前例から見る国葬の是非

内閣総理大臣在任期間(敬称略)

桂太郎 通算2,886日
 1901/6/2~1906/1/7:1,681日
 1908/7/14~1911/8/30:1,143日
 1912/12/21~1913/2/20:62日
※通算日数では安倍晋三に破られるまで歴代1位だったが国葬は行われていない。

 

吉田茂 通算2,616日
 1946/5/22~1947/5/24:368日
 1948/10/15~1954/12/10:2,248日
※佐藤内閣時代に国葬が行われている。
 実績:日本国憲法公布・施行、日本の独立回復、戦後の諸改革 等

 

佐藤栄作 通算・連続2,798日
 1964/11/9~1972/7/7:2,798日
安倍晋三に抜かれるまで、連続日数で歴代1位、通算日数でも戦後(つまり現憲法下で)1位だったが国葬は行われていない。
 (自民党、国民有志による国民葬=一部国費負担)
 実績:小笠原諸島の返還、沖縄の返還、ノーベル平和賞受賞 等

 

安倍晋三 通算3,188日
 2006/9/26~2007/9/26:366日
 2012/12/26~2020/9/16:2,822日
※通算・連続とも歴代1位

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安倍晋三氏の実績は、みなさんご存じでしょうから、ここでは書きません。
吉田茂氏や佐藤栄作氏については、かれらの首相在任中には生まれていない方、記憶していない方が多いかと思いますので(私も吉田氏については直接知っていないし、佐藤氏も政権末期ぐらいしか記憶はありませんが)、主要なもの、目立つものだけでも書いておきます。

 

吉田茂氏は首相在任期間によって国葬になったのではないことは明らかだと思います。
日本が敗戦により主権を失っていた時代、戦火による国土の荒廃や食糧難に国民が苦しんだ時代、そこから脱するためにもがきながら努力した時代に日本の舵取りをし、曲がりなりにも新憲法制定、独立回復、高度経済成長への道筋を開いたのが吉田内閣でした。

 

佐藤栄作氏は、首相在任期間の長さでいえば、国葬の理由付けを行うことはできないこともなかったと思いますが(当時では連続日数で1位、戦後としては通算日数でも1位)、実績としては吉田茂氏より一歩は下がる印象はあります。
しかしながら、米国の施政下にあった領土を取り戻すというのは、そんなに容易なことではありません(沖縄に米軍基地が多数残るなど、さまざまな批判があることは理解できるにしても、沖縄の人々が日本国民として戻ってこられたのは事実です)。
また、小笠原諸島を起点にして多くの領海、EEZが日本のものとなったことも、実はかなり大きい話です。
ちなみに、これは佐藤氏(だけ)の実績とはいえないかもしれませんが、高度経済成長期は佐藤内閣の時代に多く重なります。

 

さて、国葬については、戦後は規定がないので、前例により判断というのがこういう儀式の類の常道だろうと思います。

そういう観点では、吉田茂氏に及ぶ首相経験者は、この中には見当たりません。
では、佐藤栄作氏に、安倍晋三氏は及ぶでしょうか?
私は、及ばないと思います。

人格や能力の問題ではありません。
首相在任中の実績のことです。

 

そうすると、安倍晋三氏よりも、国葬を行わなかった佐藤栄作氏の方が上(くどいようですが、人格や能力の話ではなく、実績のことです)なので、安倍晋三氏について国葬を行うべきでない、という結論になります。

これらのことを踏まえずに安倍氏国葬を決めた自民党の方々は、佐藤氏など自分たちの大先輩に対しての敬意が足りないのではないでしょうか?

もちろん、これは国葬の対象について規定がない場合での前例に基づく判断ですから、国葬について根拠法なりのルールを定める場合には、必ずしもその限りではありません。