賛否、積極・慎重、さまざまな意見が出ているようですが、私は、あまり得策ではないような気がしています。
理由は、主に三つです。
1)吉田茂氏ほどの功績はないこと
第二次世界大戦後、というか現行憲法施行後、天皇や皇族を除いて国葬を実施された人は、元首相の吉田茂氏のみです。
同氏に対しては批判もありましたが、困難な時期に日本の独立を回復し、戦後の復興への道筋をつけた、ということでは、他の首相経験者の比ではありません。
なお、人柄や能力がについて、安倍氏と吉田氏とを比較しているわけではありません。
ちなみに、佐藤栄作氏については「国民葬」という名で行われていますが、佐藤氏も人柄や能力がどうかという点は別にして、(曲がりなりにも)沖縄の日本復帰という困難な案件を実現した、という功績はあります。
安倍氏の祖父にあたる岸信介氏など、多くの首相経験者が「内閣・自民党合同葬」となっています(例外あり)。
そういう人々よりも首相在任期間が長く、また、特に外交的功績が大きかったとしても、一般の経験者と同じ形式の葬儀で送ったことが安倍氏の名誉を損なうことにはなりません。
米国では大統領経験者は原則として国葬となりますが(例外あり)、かの国では大統領は国家元首です。
他の諸国でも、必ずしも政治の第一人者であった人々が国葬とはなっていません。
英国でも、ウィンストン・チャーチル氏はさすがに国葬ですが、マーガレット・サッチャー氏は準国葬です。
3)叩けばホコリが出るかも
安倍氏を殺害した容疑者(というか、犯人)は、(旧)統一教会に恨みをもったという人物で、安倍氏の政治的な姿勢に対する動機は有していないと考えられています。
(だから、言論や政治活動の自由のために殺された、というのではありません。)
(旧)統一教会と安倍氏とも直接の関係はない、というようなことを宗教団体側は主張しています。
ですが、この件については、まだ捜査中で、正確なところはわかっていません。
(ただし、関係があったとしても、殺害は犯罪ですが。)
また、安倍氏が首相在任中にあったさまざまな「疑惑」についても、まだ解明されていない、納得できない、と主張する人々もいます。
その辺については、私はわかりません。
仮に、内政上でなにかあったとしても、それが安倍外交の功績を大きく損ねるものではない、と私は認識しています。
しかしながら、万一、仮に万一ということにしますが、被害者続出の宗教団体との関係、モリカケサクラその他の「疑惑」とされる事項、どれか一つでも重大な問題が出てきたら、「国葬」についての価値を損ねるおそれがあります。
過去に、事実上、吉田茂氏しか対象となっていないものですから。
「内閣・・・合同葬」なら、仮に何か出てきたとしても、他にも対象者が多数ある栄誉ですから、国葬ほどの問題はないと考えられます。
まあ、他の山積みの問題に比べたら、どっちでもいいこと、かもしれません。
橋下徹氏が主張しているように、基準を決めるという考え方もアリでしょう。