【水平垂直】東日本大震災から1年となる中、高齢化が進む沿岸被災地をサポートしてきた在宅介護サービス事業所の再開が7割にとどまるなど“全面復旧”は困難な状況にあることが、産経新聞の調査で浮かび上がった。自治体への取材から、必要な高齢者に十分な介護サービスが行き渡っていないことも分かる。頼りにしてきた親類を亡くしたり、仮設住宅への避難など、環境が激変した高齢者を地域でどう支えるのか。震災2年目を迎えるにあたり、介護力の再構築が求められている。
◆認定数が増加
「介護サービスなしでの生活が困難になった高齢者が増えた」。10事業者が被災し、今も3事業者が再開できない岩手県釜石市の担当者はそう話す。震災前なら、家族や地域の人たちの“地域力”を生かして生活できた高齢者が、震災を機に要介護認定者となるケースが表面化したという。
介護認定数の増加を示すデータもある。宮城県では震災前の平成23年2月時点で要介護認定を受けた高齢者の割合は16・5%と前年同月比で0・5ポイント増の伸びだった。しかし、震災以降は伸び率が上昇、7カ月後の同年10月には早くも0・5ポイント増の17%となった。
県の担当者は「震災で亡くなった高齢者が多い中で認定数が増えている。震災の影響で体調を崩したり、家族や介助者を亡くし、周りに介護してくれる人がいなくなったりした結果ではないか」と分析する。
◆「在宅」望まず
狭い仮設住宅では、介護用ベッド一つ置くだけで室内がいっぱいになる。排尿、排便といったプライバシーも守れず、家族もストレスがたまる。各地で在宅だった高齢者が介護施設に切り替えたいと希望する傾向もみられた。その結果、「在宅事業者の経営に影響が出た」(宮城県山元町)とする自治体もあった。
長い避難生活で、要介護度が上がるケースも相次いでいる。14事業所が再開できていない仙台市の担当者は「特に脚力が低下している高齢者が多い」。宮城県岩沼市の担当者は「認知症の症状が進んだ人もいる」と説明する。
◆「担い手不足」
原発20キロ圏の福島県浪江町では、多くの住民が二本松市などに避難している。震災前、在宅介護事業所は町内に22カ所あったが、二本松市などで事業を再開したのは10事業所。残る12事業所のうち2事業所は事業から撤退した。10事業所については、今後どうなるか把握もできないという。
同町の担当者は「高齢者にとって在宅介護サービスは電気や水道と同じ“ライフライン”。しかし、介護を担う若者がいなければ帰還できない」と、地域再興とともに、介護力の再構築の必要性を指摘した。
■公設民営化検討を
≪復興支援の調査研究をしている法政大学現代福祉学部の宮城(みやしろ)孝教授≫
「被災地では要介護や独居の高齢者の健康悪化が懸念される上、高齢化率が30%を超える地域も多く、在宅介護サービスの需要は高い。その中で復旧が7割にとどまるのは、被災地で拠点の代替地が見つからないことや、民間事業者が再建資金を確保することが難しいからだ。在宅介護サービスは高齢者の孤立の防止、軽減につながる上、被災地での事業所新設は雇用確保の面でもプラスになる。そういった点からも被災地での在宅介護サービスを求める声は高まっている。人手が足りない事業所の間では、スタッフの交流で介護サービスを継続する必要がある。自治体は、意欲がある事業所への補助のほか、必要によっては公設民営化などの検討も考えた方がよい」
(以下略)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120310-00000118-san-soci
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