茂木氏の発言と安倍外交

茂木幹事長「国葬反対は国民の認識とずれている」 野党の一部に反論
毎日新聞 7/19(火) 11:53配信

 自民党茂木敏充幹事長は19日午前の記者会見で、安倍晋三元首相の「国葬」を巡り、野党の一部から国会での閉会中審査を求める声が上がっていることについて「法律上も全く問題ない。国葬は極めてふさわしい、適切なあり方だ」と述べた。

 野党の一部には安倍氏の政治的評価が割れているなどとして、国葬に反対する意見がある。これに対し茂木氏は「国民から『国葬はいかがなものか』との指摘があるとは、私は認識していない」と指摘。「野党の主張は聞かないとわからないが、国民の認識とはかなりずれているのではないか」と反論した。
(以下略)
https://news.yahoo.co.jp/articles/b41c78e03863dd06cbfea099fe8ec3a898588dd2

 

 

NHKの調査では、国葬として行う方針について、「評価する」が49%、「評価しない」が38%です。
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/86361.html

 

メディアや調査方法によって差があるようで、熊本日日新聞では賛成42.9%、反対49.6%(それぞれ「どちらかといえば」を含む)。ただし、男性、若い世代では賛成が多く、女性、年長者で反対が多いという傾向のようです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/32c1e4dd2716c5ce8a5945311fb156aa4268d311

 

総合すると、国民の中でもいろいろ意見があり、少なくとも(国葬に反対する意見があるということに対して)「国民の認識とはかなりずれている」とまでは言えないと思います。

 

絶対にやるべきでない、と私は考えていませんが、無理に国葬にしなくても安倍氏の名誉が損なわれるわけではないし、得策ではないんじゃないかな、というのが7月18日に書いた記事です(終戦後の苦難の時代の吉田茂氏ほどの功績ではないし)。
https://jukeizukoubou.hatenablog.com/entry/2022/07/18/145735


さて、せっかくなので(?)外相時代の茂木氏について。

 


茂木外相、尖閣めぐる王毅氏発言に反論
朝日新聞 2020年11月27日 19時08分

 茂木敏充外相は27日の記者会見で、中国の王毅(ワンイー)国務委員兼外相が24日にあった日中外相会談後の共同記者発表の場で、尖閣諸島をめぐり一方的に展開した中国側の主張について「まったく受け入れることはできない」と反論した。

 王氏は共同記者発表で「一部の正体不明の日本漁船が頻繁に釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の敏感な海域に入っている」などと主張した。王氏の発言をめぐっては、26日の自民党会合で批判が噴出。茂木氏に対しても「なぜすぐに反論しなかったのか」との声が上がっていた。こうした批判について茂木氏は会見で「共同記者発表は主催国、相手国という順番でそれぞれ一度ずつ発言を行うルールで行っているところだ」と語った。

 茂木氏は共同記者発表後に王氏に対し、「我が国の立場、考え方を改めて強調した」ことを明らかにした。尖閣周辺海域における中国公船の領海侵入や接続水域内の航行が過去最長となったこと、日本漁船への接近事例などを指摘。「こうした行動を取らないよう、(王氏に)強く申し入れを行った」と強調した。
https://www.asahi.com/articles/ASNCW663DNCWUTFK00Y.html

 


まあ、このときの茂木氏のは後付けというか、国内向けの言い訳コメントで、その場で反論しておかないと国際的には通用しません。

「主催国、相手国という順番でそれぞれ一度ずつ発言を行うルール」?
そういうルール以前に、両国間で「見解が対立している問題」について「後攻」で一方的に不当な虚偽発言を行った中国側に、主催国側として何らかのアクションを起こさなければならないところでした。

まして、主催国側なのだから、強引に(正当ですが)割り込むことはできたはずです。

 

あるいは、
「今の王毅氏のユーモアあるジョークには感服しました。もちろん、尖閣諸島は日本固有の領土で、正体が明確な日本漁船が正当に出漁しております」
というように角が立たないような発言も可能だったはずです(いや、角が立つか。それでも日本の外相なら言え!)。

 

安倍晋三氏がその場にいたら、首相でなく外相や副大臣政務官であったとしても、何らかの対応はしていたことでしょう。
中国相手でも発言すべきことは発言していたから、嫌われたり煙たがられても中国側からも評価されていた。
それが、安倍氏が外交で評価された理由のひとつでもあります。
(ちなみに、茂木氏はお嫌いかもしれませんが、河野太郎氏でも、高市早苗氏でも、茂木氏のような対応ではなかったでしょう。それぞれ短所もある方々ではありますが、外相としては茂木氏よりはずっとマシです。)

 

国葬国民葬か内閣合同葬か、ということよりも、安倍氏が望んでいることは、そういう毅然とした外交(「毅然とした」という以前の問題ではありますが)ではないかと思います。