知事のリコール条文

兵庫県知事に関する一連の問題のヤフー記事のどこかで、県議会や百条委員会に頼らず、県民がリコール運動すべき、というようなコメントを見かけたので、リコール関係条文を調べてみました。

 

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地方自治法
第八十一条 選挙権を有する者は、政令の定めるところにより、その総数の三分の一(その総数が四十万を超え八十万以下の場合にあつてはその四十万を超える数に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数、その総数が八十万を超える場合にあつてはその八十万を超える数に八分の一を乗じて得た数と四十万に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数)以上の者の連署をもつて、その代表者から、普通地方公共団体選挙管理委員会に対し、当該普通地方公共団体の長の解職の請求をすることができる。
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兵庫県の場合で概算(有権者数・約451万)
40万×1/3=13.3万
40万×1/6=6.7万
(451万ー80万)×1/8=46.4万

計66.4万ぐらい以上の署名を、2か月以内の集める必要があります(地方自治法施行令第92条第3項)。
なお、実際は万単位ではなく、細かく計算するはずです。

 

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2 第七十四条第五項の規定は前項の選挙権を有する者及びその総数の三分の一の数(その総数が四十万を超え八十万以下の場合にあつてはその四十万を超える数に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数、その総数が八十万を超える場合にあつてはその八十万を超える数に八分の一を乗じて得た数と四十万に六分の一を乗じて得た数と四十万に三分の一を乗じて得た数とを合算して得た数)について、同条第六項の規定は前項の代表者について、同条第七項(※)から第九項まで及び第七十四条の二から第七十四条の四までの規定は前項の規定による請求者の署名について、第七十六条第二項及び第三項の規定は前項の請求について準用する。

※第七十四条第7項
 第一項の場合において、当該地方公共団体の区域内で衆議院議員参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長の選挙が行われることとなるときは、政令で定める期間、当該選挙が行われる区域内においては請求のための署名を求めることができない。

地方自治法施行令第九十二条
4 地方自治法第七十四条第七項に規定する政令で定める期間は、次の各号に掲げる選挙の区分に応じ、当該各号に定める日から当該選挙の期日までの間とする。
 一 任期満了による選挙 任期満了の日前六十日に当たる日
 二 衆議院の解散による選挙 解散の日の翌日
 三 衆議院議員又は参議院議員公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第三十三条の二第二項に規定する統一対象再選挙又は補欠選挙 当該選挙に係る選挙を行うべき事由が生じた旨の告示があつた日の翌日又は当該選挙を行うべき期日(同条第三項の規定によるものについては、参議院議員の任期満了の日)前六十日に当たる日のいずれか遅い日
 四 都道府県の設置による都道府県の議会の議員の一般選挙又は長の選挙 地方自治法第六条の二の規定により都道府県が設置された日
 五 都道府県の議会の議員の増員選挙 地方自治法第九十条第三項の規定による議員の定数の増加に係る同条第一項の条例の施行の日
 六 市町村の設置による市町村の議会の議員の一般選挙又は長の選挙 地方自治法第七条の規定により市町村が設置された日
 七 市町村の議会の議員の増員選挙 地方自治法第九十一条第三項の規定による議員の定数の増加に係る同条第一項の条例の施行の日(市町村の合併の特例に関する法律(平成十六年法律第五十九号)第八条第一項の規定の適用がある場合には、同法第二条第一項に規定する市町村の合併の日)
 八 前各号に掲げる選挙以外の選挙 当該選挙に係る選挙を行うべき事由が生じた旨の告示があつた日の翌日
5 前項第三号又は第八号に規定する選挙を行うべき事由が生じた旨の告示があつた日とは、当該選挙に関し、公職選挙法第百九十九条の五第四項第四号から第六号までに規定する告示があつた日をいう。
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ということで、レアなケースは除いたとしても、
衆議院が解散された場合は解散の翌日から投票日まで
・県内の市町(兵庫県内には村はない)の長や議会の選挙があれば、その告示の翌日から投票日まで
などは、リコールの署名活動ができなくなります。

さらに、

 

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地方自治法第八十四条
 第八十条第一項又は第八十一条第一項の規定による普通地方公共団体の議会の議員又は長の解職の請求は、その就職の日から一年間及び第八十条第三項(注:県議会議員の解職請求)又は第八十一条第二項(知事の解職請求)の規定による解職の投票の日から一年間は、これをすることができない。ただし、公職選挙法第百条第六項の規定(注:無投票当選)により当選人と定められ普通地方公共団体の議会の議員又は長となつた者に対する解職の請求は、その就職の日から一年以内においても、これをすることができる。
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ということで、知事当選後1年以内(無投票当選の場合を除く)と、リコールが成立して知事の解職請求による投票などが行われてから1年以内は、新たな解職請求はできません。

これだけ制約があるリコールを成立させたとして、

 

署名集め(2か月以内、費用は運動団体の負担)
署名の有効性、等の確認(県選挙管理委員会、人件費は公費)
解職請求投開票(公費)
(知事が解職されたとして)新知事を決めるための選挙(公費、兵庫県は約18億円と試算)

 

というふうに、金(運動団体も公費も)や時間がかかります。

仮に、リコールではなく、県議会が不信任を決議した場合は、

 

(知事が県議会を解散した場合)県議会選挙(公費、兵庫県は約16億円と試算)
(改選後の県議会が知事不信任を決議した場合)知事選挙(公費、兵庫県は約18億円と試算)

 

と、こちらは34億円ぐらいはかかります。

知事が辞職した場合も、新知事を決めるために約18億円ぐらいはかかることになりますが、もともと知事の任期は来年7月までですから、この方法が一番安くつく、という考え方は可能です。
県議会議員は2027年4月まで任期がある。)

 

まあ、選挙費用等は民主主義のコスト、という考え方もありますが、県職員だけでなく市町職員も大変、というか、選挙対応の実働部隊としては市町職員の方が大変ですから、不信任決議から県議会解散と進んだ場合は、知事は市町職員の恨みも買うことにはなるでしょう。