適切な支給決定(その1)

障害保健福祉関係主管課長会議資料(平成22年3月4日開催)の障害福祉課・本体資料より

9 訪問系サービスに係る適切な支給決定事務について


(1)支給決定事務における留意事項について

 訪問系サービスに係る支給決定事務については、「障害者自立支援法に基づく支給決定事務に係る留意事項について」(平成19年4月13日付事務連絡)において、留意すべき事項をお示ししているところであるが、以下の事項について改めてご留意の上、対応していただきたい。
 ① 適正かつ公平な支給決定を行うため、市町村においては、あらかじめ支給決定基準(個々の利用者の心身の状況や介護者の状況等に応じた支給量を定める基準)を定めておくこと
 ② 支給決定基準の設定に当たっては、国庫負担基準が個々の利用者に対する支給量の上限となるものではないことに留意すること
 ③ 支給決定に当たっては、申請のあった障害者等について、障害程度区分のみならず、すべての勘案事項に関する一人ひとりの事情を踏まえて適切に行うこと
 特に日常生活に支障が生じる恐れがある場合には、個別給付のみならず、地域生活支援事業におけるサービスを含め、利用者一人ひとりの事情を踏まえ、例えば、個別給付であれば、いわゆる「非定型ケース」(支給決定基準で定められた支給量によらずに支給決定を行う場合)として、個別に市町村審査会の意見を聴取する等により、障害者及び障害児がその有する能力及び適性に応じ、地域において自立した日常生活を営むことができるよう適切な支給量を定めていただきたい。
 また、国庫負担基準を超過する市町村に対しては、平成21年度から、都道府県地域生活支援事業「重度障害者に係る市町村特別支援事業」の補助要件の緩和(訪問系サービス全体の利用者数に占める重度訪問介護利用者数の割合25%超を対象→10%超を対象)及び障害者自立支援対策臨時特例交付金に基づく基金事業において実施する「重度訪問介護等の利用促進に係る市町村支援事業」の創設により、一定の財政支援を可能としているので、平成22年度においても引き続き、ご活用いただきたい。
 なお、市町村における支給決定基準の設定等の実態を把握するため、全市町村を対象に、支給決定基準についての基本調査(調査時点は平成22年4月1日現在、調査項目は「支給決定基準の設定の有無」や「支給量の決定の方法」等を想定)を平成22年4月に実施する予定であるため、調査実施の際にはご協力願いたい。

(2)障害者自立支援法介護保険法の適用に係る適切な運用について

 65歳以上の障害者については、介護保険法が優先的に適用される一方で、サービスの支給量・内容が介護保険制度では十分に確保されない場合には、障害者自立支援法において、その支給量・内容に上乗せしてサービスを受けられる仕組みとなっている。
 しかしながら、先般、65歳以上の在宅の障害者が、介護保険サービスを既に利用している場合には、障害者自立支援法による新規の申請を一律に認めない取扱いをしている事例があった。
 また、利用者から「65歳到達により、介護保険が適用された結果、利用者の心身の状況や環境、支援のニーズ等の個別の事情が変わらないにもかかわらず、必要なサービスが受けられなくなった」といった声も寄せられているところである。
 障害者の中には、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や全身性障害などで介護保険制度が想定する加齢に伴う障害を超える重度の障害を持っ方々もいるため、このような方々が十分なサービスを受けられるよう、利用される方々の意向を丁寧に聴取するなど、個々の実態を十分に把握した上で、「障害者自立支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」(平成19年3月28日障企発第0328002号・障障発第0328002号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長・障害福祉課長連名通知)を踏まえ、介護保険法によるサービスの支給量・内容では十分なサービスが受けられない場合には、障害者自立支援法において、その支給量・内容に上乗せしてサービスを受けられるようにするなど、適切な運用に努められたい。
 なお、先般、各市町村における障害者自立支援法介護保険法の適用に係る運用実態を調査したところ、65歳以上の障害者からの障害者自立支援法に基づく新規の給付申請を一律に認めていない運用を行っている自治体は無かった。各都道府県におかれては、今後とも管内市町村で適切な運用が図られるよう周知願いたい。

 ときどきネット上で出てくる問題について、3月4日の全国会議資料に掲載されていました。

 (1)については、国庫負担基準がはたして適切か、という議論もありますが、障害者(児)にしわ寄せが行くのは、やはり不適当でしょう。
 一般の支給決定基準では適当ではない「非定型ケース」というのは、自治体担当者にとっては負担が大きいかもしれませんが、例外的な場合にどう対応するか、というのは、この分野に限らず重要なことだと思います。

(2)は、新宿区の「内規」の件を受けた注意喚起でしょう。
「65歳到達により、介護保険が適用された結果、状況が変わらないにもかかわらず、必要なサービスが受けられなくなった」
というのは、自治体(障害福祉担当課や介護保険担当課)の対応が間違ってない限り、(本来は)あり得ないはずです。

(続きます。)