軽度者に対する福祉用具貸与

介護報酬告示(平成12年厚生省告示第19号)では、要介護1の利用者に対しては、次の品目はレンタルが制限されています。
要支援1・2の人が対象の介護予防の報酬告示(平成18年厚生労働省告示第127号)も、同じような規定です。

 要介護状態区分が要介護1である者に対して・・・車いす・・・車いす付属品・・・特殊寝台・・・特殊寝台付属品・・・床ずれ防止用具・・・体位変換器・・・認知症老人徘徊感知機器・・・移動用リフトに係る指定福祉用具貸与を行った場合は、福祉用具貸与費は算定しない。ただし、別に厚生労働大臣が定める者に対する場合については、この限りでない。

この例外的に算定できる「別に厚生労働大臣が定める者」を定めているのが、平成12年厚生省告示第23号(以下「第23号告示)で、その留意事項通知が平成12年老企第36号です。

このふたつを合わせて、算定できる軽度者(要支援1~要介護1)がどのような人なのか整理してみます。

イ 次に掲げる福祉用具の種類に応じ、それぞれ次に掲げる者
(1)車いす及び車いす付属品 次のいずれかに該当する者
 (一)日常的に歩行が困難な者
   → 要介護(支援)認定の基本調査1-7「歩行」が「3.できない」
 (二)日常生活範囲において移動の支援が特に必要と認められる者
   → 適切なケアマネジメントにより指定居宅介護支援事業者が判断(*)

(2)特殊寝台及び特殊寝台付属品 次のいずれかに該当する者
 (一)日常的に起きあがりが困難な者 → 基本調査1-4「起き上がり」が「3.できない」
 (二)日常的に寝返りが困難な者 → 基本調査1-3「寝返り」が「3.できない」

(3)床ずれ防止用具及び体位変換器 日常的に寝返りが困難な者
   → 基本調査1-3「寝返り」が「3.できない」

(4)認知症老人徘徊感知機器 次のいずれにも該当する者
 (一)意思の伝達、介護を行う者への反応、記憶又は理解に支障がある者
   → 基本調査3-1「意思の伝達」が「1.できる」以外
    又は、3-2「毎日の日課を理解」、3-3「生年月日や年齢を言う」、3-4「短期記憶」、
       3-5「自分の名前をいう」、3-6「今の季節を理解する」、3-7「場所の理解」
      の、いずれかが「2.できない」
    又は、3-8「徘徊」、3-9「外出して戻れない」、4-1「物を盗られたなどと被害的になる」、
       4-2「作話」、4-3「泣いたり、笑ったりして感情が不安定になる」、4-4「昼夜逆転」、
       4-5「しつこく同じ話をする」、4-6「大声をだす」、4-7「介護に抵抗する」、
       4-8「家に帰る等と言い落ち着きがない」、4-9「一人で外に出たがり目が離せない」、
       4-10「いろいろなものを集めたり、無断でもってくる」、
       4-11「物を壊したり、衣類を破いたりする」、4-12「ひどい物忘れ」、
       4-13「意味もなく独り言や独り笑いをする」、4-14「自分勝手に行動する」、
       4-15「話がまとまらず、会話にならない」
      の、いずれかが「1.ない」以外
    ※その他、主治医意見書において、認知症の症状がある旨が記載されている場合も含む。
 (二)移動において全介助を必要としない者
   → 基本調査2-2「移動」が「4.全介助」以外

(5)移動用リフト(つり具の部分を除く。) 次のいずれかに該当する者
 (一)日常的に立ち上がりが困難な者 → 基本調査1-8「立ち上がり」が「3.できない」
 (二)移乗が一部介助又は全介助を必要とする者
   → 基本調査2-1「移乗」が「3.一部介助」又は「4.全介助」
 (三)生活環境において段差の解消が必要と認められる者
   → 適切なケアマネジメントにより指定居宅介護支援事業者が判断(*)

(*)適切なケアマネジメント
 該当する基本調査結果がないため、主治の医師から得た情報及び福祉用具専門相談員のほか軽度者の状態像について適切な助言が可能な者が参加するサービス担当者会議等を通じた適切なケアマネジメントにより指定居宅介護支援事業者が判断することとなる。なお、この判断の見直しについては、居宅サービス計画に記載された必要な理由を見直す頻度(必要に応じて随時)で行うこととする。

また、以上の要件に当てはまらない場合でも、医師の医学的所見などにより算定できる場合があります。
(以下、平成12年老企第36号より)

次のI)からIII)までのいずれかに該当する旨が医師の医学的な所見に基づき判断され、かつ、サービス担当者会議等を通じた適切なケアマネジメントにより福祉用具貸与が特に必要である旨が判断されている場合にあっては、これらについて、市町村が書面等確実な方法により確認することにより、その要否を判断することができる。この場合において、当該医師の医学的な所見については、主治医意見書による確認のほか、医師の診断書又は担当の介護支援専門員が聴取した居宅サービス計画に記載する医師の所見により確認する方法でも差し支えない。
I)疾病その他の原因により、状態が変動しやすく、日によって又は時間帯によって、頻繁に第23号告示第二十一号のイに該当する者
 (例 パーキンソン病の治療薬によるON・OFF現象)
II)疾病その他の原因により、状態が急速に悪化し、短期間のうちに第23号告示第二十一号のイに該当することが確実に見込まれる者
 (例 がん末期の急速な状態悪化)
III)疾病その他の原因により、身体への重大な危険性又は症状の重篤化の回避等医学的判断から第23号告示第二十一号のイに該当すると判断できる者
 (例 ぜんそく発作等による呼吸不全、心疾患による心不全、嚥下障害による誤嚥性肺炎の回避)

注 括弧内の状態は、あくまでもI)~III)の状態の者に該当する可能性のあるものを例示したにすぎない。また、逆に括弧内の状態以外の者であっても、I)~III)の状態であると判断される場合もありうる。

なお、要介護(支援)認定の基本調査の結果の確認については、平成12年老企第36号に、次のように書かれています。

 指定福祉用具貸与事業者は、軽度者に対して、対象外種目に係る指定福祉用具貸与費を算定する場合には、[1]の表に従い、「厚生労働大臣が定める者」のイへの該当性を判断するための基本調査の結果の確認については、次に定める方法による。なお、当該確認に用いた文書等については、サービス記録と併せて保存しなければならない。
 ア 当該軽度者の担当である指定居宅介護支援事業者から当該軽度者の「要介護認定等基準時間の推計の方法」別表第一の認定調査票について必要な部分(実施日時、調査対象者等の時点の確認及び本人確認ができる部分並びに基本調査の回答で当該軽度者の状態像の確認が必要な部分)の写し(以下「調査票の写し」という。)の内容が確認できる文書を入手することによること。
 イ 当該軽度者に担当の指定居宅介護支援事業者がいない場合にあっては、当該軽度者の調査票の写しを本人に情報開示させ、それを入手すること。