安倍氏の外交・補足

前記事で、「毅然とした外交」と書きましたが、安倍外交が「単なる毅然とした外交」に過ぎないという意味ではありません。

 

「世界で好まれる日本の即席麺」という記事を2013年2月に書きました。
https://jukeizukoubou.blog.fc2.com/blog-entry-1407.html

その中で、日本の麵製品が好まれている(あるいは今後、輸出が見込まれる)国として、メキシコ、ベトナム、トルコを例に挙げたのですが、自分で書いていて、親日的な国ばかりじゃないか、ということに気がつきました。

当時、韓国とは(いわゆる)歴史問題などで、中国とは尖閣諸島の問題などでぎくしゃくしていました。
まあ、今もぎくしゃくしているとはいえますが・・・

ロシアとの関係は今よりはマシでしたが、北朝鮮はどうしようもない国でしたし、どうかすると、日本は世界中から嫌われているのではないか、というような錯覚に陥りがちでした。

もちろん、そんなことはありません。
米欧豪など、いわゆる西側諸国とは価値観などを同じくしていますし、遠い存在のようにも思える中東周辺のイスラム諸国なども、対日感情のよい国が多いです。アメリカを嫌っている国も、日本はアメリカを相手によく戦い、焦土になったところからここまで復興した、ということで尊敬されたり。
東南アジア、南アジアは直接間接に日本軍進軍の影響があり、戦火の犠牲者が出たこと、欧州諸国からの独立のきっかけになったこと、それぞれで複雑な感情を持つ人々もありましたが、戦後日本の地道な国際活動や、中国が嫌われたり警戒されたこともあり、対日感情は悪くありません。
アフリカ諸国なども、現地の風土や文化に合った医療、農業、漁業、はてはバッタ退治の研究(前野ウルド浩太郎氏)など、さまざまな(おそらく中露などでは不可能な)支援を展開しています。
他の諸国を含め、マンガ・アニメなども対日イメージの好転に貢献しているでしょう。

 

つまり、中国・韓国など一部の国以外では、一般的に日本は好かれている方です。

 

これは、中国や韓国に必要以上にこだわるよりも、それ以外の「まともなおつきあいができる国」と友好関係を強くする方が得策ではなかろうか、と思ったものです。

 

そうしたら、ちょうどその頃から、「地球儀を俯瞰する外交」とか「開かれたインド太平洋」などの言葉が世に出るようになってきました。

まあ、当然といえば当然です。
中国は、強い国と弱い国とでは、対応を変えます。
武力や経済力だけでなく、外交力が強いということも、国の立場を強くします。
また、自国の立場を明確に主張する政治家は、中国は嫌がったり批判したりしますが、しかしそういう政治家は侮られず尊敬はされます。

韓国は・・・政権支持率が低下すると対日政策が厳しくなったりする傾向はありますが、日本が他の諸国から支持されているとどうしようもなく黙り込んだりします。

 

この程度のことは、外交能力や政治学というより、比較文化学、文化人類学社会人類学などの感覚かもしれません。
あるいは、囲碁や将棋でも、部分的に膠着状態になっていれば、盤上の他の場所で利益を探す、というようなことは、普通にあることでしょう。

この程度の戦略的な思考は、安倍氏だからできたのではなく、他の政治家でも思いついてほしかった。

 

外交の第一線で、トランプ氏を手なずけたり、プーチン氏をウラジーミルと呼んだり、というような「特殊技術」は安倍氏でなければ難しいかもしれませんが、インドと関係をよくして中国をけん制したり、というような戦略的な思考は、まともな外交感覚を持った政治家なら誰でもできるはずです(日本の国益よりも自分の中国利権やロシア利権などにこだわる政治家を除く)。

 

もう一度書いておきます。
安倍晋三氏が本当に望んでいたのは、自分の国葬ではなく(国民の一定数の賛同があれば反対するものではありませんが)、自分の死を英雄的に祀り上げるのでもなく、こういう外交姿勢、外交感覚の継承ではないかと思います。