定短期入所生活介護事業所にあっては、当該特別養護老人ホームの入所定員及び居室の定員を超えることとなる利用者数
 二 前号に該当しない指定短期入所生活介護事業所にあっては、利用定員及び居室の定員を超えることとなる利用者数

2 利用者の状況や利用者の家族等の事情により、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に指定短期入所生活介護を受けることが必要と認めた者に対し、居宅サービス計画において位置付けられていない指定短期入所生活介護を提供する場合であって、当該利用者及び他の利用者の処遇に支障がない場合にあっては、前項の規定にかかわらず、前項各号に掲げる利用者数を超えて、静養室において指定短期入所生活介護を行うことができるものとする。

第1項では、「災害、虐待その他のやむを得ない事情がある場合」という表現であり、「すでに災害が起きている場合」という限定ではありません。
だから、一般の避難所が利用しにくい要介護者等の場合、短期入所の事業所などにあらかじめ避難するような利用を対象とすることは可能と考えます。

また、老人福祉法上の「やむを得ない措置」に限定する記述はないので、通常の契約による利用も対象となるでしょう。

なお、短期入所生活介護事業所を併設している特別養護老人ホームなどの社会福祉施設が福祉費難所としての指定を受けている場合もあります。
この場合、短期入所生活介護としての利用か、福祉避難所としての利用か、どちらが適当か、という問題はあります。

それから、「あらかじめ避難する必要があるか」という判断を誰が行うか、という問題もあります。
気象庁が発表する情報などに注意して利用者や施設・事業所が判断する、ということも可能とは思いますが、はっきりした根拠を求めるとすれば、市区町村(介護保険担当課ではなく防災担当課)に「避難準備情報や避難勧告を発する可能性があるか」を問い合わせる、ということが考えられます。


で、もし第1項の適用に疑問が生じるような場合には、第2項により利用者等の個別の事情(地域の中でも特に土砂災害の危険性が高い場所に住んでいて、かつ、避難するのに時間がかかる、など)を勘案してケアマネが必要性を認める、という方法も考えられます。

これについては、解釈通知で詳細に記述されています。

指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(平成11年老企第25号厚生省老人保健福祉局企画課長通知)
第3 介護サービス
八 短期入所生活介護
3 運営に関する基準
(14)定員の遵守
 指定短期入所生活介護事業者は、災害、虐待その他のやむを得ない事情がある場合には、指定短期入所生活介護事業所の利用定員を超えて指定短期入所生活介護を行うことができることとしているが、利用者の状況や利用者の家族等の事情により、指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員が、緊急に指定短期入所生活介護を受けることが必要と認めた者に対し、居宅サービス計画に位置付けられていない指定短期入所生活介護を提供する場合であって、当該利用者及び他の利用者の処遇に支障がないと認められる場合においても、利用者数を超えて指定短期入所生活介護を行うことが認められるものである。
 この場合、居室以外の静養室において指定短期入所生活介護を行うととしているが、あくまでも、緊急の必要がある場合にのみ認められるものであり、当該利用者に対する指定短期入所生活介護の提供は7日(利用者の日常生活上の世話を行う家族等の疾病等やむを得ない事情がある場合は14日)を限度に行うものとする。
 なお、指定短期入所生活介護事業所の利用定員を超えて受け入れることができる利用者数は、利用定員が40人未満である場合は1人、利用定員が40人以上である場合は2人まで認められるものであり、定員超過利用による減算の対象とはならない。

まあ、これは特に家族介護者の急病等を想定しているような印象もありますが(14日を限度とする規定)、7日以内であればそれ以外の理由の場合も可能でしょう。

なお、静養室を使ったとしても、定員の5%または2人までの超過が限度となります。