将棋チャンネル側に賠償命令 棋譜動画削除巡り地裁判決
日本経済新聞 2024年1月16日 19:25
将棋のタイトル戦の棋譜を盤面図に再現した動画配信が著作権侵害だとして削除されたのは不当だとして、男性ユーチューバーが、棋戦を中継する運営事業者「囲碁・将棋チャンネル」に対し約340万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決が16日、大阪地裁であった。
武宮英子裁判長は「動画の棋譜は原則として自由利用の範疇(はんちゅう)に属する情報」として、約120万円の支払いを命じた。
同チャンネルは日本将棋連盟などの出資を受け、棋士らの対局の様子などを有料で放送している。判決などによると、同チャンネルは著作権侵害を理由に男性側が2020~23年に配信した棋戦の棋譜を使った動画についてユーチューブ側に削除申請。動画は一時削除された。
判決は「動画は著作権を侵害していない」と指摘。「利用された棋譜の情報は、対局者の指し手や挙動であり、公表された客観的事実」とした。
これまで同チャンネル側は「フリーライドで動画を配信し、広告収入を得ている」と男性側を批判。中継視聴者が減れば棋戦を開催できなくなる恐れがあると訴えた。
一方、男性側は許諾や放映権は主催者と同チャンネルとの契約で、他者は拘束されず、放映番組と自身の動画は構成も全く異なると反論。「動画では指し手という事実を使用して盤面図に駒を配置しているに過ぎない」とし、動画は著作権を侵害していないと強調していた。
同チャンネル側は「判決内容を確認できていないため、コメントは差し控える」としている。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1094Y0Q4A110C2000000/
朝日新聞など他メディアによると、原告側の請求額は約338万円で、判決では約118万円とのこと。
また、動画で扱ったのは<「王将戦」など>ともありました。
王将戦の主催者は、スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社、日本将棋連盟で、これらの主催者が何らかのコメントを出したという情報は、現時点では得られていません。
囲碁や将棋の棋譜については、一般に公表されていたとしても(インターネットの普及以前から、主催紙の記事によって公表されていました)、それを営利利用することが可能かということは難しい問題のような気がします(個人や学校の将棋クラブなどの非営利利用は、もちろん別にして)。
江戸時代の家元制度で存続してきたこれらの知的ゲームは、近代以降は主に新聞社(と、それを購読する読者)によって支えられてきた、といえます。
あるいは、週刊誌など他の紙媒体も掲載誌になりましたし、日本将棋連盟自体も「将棋世界」など自前の出版物で棋譜を世に送り出してきました。
それらの収益が、結局は棋士たちの生活を支えてきたのです。
棋戦の主催者の業種は多様化しつつはありますが、基本的な構造は、それほど変わっていないように思います。
今後、被告側が控訴する可能性もありますし、現状で論評するのは難しいところですが、どっちにしても棋譜利用について何らかのルールが作成された方がいいような気がします。