入管法の改正

どの党も、何かピントみたいなものがずれているような気がします。

まず、現状。

 

難民認定の高裁判決確定 国が上告断念、クルド人3例目
日本経済新聞 2022年6月6日 16:21 (2022年6月6日 19:46更新)

トルコ国籍の20代のクルド人男性が帰国すれば迫害の恐れがあるとして国に難民認定を求めた訴訟で、国の難民不認定処分を取り消した札幌高裁判決を巡り、国が最高裁への上告を断念したことが6日、分かった。高裁判決が確定した。上告の期限は3日だった。国が改めて男性の難民申請を審査するとみられる。

札幌出入国在留管理局は取材に「判決内容を精査した結果、上告の理由を見いだしがたかった」としている。全国難弁護団連絡会議事務局によると、クルド人側が勝訴した判決は3例目。

5月20日の札幌高裁判決は、男性がトルコでクルド人の独立を目指す組織のメンバーに食糧を提供したことで軍などから拷問を受けており「迫害を受ける恐れがあるという十分な理由がある」として男性を「難民に該当する」と指摘。一審・札幌地裁判決は「拷問を裏付ける証拠がない」として訴えを退けていた。

高裁判決などによると、男性は2014年、日本に入国。難民認定を申請したが、国が不認定とした。男性は不法残留で収容された後に仮放免された。

同事務局によると、過去にクルド人側が勝訴した2件はいずれも判決確定後に再度不認定処分となり、これまでにクルド人難民認定された例はないという。〔共同〕
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE063HR0W2A600C2000000/


同性愛迫害理由に来日のウガンダ女性、難民認定 大阪地裁
産経WEST 2023/3/15 20:51

母国での同性愛者に対する迫害を理由に来日した30代のウガンダ人女性が、国に難民認定を求めた訴訟の判決が15日、大阪地裁であった。森鍵一裁判長は「恣意的(しいてき)な身柄拘束の可能性がある」として女性の訴えを認め、国の難民不認定と強制退去処分を取り消した。

女性の代理人弁護士によると、入管当局が同性愛への迫害を理由に難民認定を出したことはあるが、裁判所の判断で不認定が覆るのは初めてとみられる。

判決などによると、ウガンダでは同性同士の性行為は違法で、最高で終身刑という。このため女性は令和2年2月、ブローカーから入手した旅券(パスポート)で関西国際空港に到着したが入国は認められず、入管施設に収容された。難民認定を申請したが同年4月に不認定となった。

判決理由で森鍵裁判長は、女性が約5年前に母国で同性愛者を理由に警察から逮捕され、暴行を受けたと指摘。「帰国すれば同様の行為を受ける恐れがある」と認定した。

国側は、実際にウガンダで同性愛者を理由に処罰された事例はなく、身柄拘束も「同性愛が理由とはいえない」などと主張したが、森鍵裁判長は「同性愛以外に拘束される理由が見当たらない」と退けた。

判決後、大阪市内で会見した女性は「明るい未来を期待している。難民申請している方に『希望を失ってはいけない』と伝えたい」と話した。
https://www.sankei.com/article/20230315-TCPGSAYJZBP6BPXUF4DNNSO6G4/

 

こちらも国が控訴せず、地裁判決が確定。難民認定が行われています。

それにしても、国はよく負けてますね。

 

日本の難民認定が厳しすぎるという国際的な批判があるようですが、日本の司法が要求する水準にも達していない、ということかと。

上の国の敗訴2件は、多少なりとも国際常識があるか、ちょっと調べるかすれば、敗訴するような対応をせずに済んだのではないでしょうか。

 

それは別にしても、入管行政があまり機能していない感があります。

たとえば、ウィシュマさんが医療を受けられずに死亡した件。

厳しく認定するのなら、さっさと送還すること。
それができない(しない)のなら、体調が悪ければ医療につなぐこと。

こういう問題が、成立した入管法改正法だけで解消されるのか。

 

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 改正案は、不法残留などで強制退去処分が出ても帰国を拒む外国人を対象に、難民申請中は一律に送還を停止してきた規定を見直し、3回目以降の申請者らを送還可能にする内容。自民、公明、立憲、維新の4党は21日から断続的に修正協議を行った。維新は、国際情勢に関する情報収集の充実や難民調査官の人材育成などを求め、法案に反映されたため賛成に回った。

 立憲は、公正中立に難民認定を審査する第三者機関の設置や、子どもの保護などを求めた。与党側は、第三者機関の検討を付則に明記したり、人道上の理由で「在留特別許可」の付与を検討する際は「児童の利益」を考慮するよう条文に明記したりする修正案を提示。立憲は「第三者機関は付則では実現しない」などと採決では反対に回り、こうした修正は削除された。
2023年4月28日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASR4X6KW4R4XUTFK00Z.html

 

立憲民主党が要求し、与党側が修正に応じた内容は、不十分に見えてもそれなりの改善効果が期待できそうなものだったと思います。

それなのに、立憲はそれを生かせず、与党側もせっかくの修正箇所を削除してしまった。

あ、採決時に暴れた議員は論外です。
理由は、暴れても法の成立阻止には役立たない(自己満足に過ぎない)。
それに、そもそも民主主義の精神に反するから、です。

 

これから日本で難民申請を目指す方々へ。
こういう国ですから、もし他国が目指せるなら、そっちの方が前向きだと思います、残念ながら。