古い発言ですが

けさ(4月11日)の読売新聞より。

 

[検証 万博の現在地]<3>残業規制 現場を直撃…工期切迫 協会と不協和音
https://www.yomiuri.co.jp/national/20240411-OYT1T50016/

 ゼネコンでつくる日本建設業連合会は22年秋以降、協会に海外パビリオンの工事の発注を急ぐよう促してきた。しかし、今も17か国は施工会社が決まっていない。日建連会長の宮本洋一(76)は「我々の感覚では(開幕に間に合う)期限は過ぎている」と突き放す。

 こうした発言は協会側を刺激している。協会副会長で関西経済連合会会長の松本正義(79)は2月の記者会見で、「建設会社はけしからん。国家プロジェクトの万博を成功させようとコメントしたことがない」と不満を爆発させた。
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けしからん発言だなあ(建設会社ではなく松本氏の発言の方)と思いながら読んだのですが、2月のことだったのですね。
探してみると・・・


「ナニサマなんだ」関経連会長、大阪万博めぐり建設業界に「けしからん」発言「会長のほうがよっぽどけしからん」非難殺到
SmartFLASH 2/12(月) 16:46配信

 2月9日、関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)は、2025年大阪・関西万博をめぐり、建設業界がパビリオン建設などに協力的ではなかったと主張。「建設会社は、『ナショナルプロジェクトの万博を成功させるため、最大の努力をする』とくらいコメントしてはどうか」と述べた。同日、産経新聞が報じた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5998f8318af2306e84f62eceb7fc0f8b0a87f759

 

とありますが、産経よりもこのSmartFLASHの方が詳しかったので、そちらから抜粋。

 

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 京都市で開催された「関西財界セミナー」の記者会見での発言。

 万博に関しては、日本建設業連合会の宮本洋一会長(清水建設会長)が2023年11月27日の会見で、海外パビリオンについて「もうデッドラインは過ぎている」などと、建設が厳しい状況にあると訴えてきた。

 また、2023年10~11月、全国建設業協会が1万8000社あまりを対象にした調査で、9割近くが万博の工事に「興味はない」と回答していたことを、NHKが報じている。

 万博に関連する質問を受けた松本氏は「建設会社は、けしからん。万博を成功させようというコメントはどこにもない」と切り出し、「建設会社の協会トップが。けしからん」とも発言したという。

 一方で、「経済界は最大の努力をしている」と強調。「絶対に万博は成功させなくてはならない」と述べ、「やめるとか延期するとか(言う人がいるが)、新型コロナウイルスの影響で(延期された)ドバイ万博は仕方ないが、今回は絶対に許されない」と語ったという。

 松本会長といえば、1月1日付の毎日新聞のインタビューで、万博の運営が赤字となった場合には「経済界が(穴埋めのために)資金を出すことは難しい」と述べていた。
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まず、
<経済界は最大の努力をしている>という松本氏の発言ですが、「経済界」には建設業界は入ってないんですかね?
逆に、松本氏の会社って、建設業もやっていたはずですが。
(会社概要によると、土木工事業建築工事業、とび・土工工事業、電気工事業管工事業鋼構造物工事業、舗装工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、電気通信工事業、水道施設工事業、解体工事業などの許可を受けている。)

まあ、そのあたりは、自分のことは棚に上げてのご発言ということで、進めましょう。

 

<「もうデッドラインは過ぎている」(昨年11月の日本建設業連合会の宮本洋一会長)などと、建設が厳しい状況にあると訴えてきた>
という件は、万博を失敗させようというのではなく、資材や人手の確保が難しい中、(主催者や参加各国が)急がなきゃ間に合わないよ、という悲鳴のように思われます。

 

全国建設業協会が1万8000社あまりを対象にした調査で、9割近くが万博の工事に「興味はない」と回答>
というのは、民間の営利企業である以上、開会までの完成や採算性に疑問のあると(各経営陣が)判断した事業に消極的になるのは当然のこと。
(ちなみに「1万8000社あまり」というのが全国の中小企業等も含むとしたら、関西から遠方で、かつ大阪近辺に拠点もないような企業も多いでしょうから、能力的に無理というか視野の外と考える会社が9割あっても不思議ではない。建設業界って、会社数でいえば中小、零細は多いと思います。)

経営を悪化させる危険性が一定程度以上あると思われる場合、「国策」だからといって無理に参加したら、株主等から責任を追及されたりもしますよね?


まあ、それはともかく。

期日に間に合うかどうか、出来栄えがどうか、労務管理等において法令を守れるか、等については、周囲のムードに流されて判断してはいけません。
国家プロジェクトだろうが、国や自治体トップの意向だろうが、間に合わないものは間に合わない、できないものはできない、といわなければ無責任です。

トップに忖度して「短期間でウクライナを征服できます」といって失敗したのがロシアの政権や軍部の幹部たち。

今さら万博を中止または延期というのは、たしかに国際信義上困難だとは思いますが、「難しい」という所見自体は、現場に近い人間から発信する必要があります。
それで権限ある人がどう判断するか、縮小などの変更を検討するか、別の対策を考えるか、というようなことについては、その役職や機関の責任で決断することでしょうが。