-兵庫県知事を巡るの一連の問題ですが、善悪は別にして、自分ならどうするか、あるいはどうしたか、という観点で、お尋ねします。
「そうですね。それなら、まず、告発者の元西播磨県民局長から」
1 告発者
「まず、亡くなられた方を批判するつもりはありません。ただ、この方は、今年の3月12日付けで匿名の告発文書を作って報道各社、一部県議、警察などに送ったんですね。それで3月25日に、当時の片山副知事らに公用パソコンを押さえられ、3月末の定年退職を止められてしまった、と。私なら、3月末に発送して、少なくとも退職辞令と退職金はもらえるようにします」
ー退職辞令をもらったら、もう処分はできないということですか?
「絶対できない、とまではいいませんが、相当ハードルが高くなります。今年は3月29日が金曜で、たぶんこの日に退職辞令交付式だったのでしょう。出勤時に神戸市内で投函しておいて、何食わぬ顔で知事から辞令もらって、そのまま土日ですから、4月1日以降に郵便が届くのを再就職先で見ていたらよかったんじゃないかと。片山氏とか人事課長とかが怪しいと思って動こうとしても、後任県民局長に引き継いだであろうパソコンはともかく、告発者の身柄を押さえるのは無理です。警察でもないし。退職を取り消して遡って処分、というにもそれなりの根拠が必要ですし、いち民間人(たぶん)になった告発者にしても、法的にいろいろ戦えますし。キーパーソンというか要の告発者自身が知事らの手の届きにくい場所にいることが、知事らにとって不利になったはず。その意味でも、亡くなられたことは残念です。まあ、私なら、告発文自体、自宅のパソコンで印刷し、公用パソコンからはデータ消去します。復元は可能でしょうが、時間と手数はかかるはずです。」
2 告発文の対応
-告発文書が知事の手元に届いたのは、3月20日に「民間の一般人の方」から入手した、と知事は百条委員会で証言したようですが。
「知事側の動きもまずかったですね、善悪は別にして。あの時点ではそれほど世間を騒がせてなかったので、『青天の霹靂です』ぐらいに驚いて見せて、『第三者機関に調査を委ねる方向で』ぐらいの答弁をしていたら、また違っていたでしょう。パワハラは別にして、多くは決定的な証拠が出にくいでしょうから、『不徳の致すところ、これから改めます』で逃げ切れる可能性もなくはなかった。今回の、被告発者自身が調査・決定する『嘘八百』対応は、たぶん告発の7項目以上に致命傷になりました。橋下徹氏らが指摘したとおりです。よっぽど図星だったんでしょうかね、告発が」
3 県議会の対応
ーその後、告発者や「パレード費用捻出」関連の別の職員が亡くなり、結局、百条委員会が設けられました。
「百条委員会自体は、批判もありますが、それなりに進められて成果もあったとは思います。ただ、自民や維新にスポットライトが、いい意味でも悪い意味でも当たりがちですが、本件について功績が大きいのは無所属の丸尾牧議員でしょう。百条委よりも前に、独自に職員アンケートを実施したりして」
ー結局、無所属議員を含めて全議員が知事に辞職を要請する異例の事態となりました。
「異例はいいんです。知事自体が異例の存在ですから。ただ、今回の辞職要請は、ツッコミどころありです。まず維新。辞職して出直し選挙を、などと主張していますが、出直し選挙で再当選したら、それでいいんですか? まあ、その可能性はきわめて低いですが。二元代表制ですから、まず議会が『○○の理由で知事不適格』と結論を出すべきでしょう。そのうえで、知事が議会を解散すれば、県民が改めて判断するわけですが。最初から県民に判断を委ねるようなレベルの知事なのか、維新の見識の方を疑います」
ー自民などは?
「そっちも疑問はあります。百条委員会で全ての疑惑について結論が出たわけではありません。ただ、これまでに調査等が行われたパワハラや公益通報者への違法対応だけで、十分に知事不適格だ、と主張するのなら、それ自体は成り立ちます。その場合も、委員会での採決なり、本会議での議決なりで、『百条委員会での調査は今後も継続するが、これまでのところで十分に不適格だから、不信任に値する』ということを示しておくべきではないかと思います。『なんとなく悪そうなやつだから不信任』はまずいですよね。まあ、不信任案提出時に理由付けするかもしれませんが」
4 不信任決議(予定)への対応
ー現時点では、知事は辞職を選ばず、不信任決議の場合は議会解散も排除しない、というようですが。
「実際、どうなるかはわかりません。ただ、今回の場合、議会を解散しても意味はなさそうです。たとえば、それこそ善悪とか好き嫌いは別にして、小池都知事のような政治家なら、自分で知事与党を創り上げて、議会選挙に臨めるかもしれません。でも、斎藤氏は、そういう意味での政治力はないでしょう。官僚政治家かもしれませんが、再度の不信任を回避するような勢力を自前で確保できるような意味での政治家ではないと思います。籠城は援軍が来るか、包囲軍の中から内通者が出るか、そういう可能性がないと勝てません。あっさり辞職か失職かして、告発のどの事項かで有罪になったら刑に服して、ほとぼりが冷めたら回顧録か何か書いて、場合によったら民放のコメンテーターとかユーチューバーという未来に期待した方が、ましなような気がします」